2015/03/14(土) - 11:37
2月7・8日にタイで開催されたチェンライ国際MTBチャレンジ。タイ北部の山岳地帯を走る2日間のMTBステージレースを、今年も全コース実走取材しての参加レポートを前編・後編に分けてお伝えします。
チェンライ国際MTBチャレンジの舞台となるのはタイのスイスと呼ばれる北部の小さな街、ChangRai。アジアのレースながら、日本人主催者である「R1ジャパン」が開催する(ほぼ)日本の大会で、タイ人や在住欧米人も歓迎ながら参加者の大半は日本人が占める。今年で開催16回目を数え、数多くのリピーターに支持される大会となっている。一度参加したらその楽しさに病み付きになること請け合いで、全体のリピート率は70%に上るほどだ。私の実走取材もこれで3度目。毎年心から楽しみにしているイベントだ。
2日間で合計4ステージ、距離にして約90kmを走るステージレース制で、脚力に合わせた参加クラスが「インターナショナル」「スポーツ」「ファン」の3クラスから選べる。昨年のレポートでは初日にスポーツクラス、2日目にインターナショナルの様子を取材してお伝えしたが、今年は2日ともインターナショナルクラスの模様を実走してお伝えしよう。
レースは2日間・合計4ステージで争われるラリー形式。両日とも午前に約30kmほどのロングステージ、ランチを挟んで午後に約10kmほどのショートステージが用意される。つなぎ(リエゾン)区間の自走距離を入れると、2日間で合計約85.7kmを走ることになる。開催地のタイ北部は少数民族が住むことで知られる山岳地帯。つまりコースはおのずとアップダウンの多い過酷なものとなる。両日とも獲得標高差は約1000mほどで、MTBでこの距離、こなす標高差はかなりハードだ。
インターナショナルクラスの走行距離と獲得標高
■DAY1
リエゾン 17km
SS1 32km
SS2 9.7km
獲得標高差1062m(実測)
■DAY2
リエゾン 7.4km
SS3 35km
SS4 9km
リエゾン 13km
獲得標高差903m(実測)
2日間合計走行距離 約85.7km
このイベントは毎年日本のトップマウンテンバイカーがシーズンインレースとして選ぶことでも知られている。斉藤亮と平野星矢(ともにブリヂストンアンカー)、松尾純(ミヤタ・メリダ)は昨年に引き続き出場。女子エリートライダーの広瀬由紀(PAX PROJECT)はなんと出場14回目(!)の最多リピーターだ。そして今年のニューフェースは松尾のチームメイトで斉藤亮のXCスキー選手時代からの友人でライバルの恩田祐一。トップライダーの間では、温暖なタイで合宿生活を送りつつこの大会に参加するという流れも定番化しているのだ。
日本からはクラブ単位での参加が盛んだ。毎年のように参加している横浜のサイクラリー喜輪のチーム「ckirin.com」、千葉・佐倉のタキサイクルのBlancheの皆さん、名古屋のカトーサイクルの皆さんなどなど、おなじみの顔が多く、和気あいあいと同窓会のような雰囲気がある。
初日の朝、タイ式伝統建築の荘厳なオフィシャルホテル「リムコックリゾート」から出発。火炎を吐く舞踊のセレモニーで歓迎され、一行は17km先のシンハーパークへリエゾン(つなぎ走行)。ここが第1SSのスタートとなる。シンハーパークには昨年できたバイクパークがあり、広大な公園内のサイクリングコースがレースに取り入れられている。アメリカ西海岸を思わせる雰囲気のHQではレンタルバイクが可能で、この公園内で大きなMTBイベントも開催されだしたと聞く。タイでのMTB熱の高まりを感じる場所だ。
レースはクラスごとにスタートしていく。まずは公園内に広がる茶畑の間につくられたトレイルをつないで走り、すぐに本格的な山岳地帯の待つ郊外へと飛び出していくのだ。ジープロードをしばらく走るとすぐに現れる激坂。たまらずローギアに落とし、よじ登っていく。コースは山岳民族の村をつなぐ生活道路なので、農作業に向かう地元の人たちが歩いている。「サワディカー」と挨拶すると、微笑みの国タイならではの「はにかみ笑顔」が返ってくる。
小さな川をジャブジャブと何本も渡り、徐々に奥地へと分け入っていく感じだ。そして、ほどなくして始まるのがヤブの登り。トップクラスの数人を除いて乗っていける登り勾配ではないので、MTBを押して歩いて登ることになる。この登りが2日間のうちでもっとも厳しい区間だと思う。
あまりの長い押しに額からは汗が滴り落ち、ふくらはぎが悲鳴を上げる。おそらく時間にすると30分ぐらいなのだろうが、気が遠くなる区間だ。頂上までたどり着くと、今度はダイナミックなダウンヒルが待っている。参加者はXCバイクが多勢だが、この区間を楽しみたいがためにわざわざ下り系バイクで参加する人も多いのだ。
こんな山中でも要所にバナナと水ポイントがあり、トレールの分岐の所々には立哨のマーシャルが居てくれるので迷う心配がない。そして次なる難関は「白い壁」と名付けられた、簡易舗装の激坂。たぶん25%を越える超急勾配が100mほども続く長い坂で、インナーローで辛うじて上れる。が、油断して足をついてしまうと2度と乗れない。坂の脇では地元の子供達が待ち構えていて、押してくれるのが嬉しい。
で、3つ目の難関として知られた「赤い壁」と呼ばれる土道の激坂が待ち構えているはずだったのだが、今年はコースから外れて、少し楽になった。2日間でもっとも厳しい第1SSは少し難易度を下げたようだ。
SSのゴール地点ではランチが待っている。グリーンカレーにフルーツのデザートまで、美味しいタイ料理を満喫できる。でも食べ過ぎるのは第2SSに響くので、満腹までは追い込まないことがポイントだ。例年、第1SSの厳しさにランチタイムに間に合わない人が何人かいるのだが、今年は全員が余裕を持ってランチにありつけたようだ。
ランチ休憩のあと、13時半から第2SSへ。9.7kmのショートステージで、川沿いのフラットダートを走るタイムトライアルのようなハイスピードレース。スタート直後の急坂で集団がバラけたあとは、それぞれ単独走かスピードのあう人と先頭交代しながら競い合う走りだ。ハイライトは途中、川にかかった木製のボロボロの吊り橋。隙間だらけの細い橋をMTBに乗ったまま走るのはちょっと怖い。
そしてゴール後のお楽しみは象に乗っての川渡り。観光客にも超人気のアトラクションを、MTBと一緒に楽しんでしまうというわけだ。高さのある象の背中に乗って、ゆっさゆっさと揺られながらジャブジャブと川に入っていくエキサイティングな体験。落っこちないか心配しつつも、無事川を渡る。
川を渡った対岸で象から降りれば、そこにはビールが待っている。タイ名物のシンハービールがスポンサーに付いているこの大会は、缶ビールが無料で配られるのだ。
一日フルに走った後のキーンと冷えたビールの美味しいこと。そして、ほろ酔い気分でボートに乗り込み、ホテルを目指し40分ほどの高速の川旅。川辺の生活風景を眺めながら、涼しくも気持ちのいい時間だ。
ホテルに帰ったら洗車して、街に繰り出す。皆の目的はマッサージだ。800円ほどのコストで1時間たっぷりタイ式マッサージが受けれるとあって、走った疲れも吹っ飛んでしまう。夜はナイトマーケットで買い物をして、フードコートで食事。ビールを楽しんだらホテルまでは名物のトゥクトゥクに乗って帰る。疲れているのでぐっすりだ。
ちなみに初日の総合順位トップは斉藤亮(ブリヂストンアンカー)。この難コースを2時間かからずに走りきってしまうのは一般参加者には驚異だ。ちなみにアベレージレーサーである筆者のタイムは3時間31分。かなりの差である。でもこの大会では「長い時間かけて走った人ほど楽しんだ」と言われるのである。
初日の総合順位
1位 斉藤亮 1:55:10
2位 恩田祐一 2:01:15
3位 松尾純(ミヤタ・メリダ)2:03:12
4位 平野星矢(ブリヂストンアンカー) 2:13:38
photo&text:Makoto.AYANO
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チェンライ国際MTBチャレンジの舞台となるのはタイのスイスと呼ばれる北部の小さな街、ChangRai。アジアのレースながら、日本人主催者である「R1ジャパン」が開催する(ほぼ)日本の大会で、タイ人や在住欧米人も歓迎ながら参加者の大半は日本人が占める。今年で開催16回目を数え、数多くのリピーターに支持される大会となっている。一度参加したらその楽しさに病み付きになること請け合いで、全体のリピート率は70%に上るほどだ。私の実走取材もこれで3度目。毎年心から楽しみにしているイベントだ。
2日間で合計4ステージ、距離にして約90kmを走るステージレース制で、脚力に合わせた参加クラスが「インターナショナル」「スポーツ」「ファン」の3クラスから選べる。昨年のレポートでは初日にスポーツクラス、2日目にインターナショナルの様子を取材してお伝えしたが、今年は2日ともインターナショナルクラスの模様を実走してお伝えしよう。
レースは2日間・合計4ステージで争われるラリー形式。両日とも午前に約30kmほどのロングステージ、ランチを挟んで午後に約10kmほどのショートステージが用意される。つなぎ(リエゾン)区間の自走距離を入れると、2日間で合計約85.7kmを走ることになる。開催地のタイ北部は少数民族が住むことで知られる山岳地帯。つまりコースはおのずとアップダウンの多い過酷なものとなる。両日とも獲得標高差は約1000mほどで、MTBでこの距離、こなす標高差はかなりハードだ。
インターナショナルクラスの走行距離と獲得標高
■DAY1
リエゾン 17km
SS1 32km
SS2 9.7km
獲得標高差1062m(実測)
■DAY2
リエゾン 7.4km
SS3 35km
SS4 9km
リエゾン 13km
獲得標高差903m(実測)
2日間合計走行距離 約85.7km
このイベントは毎年日本のトップマウンテンバイカーがシーズンインレースとして選ぶことでも知られている。斉藤亮と平野星矢(ともにブリヂストンアンカー)、松尾純(ミヤタ・メリダ)は昨年に引き続き出場。女子エリートライダーの広瀬由紀(PAX PROJECT)はなんと出場14回目(!)の最多リピーターだ。そして今年のニューフェースは松尾のチームメイトで斉藤亮のXCスキー選手時代からの友人でライバルの恩田祐一。トップライダーの間では、温暖なタイで合宿生活を送りつつこの大会に参加するという流れも定番化しているのだ。
日本からはクラブ単位での参加が盛んだ。毎年のように参加している横浜のサイクラリー喜輪のチーム「ckirin.com」、千葉・佐倉のタキサイクルのBlancheの皆さん、名古屋のカトーサイクルの皆さんなどなど、おなじみの顔が多く、和気あいあいと同窓会のような雰囲気がある。
初日の朝、タイ式伝統建築の荘厳なオフィシャルホテル「リムコックリゾート」から出発。火炎を吐く舞踊のセレモニーで歓迎され、一行は17km先のシンハーパークへリエゾン(つなぎ走行)。ここが第1SSのスタートとなる。シンハーパークには昨年できたバイクパークがあり、広大な公園内のサイクリングコースがレースに取り入れられている。アメリカ西海岸を思わせる雰囲気のHQではレンタルバイクが可能で、この公園内で大きなMTBイベントも開催されだしたと聞く。タイでのMTB熱の高まりを感じる場所だ。
レースはクラスごとにスタートしていく。まずは公園内に広がる茶畑の間につくられたトレイルをつないで走り、すぐに本格的な山岳地帯の待つ郊外へと飛び出していくのだ。ジープロードをしばらく走るとすぐに現れる激坂。たまらずローギアに落とし、よじ登っていく。コースは山岳民族の村をつなぐ生活道路なので、農作業に向かう地元の人たちが歩いている。「サワディカー」と挨拶すると、微笑みの国タイならではの「はにかみ笑顔」が返ってくる。
小さな川をジャブジャブと何本も渡り、徐々に奥地へと分け入っていく感じだ。そして、ほどなくして始まるのがヤブの登り。トップクラスの数人を除いて乗っていける登り勾配ではないので、MTBを押して歩いて登ることになる。この登りが2日間のうちでもっとも厳しい区間だと思う。
あまりの長い押しに額からは汗が滴り落ち、ふくらはぎが悲鳴を上げる。おそらく時間にすると30分ぐらいなのだろうが、気が遠くなる区間だ。頂上までたどり着くと、今度はダイナミックなダウンヒルが待っている。参加者はXCバイクが多勢だが、この区間を楽しみたいがためにわざわざ下り系バイクで参加する人も多いのだ。
こんな山中でも要所にバナナと水ポイントがあり、トレールの分岐の所々には立哨のマーシャルが居てくれるので迷う心配がない。そして次なる難関は「白い壁」と名付けられた、簡易舗装の激坂。たぶん25%を越える超急勾配が100mほども続く長い坂で、インナーローで辛うじて上れる。が、油断して足をついてしまうと2度と乗れない。坂の脇では地元の子供達が待ち構えていて、押してくれるのが嬉しい。
で、3つ目の難関として知られた「赤い壁」と呼ばれる土道の激坂が待ち構えているはずだったのだが、今年はコースから外れて、少し楽になった。2日間でもっとも厳しい第1SSは少し難易度を下げたようだ。
SSのゴール地点ではランチが待っている。グリーンカレーにフルーツのデザートまで、美味しいタイ料理を満喫できる。でも食べ過ぎるのは第2SSに響くので、満腹までは追い込まないことがポイントだ。例年、第1SSの厳しさにランチタイムに間に合わない人が何人かいるのだが、今年は全員が余裕を持ってランチにありつけたようだ。
ランチ休憩のあと、13時半から第2SSへ。9.7kmのショートステージで、川沿いのフラットダートを走るタイムトライアルのようなハイスピードレース。スタート直後の急坂で集団がバラけたあとは、それぞれ単独走かスピードのあう人と先頭交代しながら競い合う走りだ。ハイライトは途中、川にかかった木製のボロボロの吊り橋。隙間だらけの細い橋をMTBに乗ったまま走るのはちょっと怖い。
そしてゴール後のお楽しみは象に乗っての川渡り。観光客にも超人気のアトラクションを、MTBと一緒に楽しんでしまうというわけだ。高さのある象の背中に乗って、ゆっさゆっさと揺られながらジャブジャブと川に入っていくエキサイティングな体験。落っこちないか心配しつつも、無事川を渡る。
川を渡った対岸で象から降りれば、そこにはビールが待っている。タイ名物のシンハービールがスポンサーに付いているこの大会は、缶ビールが無料で配られるのだ。
一日フルに走った後のキーンと冷えたビールの美味しいこと。そして、ほろ酔い気分でボートに乗り込み、ホテルを目指し40分ほどの高速の川旅。川辺の生活風景を眺めながら、涼しくも気持ちのいい時間だ。
ホテルに帰ったら洗車して、街に繰り出す。皆の目的はマッサージだ。800円ほどのコストで1時間たっぷりタイ式マッサージが受けれるとあって、走った疲れも吹っ飛んでしまう。夜はナイトマーケットで買い物をして、フードコートで食事。ビールを楽しんだらホテルまでは名物のトゥクトゥクに乗って帰る。疲れているのでぐっすりだ。
ちなみに初日の総合順位トップは斉藤亮(ブリヂストンアンカー)。この難コースを2時間かからずに走りきってしまうのは一般参加者には驚異だ。ちなみにアベレージレーサーである筆者のタイムは3時間31分。かなりの差である。でもこの大会では「長い時間かけて走った人ほど楽しんだ」と言われるのである。
初日の総合順位
1位 斉藤亮 1:55:10
2位 恩田祐一 2:01:15
3位 松尾純(ミヤタ・メリダ)2:03:12
4位 平野星矢(ブリヂストンアンカー) 2:13:38
photo&text:Makoto.AYANO
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