2009/06/30(火) - 11:06
チームブリヂストンアンカーの活躍によっておなじみのアンカー RHM9 proは、日本のブランドがリリースする数少ないフルカーボン製ハイエンドロードバイクだ。国内で研究開発をすすめるアンカーの実力はいかに?
アンカー RHM9 pro photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
アンカーRHM9は2007年モデルとして発表されて以来、マイナーチェンジしてきた。2009モデルはRHM9 proとRHM9 SLがラインナップされるが、今回はチームブリヂストンアンカーがメインバイクとして使用するRHM9 proをテストした。
RHM9 proの特徴はヘッド周りの独特な造形「Dragon Claw Head(ドラゴンクローヘッド)」だろう。竜の爪がヘッドチューブを掴むようなデザインからネーミングされたそのデザインは、カラーリングのアクセントとともにひと目でRHM9と判るアクセントになっている。
ドラゴンクローヘッドは、ダンシング時の捩れを抑え、推進力、直進性、制動力を高める働きをすると言う。
ドラゴンクローヘッドが採用されたヘッドチューブ周り
フレームはハイモジュールカーボンによる3 ピース構造。アンカーの紹介によれば「高弾性、高推進力、快適性、そして軽量化、全ての要素を高次元で実現し、前三角の適度なしなりが体への負担を軽減しつつ、チェーンステーのボリュームアップによりリア剛性を上げ、振動吸収性と鋭い加速性を兼ね備えたフルカーボンバイク。チームブリヂストン・アンカーも認める剛性感と加速性能をもつ」ということだ。
チェーンステーのボリュームアップによりリア剛性を上げ、振動吸収性と鋭い加速性を兼ね備えた
2009モデルはフロントフォーク形状を見直しすることにより、さらなる剛性アップと軽量化を実現。
メインチューブの菱形断面形状は横剛性を高め、チューブ断面積の縮小、薄肉化を可能にし、さらなる軽量化を実現。 またバックフォークは細身の形状によって振動吸収性能がさらに向上。オリジナル設計のリアエンドも軽量化に貢献している。
菱形加工が施されたダウンチューブ
チームブリヂストンアンカーの活躍によって日本のホビーレーサーにはおなじみ。高い人気を誇るRHM9 proは、いったいどのような乗り味なのだろうか。
「自然なフィーリングを持ったレーシングバイク」鈴木祐一(Rise Ride) インプレッション
「ナチュラルな優等生レースバイク」
鈴木祐一(Rise Ride)
チームブリヂストンアンカーがレーシング機材として使っていることからわかるように、「純粋なレースバイク」という印象を得た。
踏んだ力を確実に後輪に伝えてくれて、それが推進力になるというレースで使うことを考えた、いいロードバイクだと感じた。スプリントのような力のかけ方をしても、ねじれはないし、素晴らしい剛性感を持っている。
ハンドリングの特性は、中間的というよりも、少し安定性のある味付けに振っているので、安心感が感じられた。レースという緊張感の高いシチュエーションの中で走行するためには、ハンドリングは安定しているほうが、ストレスや緊張感を緩和することができる。集団の中でリラックスして走れるということが、レース後半での力の差になって現れてくる。ハンドリングを安定性方向に振っているのは、そういう理由だと思う。
コーナーリング特性は、高速でも低速でもしっかりしていて、安心してコーナーを攻めていける。すごく真面目な作りで、面白さを感じることは少ないないが、「ナチュラルな優等生」のような印象だ。
加速感に関しては、重いギアを選択するよりも、常に80~90回転くらいの高回転でいくような、レース中に使う回転数よりも一段階回転を上げてスピードに乗せていく走りのほうが、よく伸びるように感じる。
振動吸収性も、悪いわけではないですが、サスペンションをつけたようなソフトな乗り味ではなく、荒れているところは荒れているところ、スムーズなところはスムーズなところと、路面の情報を正確に伝えてくれる。わかりやすいフィーリングとして伝えてくれるのだ。それをライダーがしっかりと受け止められる、正しい判断を促してくれるいいフレームだと思う。
ずばり「レーシングバイク」なので、日本では実業団のレースやホビーレースで活躍できるであろう、いい性能を持ったバイクだ。
また、ホイール等パーツの特性がわかりやすく出るような自転車だと思う。たとえば、フレーム自体に思いっきりエアロ加工をしてあるフレームにリムの低いカーボンホイールを使用しても違和感が出るもの。
このRHM9に関しては、山岳コースであったらカーボンリムの低いホイール、スタンダードなロードレースならキシリウムSLのような定番ホイール、高速で巡行するような平坦レースであるならディープリムホイールを使用するなどの使い分けをしたときに、そのホイールやパーツのよさをしっかり引き出す、真面目さや素直さを持っている。
このフレームひとつに対して、様々なパーツを組み合わせることにより、様々なシチュエーションのレースに特化することができる、懐の深い、守備範囲の広いいいフレームだと思う。
ただ、エンデューロやロングライドのような使い方であれば、アンカーなら別グレードのバイクを選んだほうが乗りやすいと思う。やはり、ロードレースをメインに活躍したいといった元気のあるレーサーに使ってほしいと思う。
「60万円程度でハイエンドバイクの性能が手に入れられる」 浅見和洋(なるしまフレンド) 「価格まで考慮すれば最高のレーシング機材」
浅見和洋(なるしまフレンド)
自分の中ではアンダー25万円のフレーム群のなかでは一番機材性に富んだフレームではないかと思う。
どこをとってもバランスがよく、その中でもとくに秀でているのは剛性面。フィーリングとしてはカッチリしているフレームではないかと思う。ロード選手はフレームの剛性感をとても大切にすると思うが、まさにこのフレームは選手好みの仕上がりになっていると思う。
ハンドリング性能、コーナリング性能、ブレーキング性能、どれをとってもストレスはまったく感じなかった。ストレスを乗り手に負担させない、いいバイクだ。
加速感も、剛性の高さから伺えるように、とても高いレベルだと判断した。踏んだ力に対して、ダイレクトに反応してくれるので、踏んでいて気持ちが良かった。
その反面、やはり振動吸収性が高いレベルとはいえないが、加速感や剛性レベルを考えると、少々悪くても妥協の範囲内だと感じた。
全体の感想としては、価格までを判断材料に加えると、最高のパフォーマンスを持っていると思う。やはり選手好みの性能を考えると、レースなどの志の高いライダーには最高の自転車であると言える。
選手にとって「フレームは消耗品」という考えがあるので、価格や供給の安定性は重要な判断材料になると思う。なので、そういう意味でもRHM9はとてもいいバイクだと感じる。
また、今回乗った自転車は完成車として販売されているものだったのだが、アンカーの販売方法であるセミオーダー形式を利用できることが素晴らしいと思う。ただ、RHM9に関しては、アンカーの特徴である豊富なカラーバリエーションが設定されていないのが少し残念だ。通常は、確か数十色からカラーを選択できるのだが、このフレームに関しては3色からしか選べない。そのあたりを改善していただけると、もう少し幅広いユーザーに選んでもらえると思う。
再び価格の話に戻るが、現在ハイエンドクラスの完成車は100万円オーバーが当たり前の世の中になっている。その中でもこのRHM-9proは60万円程度でハイエンドバイクの性能が手に入れられる。それがある意味アンカー独自の強みになっていると思う。
アンカーは保障や付属品も豊富で、初心者がいきなりスポーツバイクを買っても大丈夫という安心感もあるのだ。
アンカー RHM9 pro photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
フレーム 3ピースハイモデュラスカーボンインテグラルヘッド
フロントフォーク フルカーボンモノコックプロオーバーサイズ
ヘッド小物 TANGE ISL ダイレクトインタイプ
シートピン φ31.8 バンド式
フレーム重量 フレーム単体1,100g(490mm) フレームセット1,550g(490mm)
RHM9 Pro ¥665,000 (税抜¥633,333) デュラエース仕様完成車基準価格
RHM9 Frame ¥250,000 (税抜¥238,095) フレーム単体基準価格
※完成車は「セレクトパーツシステム」でフレームサイズ、ハンドルバー、ハンドルステム、バーテープ、ホイール、ギアクランク、スプロケット、ペダル が選べる。
鈴木祐一(Rise Ride)
鈴木祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。
2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
浅見和洋(なるしまフレンド) 浅見和洋(なるしまフレンド)
プロショップ「なるしまフレンド原宿店」スタッフ。身長175cm、体重65kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質は厳しい上りがあるコースでの活躍が目立つクライマータイプだ。ダンシングでパワフルに走るのが得意。最近の嗜好は日帰りロングランにあり、例えば東京から伊豆といった、距離にして300kmオーバーをクラブ員らと楽しんでいる。
なるしまフレンド
ウェア協力:ゴールドウィン
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アンカーRHM9は2007年モデルとして発表されて以来、マイナーチェンジしてきた。2009モデルはRHM9 proとRHM9 SLがラインナップされるが、今回はチームブリヂストンアンカーがメインバイクとして使用するRHM9 proをテストした。
RHM9 proの特徴はヘッド周りの独特な造形「Dragon Claw Head(ドラゴンクローヘッド)」だろう。竜の爪がヘッドチューブを掴むようなデザインからネーミングされたそのデザインは、カラーリングのアクセントとともにひと目でRHM9と判るアクセントになっている。
ドラゴンクローヘッドは、ダンシング時の捩れを抑え、推進力、直進性、制動力を高める働きをすると言う。
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フレームはハイモジュールカーボンによる3 ピース構造。アンカーの紹介によれば「高弾性、高推進力、快適性、そして軽量化、全ての要素を高次元で実現し、前三角の適度なしなりが体への負担を軽減しつつ、チェーンステーのボリュームアップによりリア剛性を上げ、振動吸収性と鋭い加速性を兼ね備えたフルカーボンバイク。チームブリヂストン・アンカーも認める剛性感と加速性能をもつ」ということだ。
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2009モデルはフロントフォーク形状を見直しすることにより、さらなる剛性アップと軽量化を実現。
メインチューブの菱形断面形状は横剛性を高め、チューブ断面積の縮小、薄肉化を可能にし、さらなる軽量化を実現。 またバックフォークは細身の形状によって振動吸収性能がさらに向上。オリジナル設計のリアエンドも軽量化に貢献している。
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チームブリヂストンアンカーの活躍によって日本のホビーレーサーにはおなじみ。高い人気を誇るRHM9 proは、いったいどのような乗り味なのだろうか。
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「ナチュラルな優等生レースバイク」
鈴木祐一(Rise Ride)
チームブリヂストンアンカーがレーシング機材として使っていることからわかるように、「純粋なレースバイク」という印象を得た。
踏んだ力を確実に後輪に伝えてくれて、それが推進力になるというレースで使うことを考えた、いいロードバイクだと感じた。スプリントのような力のかけ方をしても、ねじれはないし、素晴らしい剛性感を持っている。
ハンドリングの特性は、中間的というよりも、少し安定性のある味付けに振っているので、安心感が感じられた。レースという緊張感の高いシチュエーションの中で走行するためには、ハンドリングは安定しているほうが、ストレスや緊張感を緩和することができる。集団の中でリラックスして走れるということが、レース後半での力の差になって現れてくる。ハンドリングを安定性方向に振っているのは、そういう理由だと思う。
コーナーリング特性は、高速でも低速でもしっかりしていて、安心してコーナーを攻めていける。すごく真面目な作りで、面白さを感じることは少ないないが、「ナチュラルな優等生」のような印象だ。
加速感に関しては、重いギアを選択するよりも、常に80~90回転くらいの高回転でいくような、レース中に使う回転数よりも一段階回転を上げてスピードに乗せていく走りのほうが、よく伸びるように感じる。
振動吸収性も、悪いわけではないですが、サスペンションをつけたようなソフトな乗り味ではなく、荒れているところは荒れているところ、スムーズなところはスムーズなところと、路面の情報を正確に伝えてくれる。わかりやすいフィーリングとして伝えてくれるのだ。それをライダーがしっかりと受け止められる、正しい判断を促してくれるいいフレームだと思う。
ずばり「レーシングバイク」なので、日本では実業団のレースやホビーレースで活躍できるであろう、いい性能を持ったバイクだ。
また、ホイール等パーツの特性がわかりやすく出るような自転車だと思う。たとえば、フレーム自体に思いっきりエアロ加工をしてあるフレームにリムの低いカーボンホイールを使用しても違和感が出るもの。
このRHM9に関しては、山岳コースであったらカーボンリムの低いホイール、スタンダードなロードレースならキシリウムSLのような定番ホイール、高速で巡行するような平坦レースであるならディープリムホイールを使用するなどの使い分けをしたときに、そのホイールやパーツのよさをしっかり引き出す、真面目さや素直さを持っている。
このフレームひとつに対して、様々なパーツを組み合わせることにより、様々なシチュエーションのレースに特化することができる、懐の深い、守備範囲の広いいいフレームだと思う。
ただ、エンデューロやロングライドのような使い方であれば、アンカーなら別グレードのバイクを選んだほうが乗りやすいと思う。やはり、ロードレースをメインに活躍したいといった元気のあるレーサーに使ってほしいと思う。
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浅見和洋(なるしまフレンド)
自分の中ではアンダー25万円のフレーム群のなかでは一番機材性に富んだフレームではないかと思う。
どこをとってもバランスがよく、その中でもとくに秀でているのは剛性面。フィーリングとしてはカッチリしているフレームではないかと思う。ロード選手はフレームの剛性感をとても大切にすると思うが、まさにこのフレームは選手好みの仕上がりになっていると思う。
ハンドリング性能、コーナリング性能、ブレーキング性能、どれをとってもストレスはまったく感じなかった。ストレスを乗り手に負担させない、いいバイクだ。
加速感も、剛性の高さから伺えるように、とても高いレベルだと判断した。踏んだ力に対して、ダイレクトに反応してくれるので、踏んでいて気持ちが良かった。
その反面、やはり振動吸収性が高いレベルとはいえないが、加速感や剛性レベルを考えると、少々悪くても妥協の範囲内だと感じた。
全体の感想としては、価格までを判断材料に加えると、最高のパフォーマンスを持っていると思う。やはり選手好みの性能を考えると、レースなどの志の高いライダーには最高の自転車であると言える。
選手にとって「フレームは消耗品」という考えがあるので、価格や供給の安定性は重要な判断材料になると思う。なので、そういう意味でもRHM9はとてもいいバイクだと感じる。
また、今回乗った自転車は完成車として販売されているものだったのだが、アンカーの販売方法であるセミオーダー形式を利用できることが素晴らしいと思う。ただ、RHM9に関しては、アンカーの特徴である豊富なカラーバリエーションが設定されていないのが少し残念だ。通常は、確か数十色からカラーを選択できるのだが、このフレームに関しては3色からしか選べない。そのあたりを改善していただけると、もう少し幅広いユーザーに選んでもらえると思う。
再び価格の話に戻るが、現在ハイエンドクラスの完成車は100万円オーバーが当たり前の世の中になっている。その中でもこのRHM-9proは60万円程度でハイエンドバイクの性能が手に入れられる。それがある意味アンカー独自の強みになっていると思う。
アンカーは保障や付属品も豊富で、初心者がいきなりスポーツバイクを買っても大丈夫という安心感もあるのだ。
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アンカーRHM9 pro
フレーム 3ピースハイモデュラスカーボンインテグラルヘッド
フロントフォーク フルカーボンモノコックプロオーバーサイズ
ヘッド小物 TANGE ISL ダイレクトインタイプ
シートピン φ31.8 バンド式
フレーム重量 フレーム単体1,100g(490mm) フレームセット1,550g(490mm)
RHM9 Pro ¥665,000 (税抜¥633,333) デュラエース仕様完成車基準価格
RHM9 Frame ¥250,000 (税抜¥238,095) フレーム単体基準価格
※完成車は「セレクトパーツシステム」でフレームサイズ、ハンドルバー、ハンドルステム、バーテープ、ホイール、ギアクランク、スプロケット、ペダル が選べる。
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インプレライダーのプロフィール
鈴木祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。
2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
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プロショップ「なるしまフレンド原宿店」スタッフ。身長175cm、体重65kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質は厳しい上りがあるコースでの活躍が目立つクライマータイプだ。ダンシングでパワフルに走るのが得意。最近の嗜好は日帰りロングランにあり、例えば東京から伊豆といった、距離にして300kmオーバーをクラブ員らと楽しんでいる。
なるしまフレンド
ウェア協力:ゴールドウィン