2013/09/09(月) - 05:22
今年、開催100回目を迎えたツール・ド・フランスへのオマージュとして登場したピレネー山脈ペイラギュードの山頂フィニッシュ。フランスの地で、アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ.fr)が勝利した。
ピレネー山脈を縫うように走るブエルタ・ア・エスパーニャ第15ステージ。登場するプエルト・デル・カント、プエルト・デラ・ボナイグア、ポル・ド・バレ、ペイラギュードの4つの峠はいずれも標高1600〜2000mの1級山岳で、一日の獲得標高差は5310mに達する。
記念すべき100回目の開催を迎えたツール・ド・フランスへのオマージュとして、2003年以来10年ぶりにブエルタがフランス国内でゴールを迎える。ステージ全長ならびに獲得標高は今大会最大。いわゆるクイーンステージだ。
アンドラ市街地の喧噪を後にし、立ち並ぶショッピングセンターとガソリンスタンド(税金が安いため他国から多くの買い物客が訪れる)を過ぎ、アンドラ=スペインの国境検問所を抜けてようやく正式なスタートが切られた。
朝から雲行きは怪しく、最初の1級山岳プエルト・デル・カントに差し掛かるころには雨が降り始める。それでも前日のような強雨にはならない。観客やメディアの間では「メノスフリオ、メノスアグア(昨日より寒くないし、雨もまし)」が合い言葉。
霧に包まれた峠でミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)やセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、スカイプロサイクリング)、ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ)、ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)を含む28名がアタック。マイヨロホチームのアスタナは逃げグループを容認しながらも、用心のためにタイム差を2分ほどに抑え込んだ。
続く1級山岳プエルト・デラ・ボナイグアで逃げグループは崩壊し、第13ステージで勝利したワレン・バーギル(フランス、アルゴス・シマノ)やニコラ・エデ(フランス、コフィディス)、ミカエル・シュレル(フランス、アージェードゥーゼル)、アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ.fr)、フランシス・デグレーフ(ベルギー、ロット・ベリソル)、アンドレ・カルドソ(ポルトガル、カハルーラル)というフランス人率の高い6名が先行。山岳ポイントを量産したエデが山岳賞ランキングトップに立った。
序盤から降り続けた雨は、中盤にかけて小康状態に。しかし、冷雨&山岳の組み合わせによって、世界選手権を見据えるフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)やトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)ら9名がバイクを降りた。
フランス入国後、1級山岳ポル・ド・バレで先頭はジェニエとカルドソの2人に絞られる。追走グループで走っていたスカルポーニらがこれを追い、6分遅れでサクソ・ティンコフ率いるメイン集団という展開に。前日に総合2位から総合6位にダウンしたニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)が形勢逆転を狙ってメイン集団からアタックした。
テクニカルな下りでカルドソを引き離したジェニエが先頭で独走を開始。一方、逃げグループから遅れたオリバー・ツァウグ(スイス、サクソ・ティンコフ)が、メイン集団から飛び出したロッシュをアシストして次なる1級山岳ペイラギュードを目指す。ロッシュは一時的にメイン集団から1分のリードを得ることに成功する。
フィニッシュラインに至る1級山岳ペイラギュードの登りが始まるとメイン集団内で総合争いが加熱。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らが攻撃を仕掛けたが、ニーバリのリーチから抜け出すことは出来ない。
先頭では勝利を確信したジェニエが表情を緩ませながら残り1kmを切る。長時間追走グループで走り、決してペースを失わなかったスカルポーニが2番手で続いたが、ジェニエとの3分差が詰まらない。ジェニエがフランスの歓声を受けながらペイラギュード頂上に独走でゴールした。
FDJ.frで走るジェニエは25歳のフレンチクライマー。昨年までアルゴス・シマノ所属で、ブエルタでは土井雪広らのアシストを受けていた。「ブエルタのクイーンステージで勝つなんて最高だ。この瞬間を生涯忘れることはないだろう」と、グランツール初勝利を喜ぶ。
ジェニエから3分3秒遅れでスカルポーニがフィニッシュ。苦しい表情のロッシュが3位に入り、その13秒後方でニーバリ、ホーナー、ロドリゲス、バルベルデ、ポッツォヴィーヴォの5名がフィニッシュラインを切った。
クイーンステージで総合リードを守ったニーバリ。しかしレース後の記者会見では疲れを感じさせるコメントを残す。「今日は前半からイグリンスキーやグリブコ、ヴァノッティ、ティラロンゴらが素晴らしい働きをしてくれた。最後は全力を出し切ったよ。明日は短いステージなので、今日よりもイージーなレースを望む。この2日間の厳しいコンディションの影響を見ながら走りたい」。
ピレネー2日目を終えて、ニーバリと直近のライバルであるホーナーのタイム差は50秒。両者の登坂力は拮抗しており、ここから先は耐久力の勝負となる。42歳のホーナーは「脚の状態は素晴らしく、まるで若者みたいだ」と、まだまだ元気な様子を見せる。
翌日はピレネー3連戦の最終第16ステージ。標高1800mの1級山岳サジェント・デ・ガジェゴの山頂フィニッシュが待っている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第15ステージ結果
1位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ.fr) 6h20'12"
2位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ) +3'03"
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +3'07"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) +3'20"
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
6位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)
9位 ホセ・エラーダ(スペイン、モビスター) +3'23"
10位 ダビ・アローヨ(スペイン、カハルーラル)
11位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr) +3'45"
12位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +3'56"
13位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)
14位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング)
15位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ) +4'55"
DNF フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
DNF トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
DNF ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)他・計9名
敢闘賞
アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ.fr)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 60h20'21"
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) +50"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'42"
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2'57"
5位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル) +3'43"
6位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +3'59"
7位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr) +4'59"
8位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ) +6'18"
9位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +7'46"
10位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ) +9'11"
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 114pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 105pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 98pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) 33pts
2位 ダニエーレ・ラット(イタリア、キャノンデールプロサイクリング) 30pts
3位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) 22pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) 9pts
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 13pts
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 13pts
チーム総合成績
1位 アスタナ 180h26'37"
2位 エウスカルテル +3'53"
3位 モビスター +4'20"
text&photo:Kei Tsuji in Peyragudes, France
ピレネー山脈を縫うように走るブエルタ・ア・エスパーニャ第15ステージ。登場するプエルト・デル・カント、プエルト・デラ・ボナイグア、ポル・ド・バレ、ペイラギュードの4つの峠はいずれも標高1600〜2000mの1級山岳で、一日の獲得標高差は5310mに達する。
記念すべき100回目の開催を迎えたツール・ド・フランスへのオマージュとして、2003年以来10年ぶりにブエルタがフランス国内でゴールを迎える。ステージ全長ならびに獲得標高は今大会最大。いわゆるクイーンステージだ。
アンドラ市街地の喧噪を後にし、立ち並ぶショッピングセンターとガソリンスタンド(税金が安いため他国から多くの買い物客が訪れる)を過ぎ、アンドラ=スペインの国境検問所を抜けてようやく正式なスタートが切られた。
朝から雲行きは怪しく、最初の1級山岳プエルト・デル・カントに差し掛かるころには雨が降り始める。それでも前日のような強雨にはならない。観客やメディアの間では「メノスフリオ、メノスアグア(昨日より寒くないし、雨もまし)」が合い言葉。
霧に包まれた峠でミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)やセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、スカイプロサイクリング)、ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ)、ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)を含む28名がアタック。マイヨロホチームのアスタナは逃げグループを容認しながらも、用心のためにタイム差を2分ほどに抑え込んだ。
続く1級山岳プエルト・デラ・ボナイグアで逃げグループは崩壊し、第13ステージで勝利したワレン・バーギル(フランス、アルゴス・シマノ)やニコラ・エデ(フランス、コフィディス)、ミカエル・シュレル(フランス、アージェードゥーゼル)、アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ.fr)、フランシス・デグレーフ(ベルギー、ロット・ベリソル)、アンドレ・カルドソ(ポルトガル、カハルーラル)というフランス人率の高い6名が先行。山岳ポイントを量産したエデが山岳賞ランキングトップに立った。
序盤から降り続けた雨は、中盤にかけて小康状態に。しかし、冷雨&山岳の組み合わせによって、世界選手権を見据えるフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)やトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)ら9名がバイクを降りた。
フランス入国後、1級山岳ポル・ド・バレで先頭はジェニエとカルドソの2人に絞られる。追走グループで走っていたスカルポーニらがこれを追い、6分遅れでサクソ・ティンコフ率いるメイン集団という展開に。前日に総合2位から総合6位にダウンしたニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)が形勢逆転を狙ってメイン集団からアタックした。
テクニカルな下りでカルドソを引き離したジェニエが先頭で独走を開始。一方、逃げグループから遅れたオリバー・ツァウグ(スイス、サクソ・ティンコフ)が、メイン集団から飛び出したロッシュをアシストして次なる1級山岳ペイラギュードを目指す。ロッシュは一時的にメイン集団から1分のリードを得ることに成功する。
フィニッシュラインに至る1級山岳ペイラギュードの登りが始まるとメイン集団内で総合争いが加熱。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らが攻撃を仕掛けたが、ニーバリのリーチから抜け出すことは出来ない。
先頭では勝利を確信したジェニエが表情を緩ませながら残り1kmを切る。長時間追走グループで走り、決してペースを失わなかったスカルポーニが2番手で続いたが、ジェニエとの3分差が詰まらない。ジェニエがフランスの歓声を受けながらペイラギュード頂上に独走でゴールした。
FDJ.frで走るジェニエは25歳のフレンチクライマー。昨年までアルゴス・シマノ所属で、ブエルタでは土井雪広らのアシストを受けていた。「ブエルタのクイーンステージで勝つなんて最高だ。この瞬間を生涯忘れることはないだろう」と、グランツール初勝利を喜ぶ。
ジェニエから3分3秒遅れでスカルポーニがフィニッシュ。苦しい表情のロッシュが3位に入り、その13秒後方でニーバリ、ホーナー、ロドリゲス、バルベルデ、ポッツォヴィーヴォの5名がフィニッシュラインを切った。
クイーンステージで総合リードを守ったニーバリ。しかしレース後の記者会見では疲れを感じさせるコメントを残す。「今日は前半からイグリンスキーやグリブコ、ヴァノッティ、ティラロンゴらが素晴らしい働きをしてくれた。最後は全力を出し切ったよ。明日は短いステージなので、今日よりもイージーなレースを望む。この2日間の厳しいコンディションの影響を見ながら走りたい」。
ピレネー2日目を終えて、ニーバリと直近のライバルであるホーナーのタイム差は50秒。両者の登坂力は拮抗しており、ここから先は耐久力の勝負となる。42歳のホーナーは「脚の状態は素晴らしく、まるで若者みたいだ」と、まだまだ元気な様子を見せる。
翌日はピレネー3連戦の最終第16ステージ。標高1800mの1級山岳サジェント・デ・ガジェゴの山頂フィニッシュが待っている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第15ステージ結果
1位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ.fr) 6h20'12"
2位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ) +3'03"
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +3'07"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) +3'20"
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
6位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)
9位 ホセ・エラーダ(スペイン、モビスター) +3'23"
10位 ダビ・アローヨ(スペイン、カハルーラル)
11位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr) +3'45"
12位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +3'56"
13位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)
14位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング)
15位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ) +4'55"
DNF フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
DNF トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
DNF ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)他・計9名
敢闘賞
アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ.fr)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 60h20'21"
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) +50"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'42"
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2'57"
5位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル) +3'43"
6位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +3'59"
7位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr) +4'59"
8位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ) +6'18"
9位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +7'46"
10位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ) +9'11"
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 114pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 105pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 98pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) 33pts
2位 ダニエーレ・ラット(イタリア、キャノンデールプロサイクリング) 30pts
3位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) 22pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) 9pts
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 13pts
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 13pts
チーム総合成績
1位 アスタナ 180h26'37"
2位 エウスカルテル +3'53"
3位 モビスター +4'20"
text&photo:Kei Tsuji in Peyragudes, France
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