7月6日に行なわれたツール・ド・フランス第3ステージは、終盤の横風区間でチームコロンビア・HTCが集団を粉砕。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)がスプリント2連勝を飾った。別府史之(日本、スキル・シマノ)は8位に入り、日本人選手が2日連続でトップ10入りを果たした。

マルセイユの街をスタートしていく選手たちマルセイユの街をスタートしていく選手たち photo:Cor Vosプロヴァンスに位置するフランス最大の港湾都市、マルセイユ。ツール・ド・フランス第3ステージは映画TAXiシリーズの舞台でもあるこの人口80万人オーバーの大都市をスタートした。

海沿いに位置するリゾート地ラ・グラン・モットに至るまでの196kmの道のりは、中盤に2つの4級山岳が設定されているものの概ねフラット。この日も熱い太陽がコースを照らし、気温はすぐさま30度を超えた。

マルセイユをスタート後、海沿いを走るマルセイユをスタート後、海沿いを走る photo:Cor Vosこの日はレース序盤にアタックが決まり、マキシム・ブエ(フランス、アグリチュベル)、ルーベン・ペレス(スペイン、エウスカルテル)、クーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ)、サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)の4名が逃げる展開に。

翌日にチームタイムトライアルが控えているため、力を温存したいサクソバンクはレースを支配するような動きを見せなかった。タイム差は最大13分まで広がり、選手たちは40km/hに満たないスローペースで進行。設定された2つの4級山岳はいずれもデコルトが獲得した。

協力して平坦コースを逃げ続けるサミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)やクーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ)協力して平坦コースを逃げ続けるサミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)やクーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ) photo:Cor Vosやがてゴールまで70kmを切ると、集団コントロール役はサクソバンクからチームコロンビアにバトンタッチ。集団スプリントに持ち込みたいチームコロンビアの引きによりタイム差は縮小の一途をたどった。

「ミストラル(南フランス特有の季節風)」がコース真横から吹き始めた残り30km地点、メンバー9名全員を集団先頭に送り込んでいたチームコロンビアが攻撃に出た。猛烈なペースアップが図られると、集団内ではすぐさま中切れが起こって分裂。この一瞬の出来事が勝負を決めた。

大集団がヒマワリ畑を通過していく大集団がヒマワリ畑を通過していく photo:Cor Vosチームコロンビアがペースを上げる集団は、それまで逃げていたドゥムランらを飲み込み、ゴールに向かって猛進。27名に縮小したこの先頭集団の中にはマイヨジョーヌのファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)やランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)、トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)、別府史之らが入った。

後続集団はサイレンス・ロットやサクソバンク、ラボバンクが協力してペースを上げたが、スキル・シマノやアスタナ、ミルラムがローテーションに加わった先頭集団のペースは落ちない。この27名の先頭集団は30秒のリードを保ってラスト10kmに突入。27名によるスプリント勝負に持ち込まれた。

残り30km地点から猛烈にペースを上げ始めたチームコロンビア・HTC残り30km地点から猛烈にペースを上げ始めたチームコロンビア・HTC photo:Cor Vosチームコロンビアが他チームに主導権を与えず、トレインを形成してカヴェンディッシュを解き放つ。フースホフトが単独で対抗したが敵わず、マーク・レンショー(オーストラリア)に発射されたカヴェンディッシュが連勝。カヴは独創的な「電話ポーズ」で新スポンサーをアピールしながらゴールに飛び込んだ。

チームコロンビアの圧勝。下馬評通り、圧倒的な強さを誇るカヴがステージ2連勝を果たし、マイヨヴェール争いの大きなリードを築き上げた。2日連続で有力スプリンター全員集合の勝負ではなかったが、それもチームコロンビアの強靭なチーム力の賜物。平坦ステージでコロンビアトレインに敵うチームはいない。

トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)を破ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)がゴールトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)を破ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)がゴール photo:Cor Vosカヴは献身的に勝利をサポートするチームメイトへの賛辞を忘れない。「卓越したチームだ。ライバルチームを置き去りにしてしまうようなチームの強さには本当に感謝している。若い才能と経験豊かなベテランで構成されたチームはまさに“勝つための布陣”。まだスプリントのチャンスは6回残っている。その中でも穫りたいのがシャンゼリゼだ(チーム公式サイト)」。

6名を先頭集団に送り込むことに成功したスキル・シマノは、シリル・ルモワンヌ(フランス)が3位でゴール。そして別府史之がステージ8位に食い込む健闘を見せた。日本人選手の2日連続トップ10フィニッシュは歴史的な快挙だ。

ステージ8位でゴールする別府史之(日本、スキル・シマノ)ステージ8位でゴールする別府史之(日本、スキル・シマノ) photo:Makoto Ayanoマルセイユに住んでいたフミは「風の怖さを知っていたので、横風区間がきたときに、チームメイトに手を挙げて『行くぞ!』と注意を促した。チームコロンビアとアスタナとスキル・シマノが前に出て、そこで集団が分裂した(レース後インタビュー)」と語っている。スキル・シマノはステージ上位3名の合計成績で争われるチームのステージ成績で1位を獲得した。

後続の大集団は結局41秒遅れでゴール。総合成績に変動が見られたが、単独で先頭集団に残ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)がマイヨジョーヌを守っている。トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)は総合2位に浮上し、同時にマイヨブランを獲得した。

翌第4ステージは、2005年以来、4年ぶりのチームタイムトライアル。アップダウンのある39kmのコースで、チームの真価が問われる“時間との闘い”が繰り広げられる。


ツール・ド・フランス2009第3ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)5h01'24"
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)
3位 シリル・ルモワンヌ(フランス、スキル・シマノ)
4位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)
5位 ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)
6位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)
7位 ファビアン・ウェーグマン(ドイツ、ミルラム)
8位 別府史之(日本、スキル・シマノ)
9位 マキシム・ブエ(フランス、アグリチュベル)
10位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、ミルラム)
58位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+41"

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)9h50'58"
2位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)+33"
3位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)+40"
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+59"
5位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)+1'00"
6位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+1'03"
7位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、ミルラム)
8位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+1'04"
9位 マキシム・モンフォール(ベルギー、チームコロンビア・HTC)+1'10"
10位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)+1'11"
119位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+2'48"
124位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+2'52"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)70pts
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)54pts
3位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)36pts
14位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)22pts
20位 別府史之(日本、スキル・シマノ)18pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ユッシ・ヴェッカネン(フィンランド、フランセーズデジュー)9pts
2位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)6pts
3位 クーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ)6pt

マイヨブラン(新人賞)
1位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)9h51'31"
2位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+40"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+45"

チーム総合成績
1位 アスタナ 29h34'04"
2位 チームコロンビア・HTC +1'46"
3位 サクソバンク +1'53"

第3ステージ敢闘賞
サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)

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