2015/05/18(月) - 19:38
カンパニア州の山岳はどれも勾配がきつい。同じ獲得標高差4100mでも、大きな峠をつなぐドロミティやアルプスのステージよりも、断続的なアップダウンが続くほうが厳しいのではないかと思う。ジロ第1週を締めくくる第9ステージを振り返ります。
マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)の「今年のジロで一番厳しいステージ」というコメントはあながち間違っていなかった。最も高いところで標高1243mだが、ドロミティやアルプスの山岳ステージに肩を並べる獲得標高差4100m。リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)も「今日は戦争だ」と真面目な顔してスタートした。
カンパニア州の田舎道をつないだコースは序盤からアップダウンの繰り返しで、総合系チームの戦略が交錯する高速アタック合戦に始まり、しかも風が強いときた。第1週の締めくくりはそんなハードなステージ。相変わらず路面は悪く、放し飼いの犬も多く、登りは急勾配。休息日を控えた選手たちにナーバスな6時間をジロは提供する。
序盤に遅れ、60km地点で先頭から6分、メイン集団から4分遅れて単独走になっていた石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)は75km地点でバイクを降りたことはすでにお伝えした通り。
レース終了後、回収車でチームバスまで戻ってきた石橋に直撃したインタビューはこちらを読んでいただくとして、終わってしまった喪失感のようなものを隠しきれず、そこに悔しさが入り混じる表情で9日間を振り返ってくれた。
FINE GARA CICLISTICA(自転車レース終了)というバナー付きの回収車の助手席に乗ってコースを一通りトレースした石橋は「走っている時は夢中で沿道を見る余裕なんてなかった。凄い人の数だな、やっぱり凄いレースなんだな」と改めて感じたという。スタッフに「イシー」と呼ばれ親しまれている石橋は翌日にラ・スペツィアのチーム拠点に戻る。その後の予定はまだ決まっていないという。
前日に食あたりを起こし、体調がすぐれないまま第8ステージをグルペットで終えた別府史之(トレックファクトリーレーシング)は「体調は戻ってます」と語ってスタート。終盤にかけて徐々にリズムを取り戻したと言う。
「こんなにも脚が辛いと思ったのは、自転車に乗り始めてから初めてかもしれない。ただでさえ強度が高いグランツール、体調を崩すと地獄に変わるんだとつくづく実感した」。休息日前の難所を乗り切った別府は解放感あふれる笑顔を浮かべてフィニッシュラインを切った。
レース後に選手達はマルケ州まで400km近くを移動した。カンパニア州からモリーゼ州を抜けてイタリア半島の東岸を北上し、アブルッツォ州をパスしてマルケ州まで約4時間。今大会最も長い移動をこなしたチームは深夜にホテルに到着した。
移動の疲れやストレスを最小限にとどめるため、チームスカイはポートのためにヘリを用意。他の選手たちが工事区間ばかりのモリーゼ州の幹線道路を走っている頃、すでにポートはチヴィタノーヴァマルケのホテルに到着した。
チームスカイはポートのストレス軽減に注力している。専用のモバイルハウス(チームバスと同じぐらいの大きさ)が毎日チームホテルに横付けされ、ポートは毎日同じベッドで寝泊まりし、同じベッドでマッサージを受けている。今後モバイルハウスがエースの中で流行るかもしれない。
左肩脱臼のアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)や、イタリア中の期待を背負うファビオ・アル(イタリア、アスタナ)に対して、ストレスの少ないポートは「個人タイムトライアルが楽しみだ」と笑う。チームスカイの存在感の薄さは戦略的なものなのか、それともコンディションが悪いのかは謎だが、1週目から追い込んでいるティンコフ・サクソやアスタナに対して力を使っていないことだけは確かだ。
あと1点、表彰式でコンタドールが左腕を不自由なく使ってマリアローザに袖を通したことも忘れてはならない。まだ痛みが残っているようだが、強い鎮痛剤として知られるトラマドールは服用せず、炎症を抑えるためのイブプロフェンのみを使用しているという。コンタドールの左肩は明らかに快方に向かっている。
チームは天気の良いマルケ州で休息日を過ごす。身体的にはもちろんのこと、ピリピリした状態が続いたジロにおいて精神的な休養がどの選手にも必要だ。
かと行って選手達は1日寝て過ごすわけではなく、リズムを崩さないように数時間イージーライドに出かけるかローラー台で汗を流す。晴れ渡った気持ちの良い天気なので多くの選手達がおそらくコーヒーライドに出掛けているはずだ。
text&photo:Kei Tsuji in San Giorgio del Sannio, Italy
マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)の「今年のジロで一番厳しいステージ」というコメントはあながち間違っていなかった。最も高いところで標高1243mだが、ドロミティやアルプスの山岳ステージに肩を並べる獲得標高差4100m。リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)も「今日は戦争だ」と真面目な顔してスタートした。
カンパニア州の田舎道をつないだコースは序盤からアップダウンの繰り返しで、総合系チームの戦略が交錯する高速アタック合戦に始まり、しかも風が強いときた。第1週の締めくくりはそんなハードなステージ。相変わらず路面は悪く、放し飼いの犬も多く、登りは急勾配。休息日を控えた選手たちにナーバスな6時間をジロは提供する。
序盤に遅れ、60km地点で先頭から6分、メイン集団から4分遅れて単独走になっていた石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)は75km地点でバイクを降りたことはすでにお伝えした通り。
レース終了後、回収車でチームバスまで戻ってきた石橋に直撃したインタビューはこちらを読んでいただくとして、終わってしまった喪失感のようなものを隠しきれず、そこに悔しさが入り混じる表情で9日間を振り返ってくれた。
FINE GARA CICLISTICA(自転車レース終了)というバナー付きの回収車の助手席に乗ってコースを一通りトレースした石橋は「走っている時は夢中で沿道を見る余裕なんてなかった。凄い人の数だな、やっぱり凄いレースなんだな」と改めて感じたという。スタッフに「イシー」と呼ばれ親しまれている石橋は翌日にラ・スペツィアのチーム拠点に戻る。その後の予定はまだ決まっていないという。
前日に食あたりを起こし、体調がすぐれないまま第8ステージをグルペットで終えた別府史之(トレックファクトリーレーシング)は「体調は戻ってます」と語ってスタート。終盤にかけて徐々にリズムを取り戻したと言う。
「こんなにも脚が辛いと思ったのは、自転車に乗り始めてから初めてかもしれない。ただでさえ強度が高いグランツール、体調を崩すと地獄に変わるんだとつくづく実感した」。休息日前の難所を乗り切った別府は解放感あふれる笑顔を浮かべてフィニッシュラインを切った。
レース後に選手達はマルケ州まで400km近くを移動した。カンパニア州からモリーゼ州を抜けてイタリア半島の東岸を北上し、アブルッツォ州をパスしてマルケ州まで約4時間。今大会最も長い移動をこなしたチームは深夜にホテルに到着した。
移動の疲れやストレスを最小限にとどめるため、チームスカイはポートのためにヘリを用意。他の選手たちが工事区間ばかりのモリーゼ州の幹線道路を走っている頃、すでにポートはチヴィタノーヴァマルケのホテルに到着した。
チームスカイはポートのストレス軽減に注力している。専用のモバイルハウス(チームバスと同じぐらいの大きさ)が毎日チームホテルに横付けされ、ポートは毎日同じベッドで寝泊まりし、同じベッドでマッサージを受けている。今後モバイルハウスがエースの中で流行るかもしれない。
左肩脱臼のアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)や、イタリア中の期待を背負うファビオ・アル(イタリア、アスタナ)に対して、ストレスの少ないポートは「個人タイムトライアルが楽しみだ」と笑う。チームスカイの存在感の薄さは戦略的なものなのか、それともコンディションが悪いのかは謎だが、1週目から追い込んでいるティンコフ・サクソやアスタナに対して力を使っていないことだけは確かだ。
あと1点、表彰式でコンタドールが左腕を不自由なく使ってマリアローザに袖を通したことも忘れてはならない。まだ痛みが残っているようだが、強い鎮痛剤として知られるトラマドールは服用せず、炎症を抑えるためのイブプロフェンのみを使用しているという。コンタドールの左肩は明らかに快方に向かっている。
チームは天気の良いマルケ州で休息日を過ごす。身体的にはもちろんのこと、ピリピリした状態が続いたジロにおいて精神的な休養がどの選手にも必要だ。
かと行って選手達は1日寝て過ごすわけではなく、リズムを崩さないように数時間イージーライドに出かけるかローラー台で汗を流す。晴れ渡った気持ちの良い天気なので多くの選手達がおそらくコーヒーライドに出掛けているはずだ。
text&photo:Kei Tsuji in San Giorgio del Sannio, Italy
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