2009/09/15(火) - 10:03
昨年のシクロクロス世界王者、ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)の独走力がブエルタ第15ステージを支配した。逃げグループから終盤の山岳で飛び出したボームは、ゴールまで勢い絶やさず独走勝利。グランツール初出場で初勝利を飾った。
難関山岳3連戦を終えて、ブエルタは一路マドリードに向けて北上を開始。いよいよ今年最後のグランツールも終盤に突入した。
第15ステージはハエンからコルドバまでの170km。終盤には2級山岳サンヘロニモ峠を含む32.6kmの周回コースが2回設定されており、ゴール12km手前で標高565mの2級山岳を越えてコルドバに辿り着く。スプリンターたちにもチャンスがあるコースレイアウトだが、この日、山岳3連戦を終えたスプリンターチームに勢いは無かった。
逃げ切りが決まり易いコースだけに、レース序盤からアタックの応酬。1時間半に渡る攻防により、65km地点で発生したのは13名の逃げ。一旦逃げが決まると、メイン集団のスピードはガクンと落ちた。
逃げたのはレオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)やアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、サクソバンク)、ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)、マーティン・ベリトス(スロバキア、ミルラム)ら、総合ですでに1時間以上遅れている選手たちばかり。マイヨオロ擁するケースデパーニュは、完全にこの動きを容認した。
タイム差は5分、10分、15分と順調に広がり続け、1回目の2級山岳サンヘロニモ峠通過時点(残り44km地点)でタイム差は19分。13名の逃げ切りは誰の目にも明らかだった。
逃げグループ内でのステージ優勝争いが始まったのは、2回目のサンヘロニモ峠突入前。ビセンテ・レイネス(スペイン、チームコロンビア・HTC)のアタックにより逃げグループが割れ、本格的な上りが始まるとともにボームが後続を突き放して独走を開始。これをダビド・エッレロ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)が単独で追走した。
安定した力強いペダリングで、サンヘロニモ峠の緩斜面を駆け上がるボーム。後続のエッレロや、その後方の追走グループを突き放す走りでサンヘロニモ峠を上りきったボームが、ゴール地点コルドバに向かってダウンヒル。残り10kmの時点で追走エッレロは1分遅れ、追走グループは2分遅れ。ボームの独走勝利が決まった。
今年ラボバンクのコンチネンタルチームからプロツアーチームに昇格した23歳のボームが、グランツール初参戦で初勝利。「レース開始から2週間が経過して、まだこんなにも好調さを維持出来ていることには自分でも驚いている。この時期の勝利は本当に予想していなかった」と驚きを隠せない。
しかし23歳ながら落ち着いてレースを読み、そして実行に移した。「正直言うと(スプリント力のある)ドゥケらを恐れていなかったから、今日はスプリント勝負に持ち込むことも考えた。でもスプリント勝利か独走勝利か、どちらか選べと言われたら後者に決まっている。今日の山岳は僕でもこなせる程の難易度だった。逃げを成功に持ち込めて本当に良かったよ」。
2007年のロード世界選手権U23タイムトライアル優勝したボームは、昨年オランダのロード&タイムトライアルのナショナルチャンピオンに。今年ツアー・オブ・ベルギーで総合優勝に輝いている。
昨年からロードレースに精力的に参戦しているボームだが、元々はシクロクロスで世界にその名を轟かすトップライダーだ。シクロクロスでは2003年に世界選手権ジュニア優勝、2007年U23優勝。そして昨年エリート男子レースを制し、念願の世界チャンピオンに輝いた。ワールドカップレースでも3勝している強豪だ。
シクロクロスからロードレースに転向し、大成功を収めつつあるボーム。2年前の世界選手権U23タイムトライアルで優勝した際、ボームは「シクロクロスは一定時間高出力を出し続ける競技で、タイムトライアルと似ていると思う。シクロクロスからロードレースへの転向は、その逆よりも簡単だと思う」と語っている。
「金曜日の山岳(第19ステージ)はロベルト(ヘーシンク)のアシストとして働いて、土曜日のタイムトライアルで再び力を発揮したい。とにかく今のところ調子は非常にいいんだ」。カンチェラーラ(サクソバンク)不在のタイムトライアルでは優勝候補の一角だ。
この日、結局メイン集団は25分以上遅れてゴールにやってきた。サンヘロニモ峠の下りで総合3位のサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)が攻撃を仕掛けるシーンも見られたが、バルベルデが落ち着いてこれを対処。結局総合順位に大きな変動は見られなかった。
ステージの上位15名までポイントが与えられるため、最後はステージ14位を狙った集団スプリント。チームメイトに発射されたアンドレ・グライペル(ドイツ)が集団先頭を穫った。グライペルは2ポイントを加算し、ポイント賞トップのバルベルデとの差を2ポイントまで詰めている。
一番大きく変動したのがチーム総合成績。ランキング2位につけていたシャコベオ・ガリシアが逃げグループに2名を送り込んでいたため、ケースデパーニュを抜いて一躍トップに立っている。
選手コメントはラボバンクのチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第15ステージ結果
1位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)4h12'56"
2位 ダビド・エッレロ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+1'36"
3位 ドミニク・ロエルス(ドイツ、ミルラム)+1'44"
4位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)+2'04"
5位 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
6位 アレクサンドル・コロブネフ(ロシア、サクソバンク)
7位 マーティン・ベリトス(スロバキア、ミルラム)
8位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)
9位 アレクサンドル・エフィムキン(ロシア、アージェードゥーゼル)
10位 マチュー・ラダニュ(フランス、フランセーズデジュー)+3'23"
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)65h08'50"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+31"
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+1'10"
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+1'28"
5位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+1'51"
6位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+1'54"
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)+5'53"
8位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、ランプレ)+6'34"
9位 トーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン)+8'28"
10位 ファンホセ・コーボ(スペイン、フジ・セルヴェット)+10'45"
モンターニャ(山岳賞)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)160pts
2位 ダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)83pts
3位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)76pts
プントス(ポイント賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)80pts
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)76pts
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)68pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)9pts
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)11pts
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)22pts
チーム総合成績
1位 シャコベオ・ガリシア 195h15'19"
2位 ケースデパーニュ +20'51"
3位 アスタナ +27'47"
リタイア(DNS=未出走・DNF=途中リタイア)
DNF スヴェイン・タフト(カナダ、ガーミン)
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
難関山岳3連戦を終えて、ブエルタは一路マドリードに向けて北上を開始。いよいよ今年最後のグランツールも終盤に突入した。
第15ステージはハエンからコルドバまでの170km。終盤には2級山岳サンヘロニモ峠を含む32.6kmの周回コースが2回設定されており、ゴール12km手前で標高565mの2級山岳を越えてコルドバに辿り着く。スプリンターたちにもチャンスがあるコースレイアウトだが、この日、山岳3連戦を終えたスプリンターチームに勢いは無かった。
逃げ切りが決まり易いコースだけに、レース序盤からアタックの応酬。1時間半に渡る攻防により、65km地点で発生したのは13名の逃げ。一旦逃げが決まると、メイン集団のスピードはガクンと落ちた。
逃げたのはレオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)やアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、サクソバンク)、ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)、マーティン・ベリトス(スロバキア、ミルラム)ら、総合ですでに1時間以上遅れている選手たちばかり。マイヨオロ擁するケースデパーニュは、完全にこの動きを容認した。
タイム差は5分、10分、15分と順調に広がり続け、1回目の2級山岳サンヘロニモ峠通過時点(残り44km地点)でタイム差は19分。13名の逃げ切りは誰の目にも明らかだった。
逃げグループ内でのステージ優勝争いが始まったのは、2回目のサンヘロニモ峠突入前。ビセンテ・レイネス(スペイン、チームコロンビア・HTC)のアタックにより逃げグループが割れ、本格的な上りが始まるとともにボームが後続を突き放して独走を開始。これをダビド・エッレロ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)が単独で追走した。
安定した力強いペダリングで、サンヘロニモ峠の緩斜面を駆け上がるボーム。後続のエッレロや、その後方の追走グループを突き放す走りでサンヘロニモ峠を上りきったボームが、ゴール地点コルドバに向かってダウンヒル。残り10kmの時点で追走エッレロは1分遅れ、追走グループは2分遅れ。ボームの独走勝利が決まった。
今年ラボバンクのコンチネンタルチームからプロツアーチームに昇格した23歳のボームが、グランツール初参戦で初勝利。「レース開始から2週間が経過して、まだこんなにも好調さを維持出来ていることには自分でも驚いている。この時期の勝利は本当に予想していなかった」と驚きを隠せない。
しかし23歳ながら落ち着いてレースを読み、そして実行に移した。「正直言うと(スプリント力のある)ドゥケらを恐れていなかったから、今日はスプリント勝負に持ち込むことも考えた。でもスプリント勝利か独走勝利か、どちらか選べと言われたら後者に決まっている。今日の山岳は僕でもこなせる程の難易度だった。逃げを成功に持ち込めて本当に良かったよ」。
2007年のロード世界選手権U23タイムトライアル優勝したボームは、昨年オランダのロード&タイムトライアルのナショナルチャンピオンに。今年ツアー・オブ・ベルギーで総合優勝に輝いている。
昨年からロードレースに精力的に参戦しているボームだが、元々はシクロクロスで世界にその名を轟かすトップライダーだ。シクロクロスでは2003年に世界選手権ジュニア優勝、2007年U23優勝。そして昨年エリート男子レースを制し、念願の世界チャンピオンに輝いた。ワールドカップレースでも3勝している強豪だ。
シクロクロスからロードレースに転向し、大成功を収めつつあるボーム。2年前の世界選手権U23タイムトライアルで優勝した際、ボームは「シクロクロスは一定時間高出力を出し続ける競技で、タイムトライアルと似ていると思う。シクロクロスからロードレースへの転向は、その逆よりも簡単だと思う」と語っている。
「金曜日の山岳(第19ステージ)はロベルト(ヘーシンク)のアシストとして働いて、土曜日のタイムトライアルで再び力を発揮したい。とにかく今のところ調子は非常にいいんだ」。カンチェラーラ(サクソバンク)不在のタイムトライアルでは優勝候補の一角だ。
この日、結局メイン集団は25分以上遅れてゴールにやってきた。サンヘロニモ峠の下りで総合3位のサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)が攻撃を仕掛けるシーンも見られたが、バルベルデが落ち着いてこれを対処。結局総合順位に大きな変動は見られなかった。
ステージの上位15名までポイントが与えられるため、最後はステージ14位を狙った集団スプリント。チームメイトに発射されたアンドレ・グライペル(ドイツ)が集団先頭を穫った。グライペルは2ポイントを加算し、ポイント賞トップのバルベルデとの差を2ポイントまで詰めている。
一番大きく変動したのがチーム総合成績。ランキング2位につけていたシャコベオ・ガリシアが逃げグループに2名を送り込んでいたため、ケースデパーニュを抜いて一躍トップに立っている。
選手コメントはラボバンクのチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第15ステージ結果
1位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)4h12'56"
2位 ダビド・エッレロ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+1'36"
3位 ドミニク・ロエルス(ドイツ、ミルラム)+1'44"
4位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)+2'04"
5位 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
6位 アレクサンドル・コロブネフ(ロシア、サクソバンク)
7位 マーティン・ベリトス(スロバキア、ミルラム)
8位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)
9位 アレクサンドル・エフィムキン(ロシア、アージェードゥーゼル)
10位 マチュー・ラダニュ(フランス、フランセーズデジュー)+3'23"
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)65h08'50"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+31"
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+1'10"
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+1'28"
5位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+1'51"
6位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+1'54"
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)+5'53"
8位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、ランプレ)+6'34"
9位 トーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン)+8'28"
10位 ファンホセ・コーボ(スペイン、フジ・セルヴェット)+10'45"
モンターニャ(山岳賞)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)160pts
2位 ダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)83pts
3位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)76pts
プントス(ポイント賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)80pts
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)76pts
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)68pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)9pts
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)11pts
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)22pts
チーム総合成績
1位 シャコベオ・ガリシア 195h15'19"
2位 ケースデパーニュ +20'51"
3位 アスタナ +27'47"
リタイア(DNS=未出走・DNF=途中リタイア)
DNF スヴェイン・タフト(カナダ、ガーミン)
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
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