2014/09/19(金) - 12:30
鹿屋体育大学、京都産業大学、法政大学、中央大学。今年のツール・ド・北海道には4つの大学生のチームが出場した。国内トップレベルのUCIレースに挑戦した学生選手の3日間を追いかけた。
ツール・ド・北海道には三つの伝統がある。一つは、「街から街へ」のラインレースである事。二つ目は毎年コースが変わる事。三つ目は、大学生チームが出場できる事だ。
日本でも最高峰の大会の一つ、ツール・ド・北海道に出場できる大学チームは、日本学生自転車競技連盟が指定する大会の成績に応じて与えられるポイントランキングにより決定する。今年は鹿屋体育大学、京都産業大学、法政大学、中央大学の4校が出場権を得た。
鹿屋体育大学(以下鹿屋)は、直前に行われたインカレで他を圧倒した徳田兄弟を中心に、ほぼベストメンバー。
ランキング2位で出場権を得た京都産業大学(以下京産大)は、3年生以下の力が拮抗した5人でエントリー。法政大学(以下法政大)は、全日本学生ロードレース・カップシリーズのランキング争いを優先したためベストメンバーではないものの、4年生の酒向俊平を中心とする5人。
中央大学(以下中央大)は、ロードを得意とする2年生の広瀬樹と、マトリックスパワータグの安原監督の次男、安原大生らを揃えた。
9月14日 第1ステージ 194km
初日にして今大会の最長ステージ。集団の意思がまとまらず小集団の逃げ切りを許してしまったレース展開の中、大学生チームは明暗が分かれた。
京産大は5人全員が完走。うち4人がメイン集団内でゴールした。キャプテンの渡邊誉大は「ついて行くので精一杯ではあったけど、1年の樋口が終盤の追撃集団に入る動きを見せてくれた。チーム内でコミュニケーションも取れているので、良い状態だったと思う」と、初日の結果には満足の様子。
鹿屋は3人がメイン集団でゴールしたものの、全体として消極的なレースになってしまったことに反省の言葉が出る。序盤から動きまわって、最後はグルペットでゴールした徳田鍛造は、「偉そうな言葉かもしれないけど、プロが動かないなら自分達が動かないといけないんです」と言う。
一方、法政大と中央大は初日からUCIレースの洗礼を受けた。法政大は酒向俊平がメイン集団内で完走したものの、2人が未完走となってしまった。中央大は広瀬樹が2分遅れのグルペットでゴールしたのが最高位だった。「プロに引きずり回されるばかりでした」と広瀬。「思った以上に差を見せつけられましたね」と肩を落とした。
9月15日 第2ステージ 183㎞
第2ステージは前日に比べてアップダウンが控え目なコース設定。想定よりも早いレース展開の中、鹿屋の徳田優がレース後半の逃げに乗った。
「那須ブラーゼンの佐野さんとチーム右京の窪木さんが行ったのが見えたので、これは行かないと!と思って飛びつきました。最後の場面で遅れてしまったので結果には繋がりませんでしたけど」と、若干の悔しさを滲ませつつも「今日は積極的に行こうと決めていたので、出来る事はやれたと思います」と言う。
2日目も全員完走した京産大。この日は間瀬勇毅が大学生の中では最上位となる36位でゴール。個人総合でも31秒差の36位につける。「初日は様子見だったけど、今日は序盤のアタック合戦に加わってみました。あと1日あるので、できればもっと上の順位を狙いたいですね」と意欲を見せる間瀬。「もう1日か2日あれば、もっと上を狙える気がするんですが」と付け加えた。
法政大は残った3名が全員完走。中央大はメカトラで遅れた安原が未完走となったが、3名が完走。そのうち広瀬と原井博斗がメイン集団で完走し、最終日に繋げた。
9月16日 第3ステージ 166㎞
個人総合争いが秒差で拮抗する中、レース終盤でメイン集団が逃げを吸収してゴールスプリントにもつれ込んだ最終日。混戦のスプリント合戦の中、鹿屋の黒枝咲哉が8位、中央大の原井が12位に食い込んで見せた。
「スプリントに向けての段取りは予定通りに進みました」と黒枝。「(徳田)優さんが先導して位置取りをして、入佐さんが発射台になって自分が行く。すべてうまくいきました。でも自分の力が無かったので勝てなかった・・・」と申し訳なさそうに語る。
「自分は1年なので、学生としてはまだ3回出られる。兄(黒枝士揮・ヴィーニファンティーニNIPPO)が勝ったように、自分も学生のうちに1勝してみせたい」と意気込みを見せた。黒川監督も「あの状況で一桁順位に食い込んだ事は褒められることだと思います」と、黒枝を讃えた。
一方、12位に入った中央大の原井は「ポイント賞ジャージの窪木さんが近くにいたので、目標にしてスプリントに入りました。混戦だったけど、自分のラインを見つけることが出来たので、うまく前方に行けたのが良かったと思います」と語る。「登りがもう少しできれば、総合順位も上に行けたかなと思う」と言うので、あと1日か2日あればよかったかな? と聞くと「3日間で十分です」と苦笑いしてみせた。
全員が完走した京産大はチーム総合11位。大学4校の中では最上位で終えた。「できればトップ10に入りたかったけど、1人も欠けることなく最後まで走れたのは大きな成果でした」と山岸監督。「全員3年生以下なので、今後の自信になると思うし、来年以降のインカレや学連の大会に繋げていきたい」と、3日間を総括した。
法政大は残った3人が最終日も完走した。「最後は集団の後ろで3人まとまってゴールしました」と酒向。「ツール・ド・北海道は1年の時から目標でした。2年と3年の時は出場権が取れなかったので、今年出られたことは嬉しかったです。実際出てみると、登りも平地もスピードがケタ違いで、トップクラスとの差を感じました」今年4年生の酒向は、来年は一般企業に就職することが決まっている。「自転車競技は好きなので、何らかの形で続けたいですね」。
「僕たちは強くなるためにツール・ド・北海道に来ている」
「僕達は勝つために北海道に来ているのではなく、強くなるために来ているんです」−− 鹿屋の黒川剛監督がしきりに繰り返した言葉だ。結果として、今年は学生のステージ優勝は無く、各賞ジャージに袖を通すことも無く終わった。しかし、「ツール・ド・北海道で得たものは他のレースでは得られない大きなものだった」と、選手や監督たちは語る。
大学生時代にツール・ド・北海道を経験し、現在エリートで活躍する選手も多い。今回出場した大学生の中からも彼等に続く選手が出てくるだろうし、さらに続く後輩も出てくるだろう。今後もUCIレースとしてだけでなく、次世代を担う大学生選手達に「強くなる機会」を与え続けるツール・ド・北海道であって欲しい。今大会に出場した大学生達を見続けてそう思った。
photo&text:加藤 智(Satoru.Kato)
ツール・ド・北海道には三つの伝統がある。一つは、「街から街へ」のラインレースである事。二つ目は毎年コースが変わる事。三つ目は、大学生チームが出場できる事だ。
日本でも最高峰の大会の一つ、ツール・ド・北海道に出場できる大学チームは、日本学生自転車競技連盟が指定する大会の成績に応じて与えられるポイントランキングにより決定する。今年は鹿屋体育大学、京都産業大学、法政大学、中央大学の4校が出場権を得た。
鹿屋体育大学(以下鹿屋)は、直前に行われたインカレで他を圧倒した徳田兄弟を中心に、ほぼベストメンバー。
ランキング2位で出場権を得た京都産業大学(以下京産大)は、3年生以下の力が拮抗した5人でエントリー。法政大学(以下法政大)は、全日本学生ロードレース・カップシリーズのランキング争いを優先したためベストメンバーではないものの、4年生の酒向俊平を中心とする5人。
中央大学(以下中央大)は、ロードを得意とする2年生の広瀬樹と、マトリックスパワータグの安原監督の次男、安原大生らを揃えた。
9月14日 第1ステージ 194km
初日にして今大会の最長ステージ。集団の意思がまとまらず小集団の逃げ切りを許してしまったレース展開の中、大学生チームは明暗が分かれた。
京産大は5人全員が完走。うち4人がメイン集団内でゴールした。キャプテンの渡邊誉大は「ついて行くので精一杯ではあったけど、1年の樋口が終盤の追撃集団に入る動きを見せてくれた。チーム内でコミュニケーションも取れているので、良い状態だったと思う」と、初日の結果には満足の様子。
鹿屋は3人がメイン集団でゴールしたものの、全体として消極的なレースになってしまったことに反省の言葉が出る。序盤から動きまわって、最後はグルペットでゴールした徳田鍛造は、「偉そうな言葉かもしれないけど、プロが動かないなら自分達が動かないといけないんです」と言う。
一方、法政大と中央大は初日からUCIレースの洗礼を受けた。法政大は酒向俊平がメイン集団内で完走したものの、2人が未完走となってしまった。中央大は広瀬樹が2分遅れのグルペットでゴールしたのが最高位だった。「プロに引きずり回されるばかりでした」と広瀬。「思った以上に差を見せつけられましたね」と肩を落とした。
9月15日 第2ステージ 183㎞
第2ステージは前日に比べてアップダウンが控え目なコース設定。想定よりも早いレース展開の中、鹿屋の徳田優がレース後半の逃げに乗った。
「那須ブラーゼンの佐野さんとチーム右京の窪木さんが行ったのが見えたので、これは行かないと!と思って飛びつきました。最後の場面で遅れてしまったので結果には繋がりませんでしたけど」と、若干の悔しさを滲ませつつも「今日は積極的に行こうと決めていたので、出来る事はやれたと思います」と言う。
2日目も全員完走した京産大。この日は間瀬勇毅が大学生の中では最上位となる36位でゴール。個人総合でも31秒差の36位につける。「初日は様子見だったけど、今日は序盤のアタック合戦に加わってみました。あと1日あるので、できればもっと上の順位を狙いたいですね」と意欲を見せる間瀬。「もう1日か2日あれば、もっと上を狙える気がするんですが」と付け加えた。
法政大は残った3名が全員完走。中央大はメカトラで遅れた安原が未完走となったが、3名が完走。そのうち広瀬と原井博斗がメイン集団で完走し、最終日に繋げた。
9月16日 第3ステージ 166㎞
個人総合争いが秒差で拮抗する中、レース終盤でメイン集団が逃げを吸収してゴールスプリントにもつれ込んだ最終日。混戦のスプリント合戦の中、鹿屋の黒枝咲哉が8位、中央大の原井が12位に食い込んで見せた。
「スプリントに向けての段取りは予定通りに進みました」と黒枝。「(徳田)優さんが先導して位置取りをして、入佐さんが発射台になって自分が行く。すべてうまくいきました。でも自分の力が無かったので勝てなかった・・・」と申し訳なさそうに語る。
「自分は1年なので、学生としてはまだ3回出られる。兄(黒枝士揮・ヴィーニファンティーニNIPPO)が勝ったように、自分も学生のうちに1勝してみせたい」と意気込みを見せた。黒川監督も「あの状況で一桁順位に食い込んだ事は褒められることだと思います」と、黒枝を讃えた。
一方、12位に入った中央大の原井は「ポイント賞ジャージの窪木さんが近くにいたので、目標にしてスプリントに入りました。混戦だったけど、自分のラインを見つけることが出来たので、うまく前方に行けたのが良かったと思います」と語る。「登りがもう少しできれば、総合順位も上に行けたかなと思う」と言うので、あと1日か2日あればよかったかな? と聞くと「3日間で十分です」と苦笑いしてみせた。
全員が完走した京産大はチーム総合11位。大学4校の中では最上位で終えた。「できればトップ10に入りたかったけど、1人も欠けることなく最後まで走れたのは大きな成果でした」と山岸監督。「全員3年生以下なので、今後の自信になると思うし、来年以降のインカレや学連の大会に繋げていきたい」と、3日間を総括した。
法政大は残った3人が最終日も完走した。「最後は集団の後ろで3人まとまってゴールしました」と酒向。「ツール・ド・北海道は1年の時から目標でした。2年と3年の時は出場権が取れなかったので、今年出られたことは嬉しかったです。実際出てみると、登りも平地もスピードがケタ違いで、トップクラスとの差を感じました」今年4年生の酒向は、来年は一般企業に就職することが決まっている。「自転車競技は好きなので、何らかの形で続けたいですね」。
「僕たちは強くなるためにツール・ド・北海道に来ている」
「僕達は勝つために北海道に来ているのではなく、強くなるために来ているんです」−− 鹿屋の黒川剛監督がしきりに繰り返した言葉だ。結果として、今年は学生のステージ優勝は無く、各賞ジャージに袖を通すことも無く終わった。しかし、「ツール・ド・北海道で得たものは他のレースでは得られない大きなものだった」と、選手や監督たちは語る。
大学生時代にツール・ド・北海道を経験し、現在エリートで活躍する選手も多い。今回出場した大学生の中からも彼等に続く選手が出てくるだろうし、さらに続く後輩も出てくるだろう。今後もUCIレースとしてだけでなく、次世代を担う大学生選手達に「強くなる機会」を与え続けるツール・ド・北海道であって欲しい。今大会に出場した大学生達を見続けてそう思った。
photo&text:加藤 智(Satoru.Kato)
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