2019/01/05(土) - 13:40
埼玉県川越市のモトクロスコース「オフロードヴィレッジ」で開催された新レース「川越サイクルオフロードエンデューロ」の第2戦に参戦した実走レポートをお届け。ユニークなオフロード耐久レースは新たな楽しさを提供してくれる。
11月24日(土)に開催された第1戦を取材した私・綾野(CW編集部)は、参加者たちの楽しそうに走る姿に感化され、12月22日(土)の第2戦にエントリーしてみた。主催者のひとり、川口朋さんからもお誘いを受け、中2生の息子とともに2人で120分チームの部に申し込んだ。ちなみにエントリーは直前まで可能なので仕事の都合で決めやすく、その点は非常に助かった。
車両規定が自由であるのと同じで、チームの組み方も自由なのは「ザ・草レース」な良いところ。2人チームのジャージが揃っていなくても良いので、好きにチームを組める。取材もするので、走り終わって休む間に撮影をして、遊びつつ仕事もしようという魂胆だ(笑)。
前回のソロ120分優勝者の竹田佳行さん(じてんしゃ屋 佳)はシクロクロスバイクに太めの38Cタイヤで走ったが、今回私は29インチのフルサスMTBをチョイスし投入。このへんのノウハウは後半の機材編で紹介しよう。
レースのスタートは昼1時。家で朝食をのんびり摂ってから出発し、早めのお昼ご飯を食べてから会場入りできる余裕が嬉しい。雨の予報が出ていたが、天気はもちそう。オフロードヴィレッジ(通称オフビ)で午前中はモトクロスバイクが跳ね回っている様子を観て楽しむ。12時でコースクリアになって、下見走行。前回よりコースに湿り気があり、路面が締まっているので走りやすそうだが、アップダウンが絶え間なく続き、オートバイが掘った深い轍が所々にあるので見た目以上に難しい。最高地点の小山の直前に前回無かった山がひとつ追加されていたりと、面白くする工夫が加えられている。
120分のチームとソロ上位には賞金が出るということで、狙うつもりでいた。参加者層はまだ薄く、ペアを組む息子が中学生では全国トップを争えるほど速いのでチャンスありとみた(笑)。
オートバイで使用されるタイヤ止めのスターティング・グリッドが「ガシャッ」と下がって飛び出していく選手たち。ホールショットをとったのはMTB選手の澤木紀雄選手(acu-powerレーシング)。続くのはシクロクロスのマスターズの強者・石川正道選手(チャンピオンシステム)。その二人がランデブーしながら飛ばす。20人出走の120分ソロは過酷ながら強者が多く揃うため、レース全体をリードする。
チームクラスの問題は何周ごとにライダー交代を行うか、だ。交代エリアに立ち寄ると20mぐらい余計に走るロスがあるため、当チームは当初5周交代としたが、どうやらそれは多すぎた。一周1.2kmしかないコースだが、高低差があること、そして加速と減速を繰り返すので思った以上に体力を消耗してしまう。1周3分〜5分ぐらいなので、複数人チームなら1周毎の交代か、スプリント的なスピードが衰えてしまう前の2周交代ぐらいがちょうどいいようだと判った。
それにしてもアップダウンはしつこく繰り返し、小山ほどに高い上りもあるので、勢いをつけて失速しないように登るのがコツだ。コーナーもたえず連続するので、タイヤが滑らない範囲でスピードをコントロールしてクリアしたい。掘れた轍のエッジにタイヤをのせて曲がれれば速いが、ラインをミスすると失速したり転倒したり。加速減速が続くので変速操作も忙しい。周回を重ねるごとに勢いを殺さない走り、ライン取りのコツがつかめて上達していくのが面白い。
ウォッシュボード区間では上下方向の身体の動きを加えることができれば加速していくので面白いようにスピードにのれる(最初はそれができなくて遅かった)。ウッドチップが撒かれてふかふかの箇所もあるので、太めのタイヤのほうが有利。荒れた路面ではフルサスが有利だが、小山を駆け上るときにはロスになるのでサスのロックアウト機構を頻繁に使うことになる。走り方により最適な機材も変わってくるようだ。
2時間走っての総合トップはソロの澤木選手で40周!。同周回の石川選手を22秒離しての優勝は、さすがはXCエリミネーター競技の日本チャンプ&世界選手権代表選手だ。
澤木選手曰く「コース幅も十分に広くて、難易度は走るライン次第でイージーにも難しくもなるようなコースレイアウトですね。特に初心者、はじめてのオフロード走行の人にオススメですね。2〜3人で交代しながら120分走るのが個人的にオススメです! 周回コースを何周も走るこのレースはテクニックの向上にすごくメリットがあって、競技者な人もトレーニングレースとしてかなり良い練習になりますし、賞金&賞品を狙ってガチで走るのも良いですね。今度は仲間とチームで出てみたいと思いました」とのこと。ちなみに澤木選手はレース翌日にオートバイでの体験走行に招待され、チャレンジしたそうです。
120分チームクラスを走った我が3UPシクロワイアードチームはイオンバイクJrレーシングの中仙道侑毅&高橋翔選手ペアとバトルとなり、息子が稼いだ差を父が失うという繰り返しだったが、後半30分でトップに立って最後まで逃げ切り、なんとか優勝することができた。イオンバイクの中1&小4生のジュニア2人は全国区の実力をもつ選手で、単独なら完全に負けていました...。子供相手の死闘で、完全に出し切りました(笑)。
初体験のこのレースは、シクロクロスレースともMTBレースとも違う面白さがあって、自転車遊びの原点に回帰できたような楽しい一日だった。120分クラスのソロとチーム上位者には賞金が授与されるが、今回はなんとソロは6位まで授与されるという大盤振る舞いだった! 我チームも優勝賞金1万円をいただき、ホクホク。
オフビを走るバイクは何がいい?
本文でも書いたとおり、バイク用に作られたオフビのコースはどんなタイプのバイクで走れば良いか迷うところ。ドロップハンドルのシクロクロスバイクは速いが、コースの難しさにシビアな面も。エアボリュームがあって転がる29erのクロスカントリー系MTBはもっとも安定して走れる選択だろう。澤木選手の優勝バイクとCW編集部・綾野がチョイスしたバイクを紹介する。
120分ソロ優勝 澤木紀雄選手(acu-powerレーシング)
澤木選手のバイクはNINER(ナイナー)のハードテイル29er。タイヤはコンチネンタルのRaceKingの2.2インチを使用し、空気圧は1.9にセット。面白いのはカセットスプロケットにロード用アルテグラの11-30Tを使用してクロスレシオを作り出していること。チェーンホイールもXTをシングル化して36Tとしている。コースの小山は勢いをつけて一気に登ることができればロー42Tなどの軽いスプロケットは不要だからだ。
29erフルサスMTBはもっとも走りやすい選択?
筆者の綾野(CW編集部)はスコットジャパンからSPARK RC 900 COMPをお借りして走った。ご存知ニノ・シューター(スイス、スコット・スラムMTBレーシング)が連戦連勝を重ねるフルサスペンションバイクの血統モデルで、XCレース的な走りには最適。
走っていて特に良いと感じたのはスコット独自のTwinLocシステム。左手元にあるレバーを操作するだけで前後のサスペンションを「深く動く・浅く動く・ロックアウト」の3つのセッティングに瞬時に切り替えられることで、急坂もペダリングロス無く登れ、繰り返すアップダウンにも対応できた。29erフルサスMTBは車重が重くなりがちではあるけれど、転がりも良く安心して走れるから結局は速いと感じる。120分チームの部優勝はSPARKのおかげであることは確か。
速く走れるバイクを考えるのは楽しいけれど、どんな自転車でも参加が可能なのがこのレースのいいところ。とりあえず持ってるバイクで挑戦するもよし。初めてのオフロードレースのチャレンジにはもってこいです。
年明けの川越サイクルオフロードエンデューロは第3戦が1月19日(土)、第4戦は2月9日(土)に開催されるが、主催者によればまずは参加者100人超えを目指し、その後もほぼ毎月レースを開催していきたいという意向のようだ。夏場はカテゴリー別のスプリント形式を取り入れたレースにしたり、敗者復活戦形式を取り入れるなど工夫していく予定だという。また、井手川直樹選手らとコラボしてイベントを行う計画も進めているとかで、今後もオフビには色々と面白い仕掛けが待っていそうだ。
※1月19日(土)開催の第3戦が現在エントリー受付中。詳細は公式サイトをチェック。
photo&text:Makoto.AYANO
11月24日(土)に開催された第1戦を取材した私・綾野(CW編集部)は、参加者たちの楽しそうに走る姿に感化され、12月22日(土)の第2戦にエントリーしてみた。主催者のひとり、川口朋さんからもお誘いを受け、中2生の息子とともに2人で120分チームの部に申し込んだ。ちなみにエントリーは直前まで可能なので仕事の都合で決めやすく、その点は非常に助かった。
車両規定が自由であるのと同じで、チームの組み方も自由なのは「ザ・草レース」な良いところ。2人チームのジャージが揃っていなくても良いので、好きにチームを組める。取材もするので、走り終わって休む間に撮影をして、遊びつつ仕事もしようという魂胆だ(笑)。
前回のソロ120分優勝者の竹田佳行さん(じてんしゃ屋 佳)はシクロクロスバイクに太めの38Cタイヤで走ったが、今回私は29インチのフルサスMTBをチョイスし投入。このへんのノウハウは後半の機材編で紹介しよう。
レースのスタートは昼1時。家で朝食をのんびり摂ってから出発し、早めのお昼ご飯を食べてから会場入りできる余裕が嬉しい。雨の予報が出ていたが、天気はもちそう。オフロードヴィレッジ(通称オフビ)で午前中はモトクロスバイクが跳ね回っている様子を観て楽しむ。12時でコースクリアになって、下見走行。前回よりコースに湿り気があり、路面が締まっているので走りやすそうだが、アップダウンが絶え間なく続き、オートバイが掘った深い轍が所々にあるので見た目以上に難しい。最高地点の小山の直前に前回無かった山がひとつ追加されていたりと、面白くする工夫が加えられている。
120分のチームとソロ上位には賞金が出るということで、狙うつもりでいた。参加者層はまだ薄く、ペアを組む息子が中学生では全国トップを争えるほど速いのでチャンスありとみた(笑)。
オートバイで使用されるタイヤ止めのスターティング・グリッドが「ガシャッ」と下がって飛び出していく選手たち。ホールショットをとったのはMTB選手の澤木紀雄選手(acu-powerレーシング)。続くのはシクロクロスのマスターズの強者・石川正道選手(チャンピオンシステム)。その二人がランデブーしながら飛ばす。20人出走の120分ソロは過酷ながら強者が多く揃うため、レース全体をリードする。
チームクラスの問題は何周ごとにライダー交代を行うか、だ。交代エリアに立ち寄ると20mぐらい余計に走るロスがあるため、当チームは当初5周交代としたが、どうやらそれは多すぎた。一周1.2kmしかないコースだが、高低差があること、そして加速と減速を繰り返すので思った以上に体力を消耗してしまう。1周3分〜5分ぐらいなので、複数人チームなら1周毎の交代か、スプリント的なスピードが衰えてしまう前の2周交代ぐらいがちょうどいいようだと判った。
それにしてもアップダウンはしつこく繰り返し、小山ほどに高い上りもあるので、勢いをつけて失速しないように登るのがコツだ。コーナーもたえず連続するので、タイヤが滑らない範囲でスピードをコントロールしてクリアしたい。掘れた轍のエッジにタイヤをのせて曲がれれば速いが、ラインをミスすると失速したり転倒したり。加速減速が続くので変速操作も忙しい。周回を重ねるごとに勢いを殺さない走り、ライン取りのコツがつかめて上達していくのが面白い。
ウォッシュボード区間では上下方向の身体の動きを加えることができれば加速していくので面白いようにスピードにのれる(最初はそれができなくて遅かった)。ウッドチップが撒かれてふかふかの箇所もあるので、太めのタイヤのほうが有利。荒れた路面ではフルサスが有利だが、小山を駆け上るときにはロスになるのでサスのロックアウト機構を頻繁に使うことになる。走り方により最適な機材も変わってくるようだ。
2時間走っての総合トップはソロの澤木選手で40周!。同周回の石川選手を22秒離しての優勝は、さすがはXCエリミネーター競技の日本チャンプ&世界選手権代表選手だ。
澤木選手曰く「コース幅も十分に広くて、難易度は走るライン次第でイージーにも難しくもなるようなコースレイアウトですね。特に初心者、はじめてのオフロード走行の人にオススメですね。2〜3人で交代しながら120分走るのが個人的にオススメです! 周回コースを何周も走るこのレースはテクニックの向上にすごくメリットがあって、競技者な人もトレーニングレースとしてかなり良い練習になりますし、賞金&賞品を狙ってガチで走るのも良いですね。今度は仲間とチームで出てみたいと思いました」とのこと。ちなみに澤木選手はレース翌日にオートバイでの体験走行に招待され、チャレンジしたそうです。
120分チームクラスを走った我が3UPシクロワイアードチームはイオンバイクJrレーシングの中仙道侑毅&高橋翔選手ペアとバトルとなり、息子が稼いだ差を父が失うという繰り返しだったが、後半30分でトップに立って最後まで逃げ切り、なんとか優勝することができた。イオンバイクの中1&小4生のジュニア2人は全国区の実力をもつ選手で、単独なら完全に負けていました...。子供相手の死闘で、完全に出し切りました(笑)。
初体験のこのレースは、シクロクロスレースともMTBレースとも違う面白さがあって、自転車遊びの原点に回帰できたような楽しい一日だった。120分クラスのソロとチーム上位者には賞金が授与されるが、今回はなんとソロは6位まで授与されるという大盤振る舞いだった! 我チームも優勝賞金1万円をいただき、ホクホク。
オフビを走るバイクは何がいい?
本文でも書いたとおり、バイク用に作られたオフビのコースはどんなタイプのバイクで走れば良いか迷うところ。ドロップハンドルのシクロクロスバイクは速いが、コースの難しさにシビアな面も。エアボリュームがあって転がる29erのクロスカントリー系MTBはもっとも安定して走れる選択だろう。澤木選手の優勝バイクとCW編集部・綾野がチョイスしたバイクを紹介する。
120分ソロ優勝 澤木紀雄選手(acu-powerレーシング)
澤木選手のバイクはNINER(ナイナー)のハードテイル29er。タイヤはコンチネンタルのRaceKingの2.2インチを使用し、空気圧は1.9にセット。面白いのはカセットスプロケットにロード用アルテグラの11-30Tを使用してクロスレシオを作り出していること。チェーンホイールもXTをシングル化して36Tとしている。コースの小山は勢いをつけて一気に登ることができればロー42Tなどの軽いスプロケットは不要だからだ。
29erフルサスMTBはもっとも走りやすい選択?
筆者の綾野(CW編集部)はスコットジャパンからSPARK RC 900 COMPをお借りして走った。ご存知ニノ・シューター(スイス、スコット・スラムMTBレーシング)が連戦連勝を重ねるフルサスペンションバイクの血統モデルで、XCレース的な走りには最適。
走っていて特に良いと感じたのはスコット独自のTwinLocシステム。左手元にあるレバーを操作するだけで前後のサスペンションを「深く動く・浅く動く・ロックアウト」の3つのセッティングに瞬時に切り替えられることで、急坂もペダリングロス無く登れ、繰り返すアップダウンにも対応できた。29erフルサスMTBは車重が重くなりがちではあるけれど、転がりも良く安心して走れるから結局は速いと感じる。120分チームの部優勝はSPARKのおかげであることは確か。
速く走れるバイクを考えるのは楽しいけれど、どんな自転車でも参加が可能なのがこのレースのいいところ。とりあえず持ってるバイクで挑戦するもよし。初めてのオフロードレースのチャレンジにはもってこいです。
年明けの川越サイクルオフロードエンデューロは第3戦が1月19日(土)、第4戦は2月9日(土)に開催されるが、主催者によればまずは参加者100人超えを目指し、その後もほぼ毎月レースを開催していきたいという意向のようだ。夏場はカテゴリー別のスプリント形式を取り入れたレースにしたり、敗者復活戦形式を取り入れるなど工夫していく予定だという。また、井手川直樹選手らとコラボしてイベントを行う計画も進めているとかで、今後もオフビには色々と面白い仕掛けが待っていそうだ。
※1月19日(土)開催の第3戦が現在エントリー受付中。詳細は公式サイトをチェック。
photo&text:Makoto.AYANO
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