2017/12/20(水) - 09:02
11月19日に行われた南アルプスロングライド「ツール・ド・富士川ステージ」。起伏豊かな富士川流域の魅力を存分に味わうことができる後半部分のレポートをお届けします。
南アルプスの山々をバックに走っていく ツール・ド・富士川ステージ
さて、大幅にパワーアップした第一エイドステーション、富士川クラフトパークに名残を惜しみつつ先を急ぐことにする。ツール・ド・富士川ステージが開催されるのは山梨のなかでも「峡南」と呼ばれるエリア。その名が示す通り、富士川を挟むように山が迫ってくる谷間の地域なのだ。
つまりどういうことかといえば、どこに行くにも坂は避けられないということ。言い換えるならば、いわゆる坂バカと呼ばれる人種にとっては、これ以上ない天国だということでもある。そんな峡南地域で大きな存在感を放っているのが、日蓮宗の総本山である身延山久遠寺。日蓮上人が身罷った地であり、日蓮教団における最高の聖地として、今も全国から多くの信徒が参拝に訪れる名刹である。
そんな身延山こそが、大会中最大勾配を持つ「壁」として参加者たちの前に立ちはだかるのだ。ちなみに筆者は3度目の参加となるが、毎年その壁っぷりには驚かされている。ましてや初参加の方々をや。第一エイドから南下し、富士川を再度渡り右岸に出る。しばらく平坦基調の道を走って現れるのが身延山の総門だ。威厳に満ちた門をくぐれば、空気が一変するのが肌で感じられ、どこか張り詰めているような緊張感が山に満ちている。
身延山の入り口ともいえる総門を通過
第2エイドではみのぶ饅頭と菓子パンが振舞われました
門前町を激坂へ向けて登っていく
今年は名高い壁に向かう手前、参拝客で賑わう門前町の中ほどに第2エイドステーションが設けられ、ここまでの旅程で消費した熱量を補うことができる。ここでふるまわれるのは、手っ取り早くおなかを満たすことができる各種のパンに加えて、身延まんじゅうなど。
エイドで休んでいる方々のなかでも、過去にこのイベントに参加されているリピーターの方やスタッフさんたちが、初参加の方にこの先の激坂がいかに厳しいのかをアドバイスしている。語りて曰く、蛇行必至だとか脚が攣っただとか。実際、初めてあの坂を見るとそれだけで心折れてしまいそうだな、と皆さんの優しさに感服しつつ自分もこの先登らなければいけないことを思い出す。
三門の前で記念撮影タイム!
修行走の幟が良い味だしてますね
脚つかずに登れたのになーという顔の佐藤さん
激坂での再スタートをサポートしてくれるエース栗原さん
グループごとにスタートしていく隊列の中には、ゲストライダーの今中さんや佐藤さんの姿も。まんじゅうや湯葉のお店からの蒸気にけぶる門前町には「修行走」という幟が翻り、まさしくこれからの登りを表しているかのよう。荘厳な威容を誇る三門を通り過ぎれば、激坂はすぐそこだ。
さて、登りますか!と気合を入れたところで、「降りてくださーい」と声をかけるスタッフさんの姿が。どうやら参拝客の方々の車が渋滞しているようだ。いやあ、とっても残念だが主催者からの指示とあっては仕方がない、おとなしく押すとしよう。内心、しめしめラッキーと思って降車、歩道を押して歩くのだが、これはこれでつらいものがある。自分はSPDシューズだからまだ歩きやすいけれど、ロード用ビンディングだと滑りそうな勾配なのだ。乗るも地獄、押すも地獄だな、と日蓮宗総本山でちょっぴり罰当たりなニュアンスの思考を挟みつつ、もくもくと登る。
最後の区間を全力で漕ぐ佐藤さん
境内には厳かな雰囲気の五重塔も建てられている
本殿の前で佐藤さんと一緒に記念撮影タイム!
参拝者向けの駐車場を過ぎれば、乗車可能区間となる。もちろん、そのまま押して歩くもよし、最後に溜めた脚でもがくもよし。ここではエース栗原さんがスタートを切るライダー(主に女性)の背中を押して、スタートを手伝ってくれる応援も。前日のトークショーで「絶対脚つかないですよ!」と豪語していたチャリダー・佐藤さんもここからは乗車でチャレンジ。周囲を励ましながら、最後の激坂区間を乗り切った。
それぞれの脚力に合わせた方法で修行走を終えたら、久遠寺の境内に。本殿や五重塔など、さまざまな建築物が立ち並ぶ境内を愛車とともに通過することができるのは、1年にこの日だけだろう。なんともぜいたくなライドであるし、なんとも懐の深いお寺でもある。
久遠寺のマスコットキャラクターと記念撮影
ピークに向けて再び少し登っていく
富士川沿いの下り区間はとても爽快なひと時だ
久遠寺境内で記念撮影など済ませ、退出した後はほんの少し登ったあとに爽快なダウンヒル区間へ。途中、富士川を見下ろす絶景ポイントも待っているが、かなりスピードが出る区間なので気を付けてほしい。その後は富士川沿いに北上していき、第一エイドであった富士川クラフトパークをかすめるようにして走っていく。途中、幹線道路を避けるために早川沿いを走る区間を交えつつ、飯富橋で再び富士川左岸へ。
一つ丘を越えると、往路で通過した久那土の集落へ到着する。ここが第3エイドステーション、つまり待ちに待ったランチがいただけるエイドステーションとなる久那土中学校だ。「田舎料理は旅をしない」をモットーに、富士川エリアで作られる食材をふんだんに使用し、地元の料理屋さんたちが腕を振るって用意してくださった「こしべんと」が今年も迎えてくれた。
ゲストライダー3人でこしべんとをいただきます!
無農薬野菜のヘルシーなこしべんと
サツキマスを使った五十九バーガー
鶏の炊き込みご飯がメインのこしべんと
多くのロングライドイベントがエイドのふるまいに力を入れているけれども、ランチを3種類から選ぶことができる大会というのは、全国探してもなかなかないだろう。今年は、市川三郷町にある根津牧場のとれたて野菜をメインに使ったおかめ鮨、富士川忍沢養殖場のサツキマスを使った五十九バーガーの國本屋、鶏の炊き込みご飯が食欲をそそる割烹とりしんの3つのこしべんとから一つを選ぶことになったのだが、どれも甲乙つけがたい。悩みに悩み、今年はとりしんさんのコシベントをチョイス。ひとつひとつのおかずから丁寧な仕事が窺える繊細な味で、あっという間に平らげてしまった。
おなか一杯になったところで一休み、と行きたいところだけれど、この後には本格的なヒルクライムが待っている。全長7km、約400mを登る峠は勢いで走破するには少々厳しいプロフィール。淡々と高度を上げて頂上を目指して走り続けていく。民家が途切れ、いくつかのヘアピンが現れれば、この登りも最終盤。最後の直登区間を登り切った先には、絶景ポイントが待っている。
秋めく山をいくつも登っていくツール・ド・富士川ステージ
今中さんも参加者と一緒に走ってくれます
苦しむ佐藤さんをサポートするエース栗原さん
富士川の街並みを見下ろしながら下っていく
ヒルクライムで使い果たした脚を回復させつつ、再び下っていく。市川三郷方面へと一気に標高を消化しながら向かっていくことに。下り切ったら、第4エイドである「みたまの湯」を目指して再び登りに突入する。登りとはいえ、先ほどの峠に比べれば緩やかなもの。グループでまとまって走るのも苦ではないくらいの勾配で、サポートライダーさんたちが刻んでくれるペースが心地いい。
第4エイドとなるみたまの湯は、かなりの高台に位置する温浴施設で、南アルプスや八ヶ岳の山容と眼下に広がる甲府盆地の街並みを眺めながら温まることが出来る露天風呂が人気を集めるスポット。ちなみに大会後にお邪魔しましたが、お湯も景色も絶品でございました。
みたまの湯まではまた登りだ
もう少しでみたまの湯ですよ!頑張って
レインボーレッドとようかんが振舞われた第4エイド
高台まで登ってきた甲斐のある景色が待っている
こちらのエイドステーションでは、昨年に引き続き高級キウイの「レインボーレッド」が振舞われる。キウイといえば、緑色の果肉で、ちょっと酸っぱくてシャクシャクした触感、というのがおおよそのイメージかと思いますが、このレインボーレッドはそんな固定観念をあっさり覆してくれる。まず、中心部に近づくにつれて赤く色づくイエローの果肉は、口に含むとねっとりとした食感。そして舌が感じるのはとびきりの甘さ。疲労が溜まってきた体には、かなり効く甘さで、思わずお替りをいただいてしまった。
みたまの湯で絶品フルーツと絶景を楽しんだ後は、この大会最後にして最難関の登り、最終エイドである「みさき耕舎」へのヒルクライムへと向かっていく。いったん、フィニッシュ地点である道の駅富士川を通り過ぎる。実は、最後のこのヒルクライムは「ヒルクライムチャレンジ」区間として、挑戦するのは自由というルールなので、調子の良しあしによってはここでフィニッシュすることもできる。ちょっと、いやかなり魅力的なプランではあるのだが、誘惑を振り切って最後の登りへとアプローチ。
この最後の登りはタイム計測区間となっていて、計測開始区間ではいったんストップすることに。どういうことかといえば、自分のサイクルコンピューターのラップボタンを押して、自己計測するというルールなのだ。と、そんな感じのゆるーいルールなのでシャカリキに走る必要はないのだけれど、表彰もされるため、脚自慢はここで全力を出し切りたい。
ここからヒルクライムチャレンジ区間がスタートする
ランニングで自転車をごぼう抜きするエース栗原さん
富士山が見守る中ヒルクライムをこなしていく
ヒルクライムチャレンジの名に恥じず、かなり走り応えのある峠になっており、中には蛇行してしまう人も。フレッシュな状態であればまだしも、100km近く走った最後に現れるので総合力を試される。写真を撮りつつ休憩していると、なんとランニングで現れたのはエース栗原さん。流石デュアスリートという走りで、喘ぎながら登る参加者たちを励ましつつ、次々に抜き去っていく。内心、自分が自転車に乗っているときに抜かされなくてよかったと安堵しつつ、残る距離を削りにかかる。
森の中を抜け、集落が見えればフィニッシュとなるみさき耕舎はかなり近い。途中、富士山の雄大な姿が見える区間もあるのだが、登っているときはそれどころではない。パンパンの脚をだまくらかしつつ、最終エイドに転がり込んだ。フィニッシュラインでサイコンをストップし、タイムを係の方に伝えればヒルクライムチャレンジは完了だ。
きれいな富士山見えてますよ!
ヒルクライムチャレンジ区間で精魂尽き果てた佐藤さん
とろりと甘いラ・フランスにかぶりつく編集部員カマタ
みさき耕舎にもチャリたぬくんがいるんです!
かなり陽も傾いてきていることに加え、標高も高いので少し肌寒くなってくる。そんなところに用意されているのが、温かいゆず湯。甘くてあったかい砂糖水にさわやかなゆずピールが入れられ、糖分とクエン酸を同時に補充できる、まさにこの状況ではこれ以上ない至高の一杯。また、併せて振舞われたラ・フランスの甘さの虜になりつつ、ゆず湯をお替り。なんどかそのローテーションを決め、人心地つく。
ウィンドブレーカーを着込み、サクッと下る。あれだけヒーコラ言いながら登ってきた道を1/10以下の時間で駆け抜け、フィニッシュ地点の道の駅富士川へ。フィニッシュしたのは、太陽も南アルプスに隠れようとするころあい。まさに、1日中楽しみつくす大満足のライドとなった。
長旅お疲れ様でした!スタッフ総出でお出迎え
最後は「みみ」ほうとうで身体をあっためましょう
フィニッシュには土曜日と同じく「みみ」ほうとうが振舞われ、下りで冷えた身体を温めてくれる。できれば、そのまま温泉で体の芯から温まるのがオススメだ。周辺には温泉もたくさんあるので、ひとっ風呂浴びる先に困ることはない。とはいえ、やはりオススメなのはエイドにもなった「みたまの湯」だろうか。フィニッシュ後のタイミングだと、美しい夜景を堪能できるはずだ。
おいしいエイドに走り応えのあるコース。2日間を通して、さまざまなバリエーションの種目も用意され、ビギナーからベテランライダーまで、老若男女問わず楽しむことが出来る南アルプスロングライドは、山梨県が持っているたくさんの魅力をサイクリスト目線で気づかせてくれる、真の地域密着型イベントだ。
そんな南アルプスロングライドを主催するやまなしサイクルプロジェクトは、将来的に「ツール・ド・山梨」として、県全域を回るような大規模イベントの開催を目指しているのだとか。来年には、また大きな動きがあるという。首都圏からもほど近いサイクリングデスティネーションとして、今後も山梨エリアから目が離せそうにない。
text:Naoki.Yasuoka
photo: Makoto.AYANO,Naoki.Yasuoka

さて、大幅にパワーアップした第一エイドステーション、富士川クラフトパークに名残を惜しみつつ先を急ぐことにする。ツール・ド・富士川ステージが開催されるのは山梨のなかでも「峡南」と呼ばれるエリア。その名が示す通り、富士川を挟むように山が迫ってくる谷間の地域なのだ。
つまりどういうことかといえば、どこに行くにも坂は避けられないということ。言い換えるならば、いわゆる坂バカと呼ばれる人種にとっては、これ以上ない天国だということでもある。そんな峡南地域で大きな存在感を放っているのが、日蓮宗の総本山である身延山久遠寺。日蓮上人が身罷った地であり、日蓮教団における最高の聖地として、今も全国から多くの信徒が参拝に訪れる名刹である。
そんな身延山こそが、大会中最大勾配を持つ「壁」として参加者たちの前に立ちはだかるのだ。ちなみに筆者は3度目の参加となるが、毎年その壁っぷりには驚かされている。ましてや初参加の方々をや。第一エイドから南下し、富士川を再度渡り右岸に出る。しばらく平坦基調の道を走って現れるのが身延山の総門だ。威厳に満ちた門をくぐれば、空気が一変するのが肌で感じられ、どこか張り詰めているような緊張感が山に満ちている。



今年は名高い壁に向かう手前、参拝客で賑わう門前町の中ほどに第2エイドステーションが設けられ、ここまでの旅程で消費した熱量を補うことができる。ここでふるまわれるのは、手っ取り早くおなかを満たすことができる各種のパンに加えて、身延まんじゅうなど。
エイドで休んでいる方々のなかでも、過去にこのイベントに参加されているリピーターの方やスタッフさんたちが、初参加の方にこの先の激坂がいかに厳しいのかをアドバイスしている。語りて曰く、蛇行必至だとか脚が攣っただとか。実際、初めてあの坂を見るとそれだけで心折れてしまいそうだな、と皆さんの優しさに感服しつつ自分もこの先登らなければいけないことを思い出す。




グループごとにスタートしていく隊列の中には、ゲストライダーの今中さんや佐藤さんの姿も。まんじゅうや湯葉のお店からの蒸気にけぶる門前町には「修行走」という幟が翻り、まさしくこれからの登りを表しているかのよう。荘厳な威容を誇る三門を通り過ぎれば、激坂はすぐそこだ。
さて、登りますか!と気合を入れたところで、「降りてくださーい」と声をかけるスタッフさんの姿が。どうやら参拝客の方々の車が渋滞しているようだ。いやあ、とっても残念だが主催者からの指示とあっては仕方がない、おとなしく押すとしよう。内心、しめしめラッキーと思って降車、歩道を押して歩くのだが、これはこれでつらいものがある。自分はSPDシューズだからまだ歩きやすいけれど、ロード用ビンディングだと滑りそうな勾配なのだ。乗るも地獄、押すも地獄だな、と日蓮宗総本山でちょっぴり罰当たりなニュアンスの思考を挟みつつ、もくもくと登る。



参拝者向けの駐車場を過ぎれば、乗車可能区間となる。もちろん、そのまま押して歩くもよし、最後に溜めた脚でもがくもよし。ここではエース栗原さんがスタートを切るライダー(主に女性)の背中を押して、スタートを手伝ってくれる応援も。前日のトークショーで「絶対脚つかないですよ!」と豪語していたチャリダー・佐藤さんもここからは乗車でチャレンジ。周囲を励ましながら、最後の激坂区間を乗り切った。
それぞれの脚力に合わせた方法で修行走を終えたら、久遠寺の境内に。本殿や五重塔など、さまざまな建築物が立ち並ぶ境内を愛車とともに通過することができるのは、1年にこの日だけだろう。なんともぜいたくなライドであるし、なんとも懐の深いお寺でもある。



久遠寺境内で記念撮影など済ませ、退出した後はほんの少し登ったあとに爽快なダウンヒル区間へ。途中、富士川を見下ろす絶景ポイントも待っているが、かなりスピードが出る区間なので気を付けてほしい。その後は富士川沿いに北上していき、第一エイドであった富士川クラフトパークをかすめるようにして走っていく。途中、幹線道路を避けるために早川沿いを走る区間を交えつつ、飯富橋で再び富士川左岸へ。
一つ丘を越えると、往路で通過した久那土の集落へ到着する。ここが第3エイドステーション、つまり待ちに待ったランチがいただけるエイドステーションとなる久那土中学校だ。「田舎料理は旅をしない」をモットーに、富士川エリアで作られる食材をふんだんに使用し、地元の料理屋さんたちが腕を振るって用意してくださった「こしべんと」が今年も迎えてくれた。




多くのロングライドイベントがエイドのふるまいに力を入れているけれども、ランチを3種類から選ぶことができる大会というのは、全国探してもなかなかないだろう。今年は、市川三郷町にある根津牧場のとれたて野菜をメインに使ったおかめ鮨、富士川忍沢養殖場のサツキマスを使った五十九バーガーの國本屋、鶏の炊き込みご飯が食欲をそそる割烹とりしんの3つのこしべんとから一つを選ぶことになったのだが、どれも甲乙つけがたい。悩みに悩み、今年はとりしんさんのコシベントをチョイス。ひとつひとつのおかずから丁寧な仕事が窺える繊細な味で、あっという間に平らげてしまった。
おなか一杯になったところで一休み、と行きたいところだけれど、この後には本格的なヒルクライムが待っている。全長7km、約400mを登る峠は勢いで走破するには少々厳しいプロフィール。淡々と高度を上げて頂上を目指して走り続けていく。民家が途切れ、いくつかのヘアピンが現れれば、この登りも最終盤。最後の直登区間を登り切った先には、絶景ポイントが待っている。




ヒルクライムで使い果たした脚を回復させつつ、再び下っていく。市川三郷方面へと一気に標高を消化しながら向かっていくことに。下り切ったら、第4エイドである「みたまの湯」を目指して再び登りに突入する。登りとはいえ、先ほどの峠に比べれば緩やかなもの。グループでまとまって走るのも苦ではないくらいの勾配で、サポートライダーさんたちが刻んでくれるペースが心地いい。
第4エイドとなるみたまの湯は、かなりの高台に位置する温浴施設で、南アルプスや八ヶ岳の山容と眼下に広がる甲府盆地の街並みを眺めながら温まることが出来る露天風呂が人気を集めるスポット。ちなみに大会後にお邪魔しましたが、お湯も景色も絶品でございました。




こちらのエイドステーションでは、昨年に引き続き高級キウイの「レインボーレッド」が振舞われる。キウイといえば、緑色の果肉で、ちょっと酸っぱくてシャクシャクした触感、というのがおおよそのイメージかと思いますが、このレインボーレッドはそんな固定観念をあっさり覆してくれる。まず、中心部に近づくにつれて赤く色づくイエローの果肉は、口に含むとねっとりとした食感。そして舌が感じるのはとびきりの甘さ。疲労が溜まってきた体には、かなり効く甘さで、思わずお替りをいただいてしまった。
みたまの湯で絶品フルーツと絶景を楽しんだ後は、この大会最後にして最難関の登り、最終エイドである「みさき耕舎」へのヒルクライムへと向かっていく。いったん、フィニッシュ地点である道の駅富士川を通り過ぎる。実は、最後のこのヒルクライムは「ヒルクライムチャレンジ」区間として、挑戦するのは自由というルールなので、調子の良しあしによってはここでフィニッシュすることもできる。ちょっと、いやかなり魅力的なプランではあるのだが、誘惑を振り切って最後の登りへとアプローチ。
この最後の登りはタイム計測区間となっていて、計測開始区間ではいったんストップすることに。どういうことかといえば、自分のサイクルコンピューターのラップボタンを押して、自己計測するというルールなのだ。と、そんな感じのゆるーいルールなのでシャカリキに走る必要はないのだけれど、表彰もされるため、脚自慢はここで全力を出し切りたい。



ヒルクライムチャレンジの名に恥じず、かなり走り応えのある峠になっており、中には蛇行してしまう人も。フレッシュな状態であればまだしも、100km近く走った最後に現れるので総合力を試される。写真を撮りつつ休憩していると、なんとランニングで現れたのはエース栗原さん。流石デュアスリートという走りで、喘ぎながら登る参加者たちを励ましつつ、次々に抜き去っていく。内心、自分が自転車に乗っているときに抜かされなくてよかったと安堵しつつ、残る距離を削りにかかる。
森の中を抜け、集落が見えればフィニッシュとなるみさき耕舎はかなり近い。途中、富士山の雄大な姿が見える区間もあるのだが、登っているときはそれどころではない。パンパンの脚をだまくらかしつつ、最終エイドに転がり込んだ。フィニッシュラインでサイコンをストップし、タイムを係の方に伝えればヒルクライムチャレンジは完了だ。




かなり陽も傾いてきていることに加え、標高も高いので少し肌寒くなってくる。そんなところに用意されているのが、温かいゆず湯。甘くてあったかい砂糖水にさわやかなゆずピールが入れられ、糖分とクエン酸を同時に補充できる、まさにこの状況ではこれ以上ない至高の一杯。また、併せて振舞われたラ・フランスの甘さの虜になりつつ、ゆず湯をお替り。なんどかそのローテーションを決め、人心地つく。
ウィンドブレーカーを着込み、サクッと下る。あれだけヒーコラ言いながら登ってきた道を1/10以下の時間で駆け抜け、フィニッシュ地点の道の駅富士川へ。フィニッシュしたのは、太陽も南アルプスに隠れようとするころあい。まさに、1日中楽しみつくす大満足のライドとなった。


フィニッシュには土曜日と同じく「みみ」ほうとうが振舞われ、下りで冷えた身体を温めてくれる。できれば、そのまま温泉で体の芯から温まるのがオススメだ。周辺には温泉もたくさんあるので、ひとっ風呂浴びる先に困ることはない。とはいえ、やはりオススメなのはエイドにもなった「みたまの湯」だろうか。フィニッシュ後のタイミングだと、美しい夜景を堪能できるはずだ。
おいしいエイドに走り応えのあるコース。2日間を通して、さまざまなバリエーションの種目も用意され、ビギナーからベテランライダーまで、老若男女問わず楽しむことが出来る南アルプスロングライドは、山梨県が持っているたくさんの魅力をサイクリスト目線で気づかせてくれる、真の地域密着型イベントだ。
そんな南アルプスロングライドを主催するやまなしサイクルプロジェクトは、将来的に「ツール・ド・山梨」として、県全域を回るような大規模イベントの開催を目指しているのだとか。来年には、また大きな動きがあるという。首都圏からもほど近いサイクリングデスティネーションとして、今後も山梨エリアから目が離せそうにない。
text:Naoki.Yasuoka
photo: Makoto.AYANO,Naoki.Yasuoka
Amazon.co.jp