2018/08/27(月) - 12:00
2019年に創業100周年を迎えるヘルメットブランド、LAZER(レイザー)。実はそんな長い歴史を持つことを知っていましたか? 今回の特集ページでは、知っているようで知らないレイザーというブランドを本国マーケティングマネージャーのインタビューより紐解いていきます。
第一次世界大戦が終結し平和が訪れた1919年。次々と新しい発明を生み出し、技術革新を遂げる欧米諸国に対し、日本は先進国に追いつくために近代化への歩みを早めた大正の時代。ベルギーはこの頃からすでに自転車大国として数多くのレースを開催していた。「キング・オブ・クラシック」と称されるロンド・ファン・フラーンデレンをはじめとした数々のビッグレースがベルギー国民の誇りでもあった。
そんな時代にレイザーの母体となる会社が設立される。創業当初はレイザーというブランドは立ち上げられておらず、この時代急速に成長を遂げるオートバイ用のレザー製品を手掛ける製造会社だったという。そういったルーツを持つレイザーは、現在も主力のプロダクトとしてモトヘルメットを開発し続けており、100年という歴史の中で数々のイノベーションを生み出し続けている。
一方、サイクリング用のギアに手を付けたのは、自転車がスポーツとして普及、発展した80年代から。まず、モトヘルメットのレイザーというブランドを1980年に立ち上げ、1987年にサイクリング用カスクをリリース。ベルナール・イノーやグレッグ・レモンといったレジェンドたちが覇を競いあい、マーケットが拡大していた時代にサイクリングの世界に飛び込んだ。
レイザーのサイクリング用ヘルメットの歴史はプロチームと共にある。カリスマ的人気を誇り、未だにファンが多いマペイをサポートし、パオロ・ベッティーニやヨハン・ムセーウらの活躍に貢献。カチューシャや地元ベルギーのロットチームとの関係性も忘れてはならない存在だ。ロビー・マキュアンやアンドレ・グライペルといった偉大なスプリンターや、ホアキン・ロドリゲスやトニー・ガロパンらクライマーがレイザーのヘルメットを王冠の様に戴きつつ、輝かしい成績を収めてきた。
そして2017年シーズンからは、オランダのロットにルーツを持つロットNLユンボをサポート。今年のツール・ド・フランスでは、ディラン・フルーネウェーフェンがステージ2勝、プリモシュ・ログリッチェが1勝と総合4位入りを果たし、これからの飛躍を期待させるパフォーマンスを示していたことは記憶に新しいだろう。
ベルギーが本場であるシクロクロスのレースシーンではレイザーが最も選ばれるヘルメットとも言えるほどのシェアを誇る。現在サポートしているのは、CXとMTB、ロードのオランダ王者マテュー・ファンデルポールを擁するコレンドン・サーカス、マーラックス・ビンゴールといったトップチーム。そして、ベルギーとオランダの最強2国のナショナルチームがレイザーを採用している。
レイザーは日本国内ではロードモデルを中心に展開しているが、本国ではMTBのフリーライド用やフルフェイス、アーバンモデル、キッズ用など多種多様な展開を行っている。加えて、ヘルメットに留まらずアイウェアまで開発していることを知っている国内ユーザーは多くないだろう。レイザーというブランドは想像以上に大きなブランドなのである。
これらが意味するのは、レイザーというブランドが成長するために必要なフィードバックを得られるチャンネルが多いという事だろう。100年で積み重ねてきた伝統やノウハウと、最新の、しかもあらゆるジャンルから取得できる情報を持つのはレイザーの強み。ヘルメットブランドを牽引するイノベーションを生み出す唯一無二の存在となり得るブランドだ。
まずレイザーにとって重要なことはベルジャンブランドであるということ。「我々は石畳をどの様に走るか知っている。フランドル(ロンド・ファン・フラーンデレン)やルーベ(パリ~ルーベ)のようなね。それがベルギーのカルチャーであり、ビールやチョコレートと同じように文化なんだ。ヘッドクォーター(本社)はダイヤモンドの形をしている街、アントウェルペンにある。レイザーはベルギーというバックグラウンドに誇りを持っているんだ」とスミンク氏。
アントウェルペンに思い入れがあることは最新モデル「CENTURY」からも伝わる。ヘルメット後端部に仕込まれた赤色LEDを暗闇で点灯すると、LEDがアントウェルペンの街の形、「ブリリアントカット」を施されたダイヤモンドのように光る演出となっているのだ。もちろん創業から100周年を意識したであろうCENTURY(センチュリー)=1世紀というモデル名も、ブランドヒストリーを大切にする証左だ。
ヘッドクォーターにはR&Dやマーケティング、グラフィックデザイン、テストラボに関するセグメントが設置されており、20名ほどがオフィスにいるという。非常に多くのプロダクトを展開していることを考えると、驚くほど小規模の体制だといえるだろう。そのなかでも最も重要なセクションはR&Dだとスミンク氏は言う。
「製品を開発することやイノベーションを起こすことが会社のバックボーンです。イノベーションを起こすことは、サイクリングカルチャーを豊かにすると共に、高いレベルのプロテクション性能を実現します。我々は首から上の安全性を担うブランドであり、そのための新しいソリューションを生み出すことに挑戦し続けています」とスミンク氏。
このイノベーションとR&Dに関するモチベーションと自信、誇りはマーケティングの方向性にも表れており、ヘッドクォーターが小規模である理由の一つでもある。スミンク氏は「我々が作るものは良いものであり、イノベーティブであると信じています。プロモーション自体は製品が行ってくれるため、マーケティングが大きな組織である必要はないと考えています」と語る。
実際にレイザーのエアロヘルメットは、ベルギーの自転車関連企業が複数出資して建設した「フランダースバイクバレー」の風洞施設やベロドロームでのテストを経てからプロダクトとなる。「このエアロヘルメットは、従来と比較し何ワット低減した」と声を大にしてアピールしないのは、レイザーが実験の結果優れた製品を世に送り出すことができたと自信を持つ実直な姿勢からだったのだ。
この立ち振舞いは100年続く老舗らしい職人気質と言えば良いだろうか。過度な演出をせずとも素晴らしい性能を備えていることは、供給しているプロたちの輝かしい成績、そして実際に生み出されるプロダクトを見ればわかるはず。これまでの歴史に誇りを、そして開発を進めるイノベーションへの自信を持ち、北欧神話の巨人の如く揺るがない姿勢を貫いてきた。
ヘルメット自体のパフォーマンスを向上させる進化に加えて、それらを妨げずに快適性や使い勝手を高めるアイデアも立派なイノベーションだ。レイザーは痒いところに手が届く独創的なアイデアを数多く生み出してきた。それらをピックアップして紹介しよう。
加えて、頭の周りを1周するワイヤーを無段階で巻き上げるシステムとなっていることも特徴だ。このロールシスによって、側頭部から後頭部を締め付ける一般的なシステムより、自然なフィット感を実現している。頭周全体を締めるフィッティングシステムは増えてきたが、10年以上前に生み出されたロールシスはそのパイオニアでもある。
また、軽量であるのもロールシスの大きな美点だ。従来モデルから進化した”アドバンスド・ロールシス"を搭載するZ1はSサイズで190gという重量を実現している。
ヘルメットやアイウエアが持つ頭部の保護という機能は事故時にこそ発揮されるものだが、サイクリストの安全を守るという観点においては、事故を未然に防ぐための取り組みも1つの要素だ。レイザーは、この事故予防という側面の安全性にもいち早く取り組んできたブランドでもある。ヘルメットに装着するライトは、車のドライバーからの視認性が高く、ライドの安全性を向上させるためには抜群の効果を発揮する。
具体的にはハイエンドのZ1にはLEDテールライトシステムが採用されている。後頭部のベンチレーションホールにLEDユニットを装着できるテクノロジーであり、ヘルメットの性能やルックスをそのままに被視認性を獲得してくれるオプションだ。また、先述したCENTURYのLEDも同様であり、このインテグレーテッドデザインこそがレイザーのイノベーションであり、アイデアだ。
LifeBEAMは、胸のバンドが苦手な方や、TTのスキンスーツのように非常にタイトなウェアを着用する場合にも活躍してくれるだろう。標準でビルトインされているモデルもあれば、Z1やBladeのように後で追加できるモデルもあり、必要に応じて変更できるのもユーザーとしては嬉しい点だ。
これはエアロダイナミクスを維持しつつも、オーバーヒートを防ぐためのもの。コンマ1秒でも削りたいTTにおいて空力は妥協できない要素だが、快適性も必要不可欠なもの。特に盛夏に開催されるレースやトライアスロンでは尚更のこと。そんなシチュエーションでも頭部を少しでも冷やしてリフレッシュさせられれば競技に集中できるはず。選手のニーズに応えるユニークな工夫である。
また、レイザーはロードヘルメットにおいてのエアロダイナミクスと通気性の両立を図る取り組みを行なっている。現在ロットNLユンボのディラン・フルーネウェーフェンらが活躍する平坦コースで使用率の高いBULLETは、ヘルメット中央部のシェルが可動式となっており、通気性を求めたい場合はシェルをスライドさせベンチレーションホールを出現させるようにしている。
一方、最新モデルのCENTURYではヘルメット中央のシェルが取り外し可能なカバーとなっている。カバーは片側は滑らかな表面、もう片側には通気口が開けられており、その向きを変える事で通気性と空力のバランスを調整する事が可能となっている。
欧州ブランドのヘルメットがフィットしないという悩みを持つ日本人は少なくないはず。そのため幾つかのブランドはアジアンフィットとして、帽体をアジア人にマッチさせたモデルをリリースしている。レイザーも例外ではなく一歩ずつアジアンフィットモデルを導入し始めた。
レイザーのアジアンフィットはヨーロッパモデルと比較し、縦幅が-2.8%、横幅が+3.4%とサイズチェンジ。具体的にはMサイズのヨーロピアンフィットの縦幅214.15mmから、アジアンフィットでは208.21mmに、横幅は168.04mmから173.83mmに調整が行われている。この帽体の形状変更により、いわゆる丸型頭にフィットする形状となっている。2019年ラインアップでのアジアンフィット(AF)モデルはBladeとCENTURYの2種類となる。
歴史に裏打ちされた信頼性と、革新的な進取の気質を持つ誇り高きベルジャンブランド、レイザー。アジアンフィットモデルは、100年の歴史が生み出す珠玉のヘルメットたちを身近にしてくれるはずだ。
歴史で振り返るレイザーとは
1919年、自転車大国ベルギーで生まれたレイザー
第一次世界大戦が終結し平和が訪れた1919年。次々と新しい発明を生み出し、技術革新を遂げる欧米諸国に対し、日本は先進国に追いつくために近代化への歩みを早めた大正の時代。ベルギーはこの頃からすでに自転車大国として数多くのレースを開催していた。「キング・オブ・クラシック」と称されるロンド・ファン・フラーンデレンをはじめとした数々のビッグレースがベルギー国民の誇りでもあった。
そんな時代にレイザーの母体となる会社が設立される。創業当初はレイザーというブランドは立ち上げられておらず、この時代急速に成長を遂げるオートバイ用のレザー製品を手掛ける製造会社だったという。そういったルーツを持つレイザーは、現在も主力のプロダクトとしてモトヘルメットを開発し続けており、100年という歴史の中で数々のイノベーションを生み出し続けている。
一方、サイクリング用のギアに手を付けたのは、自転車がスポーツとして普及、発展した80年代から。まず、モトヘルメットのレイザーというブランドを1980年に立ち上げ、1987年にサイクリング用カスクをリリース。ベルナール・イノーやグレッグ・レモンといったレジェンドたちが覇を競いあい、マーケットが拡大していた時代にサイクリングの世界に飛び込んだ。
トップチームをサポートするレイザー
レイザーのサイクリング用ヘルメットの歴史はプロチームと共にある。カリスマ的人気を誇り、未だにファンが多いマペイをサポートし、パオロ・ベッティーニやヨハン・ムセーウらの活躍に貢献。カチューシャや地元ベルギーのロットチームとの関係性も忘れてはならない存在だ。ロビー・マキュアンやアンドレ・グライペルといった偉大なスプリンターや、ホアキン・ロドリゲスやトニー・ガロパンらクライマーがレイザーのヘルメットを王冠の様に戴きつつ、輝かしい成績を収めてきた。
そして2017年シーズンからは、オランダのロットにルーツを持つロットNLユンボをサポート。今年のツール・ド・フランスでは、ディラン・フルーネウェーフェンがステージ2勝、プリモシュ・ログリッチェが1勝と総合4位入りを果たし、これからの飛躍を期待させるパフォーマンスを示していたことは記憶に新しいだろう。
ベルギーが本場であるシクロクロスのレースシーンではレイザーが最も選ばれるヘルメットとも言えるほどのシェアを誇る。現在サポートしているのは、CXとMTB、ロードのオランダ王者マテュー・ファンデルポールを擁するコレンドン・サーカス、マーラックス・ビンゴールといったトップチーム。そして、ベルギーとオランダの最強2国のナショナルチームがレイザーを採用している。
世界に誇るシマノグループへ
創業から100周年という大きな節目が見えてきた2016年、レイザーはツール・ド・フランスで採用率ナンバーワンのコンポーネントメーカー「シマノ」グループにジョインした。レイザーのマーケティングマネージャーを務めるマイク・スミンク氏は「シマノとの強大なコネクションができ、レイザーはアイウェアとヘルメットの開発によりフォーカスできるようになった。」という。レイザーは日本国内ではロードモデルを中心に展開しているが、本国ではMTBのフリーライド用やフルフェイス、アーバンモデル、キッズ用など多種多様な展開を行っている。加えて、ヘルメットに留まらずアイウェアまで開発していることを知っている国内ユーザーは多くないだろう。レイザーというブランドは想像以上に大きなブランドなのである。
これらが意味するのは、レイザーというブランドが成長するために必要なフィードバックを得られるチャンネルが多いという事だろう。100年で積み重ねてきた伝統やノウハウと、最新の、しかもあらゆるジャンルから取得できる情報を持つのはレイザーの強み。ヘルメットブランドを牽引するイノベーションを生み出す唯一無二の存在となり得るブランドだ。
ベルギー、安全性、パフォーマンス、イノベーションがアイデンティティ
ここまではレイザーの歴史からどのような生い立ちのブランドかを振り返ってみた。ここからはレイザーのアイデンティティは何によって形成されているのかを、マーケティングマネージャーのスミンク氏の言葉を交えて考えてみる。まずレイザーにとって重要なことはベルジャンブランドであるということ。「我々は石畳をどの様に走るか知っている。フランドル(ロンド・ファン・フラーンデレン)やルーベ(パリ~ルーベ)のようなね。それがベルギーのカルチャーであり、ビールやチョコレートと同じように文化なんだ。ヘッドクォーター(本社)はダイヤモンドの形をしている街、アントウェルペンにある。レイザーはベルギーというバックグラウンドに誇りを持っているんだ」とスミンク氏。
アントウェルペンに思い入れがあることは最新モデル「CENTURY」からも伝わる。ヘルメット後端部に仕込まれた赤色LEDを暗闇で点灯すると、LEDがアントウェルペンの街の形、「ブリリアントカット」を施されたダイヤモンドのように光る演出となっているのだ。もちろん創業から100周年を意識したであろうCENTURY(センチュリー)=1世紀というモデル名も、ブランドヒストリーを大切にする証左だ。
ヘッドクォーターにはR&Dやマーケティング、グラフィックデザイン、テストラボに関するセグメントが設置されており、20名ほどがオフィスにいるという。非常に多くのプロダクトを展開していることを考えると、驚くほど小規模の体制だといえるだろう。そのなかでも最も重要なセクションはR&Dだとスミンク氏は言う。
「製品を開発することやイノベーションを起こすことが会社のバックボーンです。イノベーションを起こすことは、サイクリングカルチャーを豊かにすると共に、高いレベルのプロテクション性能を実現します。我々は首から上の安全性を担うブランドであり、そのための新しいソリューションを生み出すことに挑戦し続けています」とスミンク氏。
このイノベーションとR&Dに関するモチベーションと自信、誇りはマーケティングの方向性にも表れており、ヘッドクォーターが小規模である理由の一つでもある。スミンク氏は「我々が作るものは良いものであり、イノベーティブであると信じています。プロモーション自体は製品が行ってくれるため、マーケティングが大きな組織である必要はないと考えています」と語る。
実際にレイザーのエアロヘルメットは、ベルギーの自転車関連企業が複数出資して建設した「フランダースバイクバレー」の風洞施設やベロドロームでのテストを経てからプロダクトとなる。「このエアロヘルメットは、従来と比較し何ワット低減した」と声を大にしてアピールしないのは、レイザーが実験の結果優れた製品を世に送り出すことができたと自信を持つ実直な姿勢からだったのだ。
この立ち振舞いは100年続く老舗らしい職人気質と言えば良いだろうか。過度な演出をせずとも素晴らしい性能を備えていることは、供給しているプロたちの輝かしい成績、そして実際に生み出されるプロダクトを見ればわかるはず。これまでの歴史に誇りを、そして開発を進めるイノベーションへの自信を持ち、北欧神話の巨人の如く揺るがない姿勢を貫いてきた。
レイザーのテクノロジーをプレイバック
サイクリング用ヘルメットの進化は、幾つかの大きなターニングポイントがあるにせよ、小さなイノベーションの積み重ねで行われてきた。例えば、より軽く、強い素材を使用することで、ベンチレーションホールの数と開口部の面積を広げ、プロテクション性能を犠牲にせずより優れた通気性を実現するなど。ヘルメット自体のパフォーマンスを向上させる進化に加えて、それらを妨げずに快適性や使い勝手を高めるアイデアも立派なイノベーションだ。レイザーは痒いところに手が届く独創的なアイデアを数多く生み出してきた。それらをピックアップして紹介しよう。
唯一無二のフッティングシステム「ロールシス」
レイザーが生み出したイノベーションの代表例は唯一無二のフィッティング/アジャスターシステム「Roll-sys(ロールシス)」と言っても良いだろう。一般的なヘルメットのアジャスターは、後頭部を支えるパッドと一体となったダイヤル式とされているが、ロールシスのダイヤルは頭頂部に設けられている。後頭部のパッドからダイヤルが廃されたことで、アジャスターを締め上げたときのパッドのタッチが柔らかくなるメリットがある。加えて、頭の周りを1周するワイヤーを無段階で巻き上げるシステムとなっていることも特徴だ。このロールシスによって、側頭部から後頭部を締め付ける一般的なシステムより、自然なフィット感を実現している。頭周全体を締めるフィッティングシステムは増えてきたが、10年以上前に生み出されたロールシスはそのパイオニアでもある。
また、軽量であるのもロールシスの大きな美点だ。従来モデルから進化した”アドバンスド・ロールシス"を搭載するZ1はSサイズで190gという重量を実現している。
プロテクション性能と同時に被視認性を高めるLEDライトシステム
我々サイクリストにとってライドの楽しみは事故に巻き込まれる危険性と隣り合わせでもある。近年では、昼間もライトを点灯し被視認性を向上させる”デイライト”という取り組みが盛んになっており、積極的に取り入れるブランドも増えてきた。ヘルメットやアイウエアが持つ頭部の保護という機能は事故時にこそ発揮されるものだが、サイクリストの安全を守るという観点においては、事故を未然に防ぐための取り組みも1つの要素だ。レイザーは、この事故予防という側面の安全性にもいち早く取り組んできたブランドでもある。ヘルメットに装着するライトは、車のドライバーからの視認性が高く、ライドの安全性を向上させるためには抜群の効果を発揮する。
具体的にはハイエンドのZ1にはLEDテールライトシステムが採用されている。後頭部のベンチレーションホールにLEDユニットを装着できるテクノロジーであり、ヘルメットの性能やルックスをそのままに被視認性を獲得してくれるオプションだ。また、先述したCENTURYのLEDも同様であり、このインテグレーテッドデザインこそがレイザーのイノベーションであり、アイデアだ。
額で心拍を計測するLifeBEAM
ロールシスと並ぶレイザーのユニークなアイデアと言えばLifeBEAMだ。これは額部分にセンサーを設置することで、センサーバンドを胸に装着せずとも心拍数の計測が可能となるテクノロジーだ。BluetoothやANT+でデータ通信を行うことで、一般的な心拍センサーと変わらず使用することができる。LifeBEAMは、胸のバンドが苦手な方や、TTのスキンスーツのように非常にタイトなウェアを着用する場合にも活躍してくれるだろう。標準でビルトインされているモデルもあれば、Z1やBladeのように後で追加できるモデルもあり、必要に応じて変更できるのもユーザーとしては嬉しい点だ。
小さくも使い勝手を高めるイノベーションの数々
レイザーのヘルメットにはこれまで説明したアイデアの他にも沢山の工夫が凝らされている。例えばエアロダイナミクスを追求するためにベンチレーションホールを持たないTT用ヘルメットの頭頂部には、ボトルの水をヘルメット内に流すことができる開口部とチャンネルを設けている。これはエアロダイナミクスを維持しつつも、オーバーヒートを防ぐためのもの。コンマ1秒でも削りたいTTにおいて空力は妥協できない要素だが、快適性も必要不可欠なもの。特に盛夏に開催されるレースやトライアスロンでは尚更のこと。そんなシチュエーションでも頭部を少しでも冷やしてリフレッシュさせられれば競技に集中できるはず。選手のニーズに応えるユニークな工夫である。
また、レイザーはロードヘルメットにおいてのエアロダイナミクスと通気性の両立を図る取り組みを行なっている。現在ロットNLユンボのディラン・フルーネウェーフェンらが活躍する平坦コースで使用率の高いBULLETは、ヘルメット中央部のシェルが可動式となっており、通気性を求めたい場合はシェルをスライドさせベンチレーションホールを出現させるようにしている。
一方、最新モデルのCENTURYではヘルメット中央のシェルが取り外し可能なカバーとなっている。カバーは片側は滑らかな表面、もう片側には通気口が開けられており、その向きを変える事で通気性と空力のバランスを調整する事が可能となっている。
日本人にマッチするアジアンフィットを導入
欧州ブランドのヘルメットがフィットしないという悩みを持つ日本人は少なくないはず。そのため幾つかのブランドはアジアンフィットとして、帽体をアジア人にマッチさせたモデルをリリースしている。レイザーも例外ではなく一歩ずつアジアンフィットモデルを導入し始めた。
レイザーのアジアンフィットはヨーロッパモデルと比較し、縦幅が-2.8%、横幅が+3.4%とサイズチェンジ。具体的にはMサイズのヨーロピアンフィットの縦幅214.15mmから、アジアンフィットでは208.21mmに、横幅は168.04mmから173.83mmに調整が行われている。この帽体の形状変更により、いわゆる丸型頭にフィットする形状となっている。2019年ラインアップでのアジアンフィット(AF)モデルはBladeとCENTURYの2種類となる。
歴史に裏打ちされた信頼性と、革新的な進取の気質を持つ誇り高きベルジャンブランド、レイザー。アジアンフィットモデルは、100年の歴史が生み出す珠玉のヘルメットたちを身近にしてくれるはずだ。
レイザー 2019年モデルラインアップ
CENTURY AF 通気性と空力を調整できるミドルグレード
サイズ | S、M、L |
重量 | 277g(Mサイズ) |
カラー | マットブラック、ホワイト/ブラック、フラッシュイエローブラック、レッドブラック、ブルーブラック |
価格 | 17,500円(税抜) |
Z1 プロ選手が使用するフラッグシップモデル
サイズ | S、M、L |
重量 | 190g(Sサイズ) |
カラー | マットブラック、ホワイト/シルバー、マットチタニウム、マットブラック/レッド、ブルーブラック、マットブラックイエロー |
価格 | 22,000円(税抜) |
Blade AF Z1のテクノロジーを受け継ぐミドルグレード
サイズ | S、M、L |
重量 | 255g(Sサイズ) |
カラー | マットブラック、ホワイト、マットチタニウム、マットブルー/ブラック、レッド/ブラック、マットブラック/ピンク |
価格 | 10,000円(税抜) |
提供:シマノセールス 取材:藤原岳人 制作:シクロワイアード編集部