2009/09/08(火) - 09:51
最大勾配20%のソレット・デル・カティ峠でレースは動いた。逃げグループの中からこの激坂で飛び出したグスターボ・セサル(スペイン、シャコベオ・ガリシア)が優勝。ゴール前のスプリント勝負を制してステージ3位に入ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)がボーナスタイムによって総合首位に立った。
快晴に恵まれ、気温はグングン上昇 photo:Unipublic
ブエルタの山岳は他のグランツールとひと味違う。これまでヨーロッパ最強の上りとして知られる超級山岳アングリル(最大勾配23.5%)や超級山岳コバドンガ(最大勾配13%)と言った悪峰が選手たちを苦しめてきた。
この日登場したのは、カテゴリー1級のソレット・デル・カティ峠。上り自体は4kmほどしかなく、厳密に言えば、頂上はゴールの3km手前なので山頂フィニッシュではない。しかし最大勾配が20%に達する激坂で、後半は勾配がコンスタントに15%以上を刻む。選手たちは序盤からカテゴリー2級と3級の山岳を計6つ越え、この激坂に挑んだ。
メイン集団はマイヨオロ擁するサイレンス・ロットがコントロール photo:Unipublicアタック合戦の末にメイン集団から飛び出したのは7名。デラフエンテ(フジ・セルヴェット)、マルツァーノ(ランプレ)、デヴォルデル(クイックステップ)、ターラマエ(コフィディス)、セサル(シャコベオ・ガリシア)、ラミレス(アンダルシア)、サンチェス(コンテントポリス・アンポ)。
この先頭グループの中で最も積極的に動いたのは山岳賞狙いのデラフエンテで、連続して登場するカテゴリー2級と3級の山岳ポイントを連取した。
レース序盤に形成されたハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア)やステイン・デヴォルデル(ベルギー、クイックステップ)ら7名の逃げ photo:Unipublicメイン集団はマイヨオロ擁するサイレンス・ロットがコントロールし、タイム差を7分以内に保ってレース後半に突入。しかしメイン集団に逃げを追撃する動きは見られず、タイム差4分のままこの日最後の1級山岳ソレット・デル・カティ峠に突入した。
徐々に増す勾配、増す観客の数。急勾配区間が始まると、先頭グループは崩壊し、ターラマエの独走が始まった。ハンドルにしがみついて前へ前へと歩を進めるエストニアチャンピオン。しかし徐々にターラマエは失速し、ペースを崩さずに追走していたセサルとマルツァーノに追い抜かれて行く。やがて頂上手前でセサルが加速し、マルツァーノを振り切って独走態勢に入った。
地肌がむき出しになった丘陵地帯を進む photo:Unipublic一方のメイン集団はケースデパーニュやラボバンク、ガーミンがポジションを争いながら、鬼気迫るハイスピードでこの激坂に突入。急勾配区間で集団が一気に崩壊すると、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)が飛び出した。
この激坂でマイヨオロをかけたバトルが勃発した。集団に戻ったロドリゲスのサポートを受けたバルベルデが積極的にペースを上げ、カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)とイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)が食らいつく。サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)やトーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン)は急勾配の上りに苦戦した。
1級山岳ソレット・デル・カティ峠でペースを上げるレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス) photo:Unipublic結局バルベルデの度重なるアタックにもエヴァンスとバッソは崩れず、3名のカタマリで1級山岳ソレット・デル・カティ峠の頂上を通過。下りでロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が合流し、4名で追走グループを形成してゴールへ。
先頭ではマルツァーノを振り切ったセサルが最後まで手を止めず、独走態勢を維持したままゴールに飛び込んだ。マルツァーノが21秒遅れの3位に入り、ボーナスタイムを獲得出来るイスは残り1つ(ステージ3位・8秒)。追い上げる4名の有力グループから、ゴール200m手前でバルベルデが飛び出した。
1級山岳ソレット・デル・カティ峠でメイン集団のペースを上げるヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、ケースデパーニュ) photo:Unipublicその時点ではまだデラフエンテが3番手を逃げ続けていたが、勢い良く有力グループから飛び出したバルベルデが、ゴール直前でデラフエンテをパス。エヴァンス、バッソ、ヘーシンクを1秒引き離したバルベルデがステージ3位でゴールに飛び込み、タイム差1秒&ボーナスタイム8秒を獲得した。
合計9秒のタイム差をつけたバルベルデは、総合成績におけるエヴァンスとの2秒差をひっくり返して総合トップに立った。「とても嬉しいよ!マイヨオロを着て明日からムルシアのステージに挑めるので喜び倍増だ」。翌日からブエルタはバルベルデの地元ムルシア地方を通過する。それだけに喜びは一入だ。
急勾配の1級山岳ソレット・デル・カティ峠でカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)がペースアップ photo:Unipublic「ライバルたちの中には苦戦している選手がいたから、とにかく最後の上りではプッシュし続けた」。バルベルデを強力にサポートするケースデパーニュのチーム力も、その活躍に一役買っている。
スタート前に「当初ブエルタは世界選手権に向けての準備レースだったからモチヴェーションは高くなかった。けど今は違う。個人タイムトライアル以降、このブエルタで好成績を残せるように感じてきた」と、やる気を見せていたエヴァンスだったが、バルベルデの攻撃的な走りによって一日で首位陥落。エヴァンスは首位を明け渡した。
両手を広げてゴールに飛び込むグスターボ・セサル(スペイン、シャコベオ・ガリシア) photo:Cor Vosステージ優勝を飾ったセサルは、昨年ボルタ・ア・カタルーニャで総合優勝を果たした29歳のクライマー。同年ツール・ド・ランカウイで総合3位に入っており、その高い登坂力は実証済みだった。
自身初のグランツールでの勝利。しかし本人は至って冷静だ。「ステージ優勝したけど、これでチームの目標が100%達成されたわけじゃない。勝つことは大事だけど、エセキエル・モスケラをサポートして総合上位を狙うこともまた大事なこと」。そのモスケラは最後の上りで遅れ、1分12秒遅れのステージ13位でゴール。総合8位につけている。
マイヨオロに袖を通したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Cor Vos「難局を乗り切ったからこそ、この勝利の喜びは大きい」。セサルはリエージュにゴールする第4ステージで落車に巻き込まれた選手の一人だ。今年で出場3回目のシャコベオ・ガリシアは、これがグランツール2勝目。昨年のブエルタでは、山岳ステージでダビド・ガルシア(スペイン)がグランツール初勝利をチームにもたらしている。
ポイント賞ジャージはアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)が、山岳賞ジャージはダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)がキープ。一日中動き回ったデラフエンテは、1ポイント差で山岳賞ジャージ獲得を逃した。翌日からも積極的に動いてくるだろう。
選手コメントはレキップ紙とレース公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第9ステージ結果
1位 グスターボ・セサル(スペイン、シャコベオ・ガリシア)5h21'04"
2位 マルコ・マルツァーノ(イタリア、ランプレ)+21"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)+40"
4位 ダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)+41"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
6位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)
7位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)
8位 ハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア)+52"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)+1'12"
10位 トーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン)
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)36h26'40"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+07"
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+36"
4位 トーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン)+51"
5位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+53"
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+1'03"
7位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)+2'04"
8位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+2'24"
9位 ファンホセ・コーボ(スペイン、フジ・セルヴェット)+3'08"
10位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)+3'13"
モンターニャ(山岳賞)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)60pts
2位 ダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)59pts
3位 ピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)48pts
プントス(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)83pts
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)75pts
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)67pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)18pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)21pts
3位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)25pts
チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ 109h24'41"
2位 アスタナ +5'03"
3位 サイレンス・ロット +7'06"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
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ブエルタの山岳は他のグランツールとひと味違う。これまでヨーロッパ最強の上りとして知られる超級山岳アングリル(最大勾配23.5%)や超級山岳コバドンガ(最大勾配13%)と言った悪峰が選手たちを苦しめてきた。
この日登場したのは、カテゴリー1級のソレット・デル・カティ峠。上り自体は4kmほどしかなく、厳密に言えば、頂上はゴールの3km手前なので山頂フィニッシュではない。しかし最大勾配が20%に達する激坂で、後半は勾配がコンスタントに15%以上を刻む。選手たちは序盤からカテゴリー2級と3級の山岳を計6つ越え、この激坂に挑んだ。
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この先頭グループの中で最も積極的に動いたのは山岳賞狙いのデラフエンテで、連続して登場するカテゴリー2級と3級の山岳ポイントを連取した。
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徐々に増す勾配、増す観客の数。急勾配区間が始まると、先頭グループは崩壊し、ターラマエの独走が始まった。ハンドルにしがみついて前へ前へと歩を進めるエストニアチャンピオン。しかし徐々にターラマエは失速し、ペースを崩さずに追走していたセサルとマルツァーノに追い抜かれて行く。やがて頂上手前でセサルが加速し、マルツァーノを振り切って独走態勢に入った。
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この激坂でマイヨオロをかけたバトルが勃発した。集団に戻ったロドリゲスのサポートを受けたバルベルデが積極的にペースを上げ、カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)とイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)が食らいつく。サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)やトーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン)は急勾配の上りに苦戦した。
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先頭ではマルツァーノを振り切ったセサルが最後まで手を止めず、独走態勢を維持したままゴールに飛び込んだ。マルツァーノが21秒遅れの3位に入り、ボーナスタイムを獲得出来るイスは残り1つ(ステージ3位・8秒)。追い上げる4名の有力グループから、ゴール200m手前でバルベルデが飛び出した。
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合計9秒のタイム差をつけたバルベルデは、総合成績におけるエヴァンスとの2秒差をひっくり返して総合トップに立った。「とても嬉しいよ!マイヨオロを着て明日からムルシアのステージに挑めるので喜び倍増だ」。翌日からブエルタはバルベルデの地元ムルシア地方を通過する。それだけに喜びは一入だ。
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自身初のグランツールでの勝利。しかし本人は至って冷静だ。「ステージ優勝したけど、これでチームの目標が100%達成されたわけじゃない。勝つことは大事だけど、エセキエル・モスケラをサポートして総合上位を狙うこともまた大事なこと」。そのモスケラは最後の上りで遅れ、1分12秒遅れのステージ13位でゴール。総合8位につけている。
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ポイント賞ジャージはアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)が、山岳賞ジャージはダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)がキープ。一日中動き回ったデラフエンテは、1ポイント差で山岳賞ジャージ獲得を逃した。翌日からも積極的に動いてくるだろう。
選手コメントはレキップ紙とレース公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第9ステージ結果
1位 グスターボ・セサル(スペイン、シャコベオ・ガリシア)5h21'04"
2位 マルコ・マルツァーノ(イタリア、ランプレ)+21"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)+40"
4位 ダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)+41"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
6位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)
7位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)
8位 ハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア)+52"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)+1'12"
10位 トーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン)
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)36h26'40"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+07"
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+36"
4位 トーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン)+51"
5位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+53"
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+1'03"
7位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)+2'04"
8位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+2'24"
9位 ファンホセ・コーボ(スペイン、フジ・セルヴェット)+3'08"
10位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)+3'13"
モンターニャ(山岳賞)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)60pts
2位 ダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)59pts
3位 ピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)48pts
プントス(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)83pts
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)75pts
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)67pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)18pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)21pts
3位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)25pts
チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ 109h24'41"
2位 アスタナ +5'03"
3位 サイレンス・ロット +7'06"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic