1月31日からの2日間、沖縄県南部にて開催された第3回糸満市長杯マウンテンバイク大会。Coupe du Japonの初大会として国内トップライダーが参戦し、門田基志が勝利したエリートレースの模様に続いて、ライディングスクールなどの併催イベントの模様を紹介しよう。



南に太平洋を臨む糸満市観光農園が会場だ南に太平洋を臨む糸満市観光農園が会場だ
2月初頭はプロ野球のキャンプインの時期でした2月初頭はプロ野球のキャンプインの時期でした 会場近くの人気店「百美」の沖縄そば会場近くの人気店「百美」の沖縄そば


昨大会から2ヶ月ほど時期をずらして開催された糸満市長杯マウンテンバイク大会。沖縄でのMTBイベントとあって聞き慣れない大会だが、今大会が5回め(市長杯としては3回め)となる。沖縄といえば季節を問わず太陽の光が燦々と降り注いでいるイメージがあるが、大会中の天気は曇りで、気温は15℃程度。それでも寒さの厳しい東京から取材に訪れた筆者にとってはずいぶん過ごしやすい。

大会会場はアセロラやパッションフルーツを原料とした「糸満ワイン」が名物の糸満市観光農園。那覇空港からは車で45分ほどとアクセスが良く、近くには平和祈念公園やひめゆりの塔がある。なお、MTBコースは常設されているため、使用料500円を払えばいつでも好きなだけ走ることが可能だ。

コーナーをうまく曲るためのコツを子供たちに伝授する松本駿選手コーナーをうまく曲るためのコツを子供たちに伝授する松本駿選手 参加者の走り姿を1人づつチェックする参加者の走り姿を1人づつチェックする

門田選手による実戦的なMTBライディングスクールには多くの参加者が集まった門田選手による実戦的なMTBライディングスクールには多くの参加者が集まった 松本選手らトップライダーによるキッズ向けスクールも松本選手らトップライダーによるキッズ向けスクールも


大会は2日間の日程で開催された。レースの無い初日は、キッズやビギナーを対象に向けたMTBライディングスクールや、キッズ向けの(ペダルのない)プッシュバイクレースなどが行われた。スクールで講師を務めたのは斉藤亮選手と沢田時選手のブリヂストン・アンカーコンビ、昨年に引き続いての参加となる門田基志(チームジャイアント)、松本駿(チームスコット)という国内を代表する4名のMTBライダーに、沖縄で合宿中のシマノレーシングを加えた9名。ローカル大会だが実に豪華な面々である。

斉藤選手や松本選手がメイン講師を務めたキッズ向けスクールは、ブレーキングやペダルを回しながらのコーナリングというベーシックな内容で、最後にはショートコースでタイムトライアル。子どもたちの一生懸命な姿に、選手達もリラックスできたようだ。

Coupe du Japon MTB初戦として開催された第3回糸満市長杯マウンテンバイク大会Coupe du Japon MTB初戦として開催された第3回糸満市長杯マウンテンバイク大会 チャレンジは晴天の中開催されたチャレンジは晴天の中開催された

現役選手全員を置き去りにしてチャレンジを2番手でフィニッシュしたシマノレーシングの野寺監督(右)現役選手全員を置き去りにしてチャレンジを2番手でフィニッシュしたシマノレーシングの野寺監督(右) エリート男子を制した門田基志選手(チームジャイアント)エリート男子を制した門田基志選手(チームジャイアント)

スタートラインに並んだキッズレーサーたちスタートラインに並んだキッズレーサーたち 元気いっぱいな小学生が多く参加したキッズレース元気いっぱいな小学生が多く参加したキッズレース


一方、シマノレーシングの選手も参加した門田選手によるスクールは、レースコースを使った実戦的なもの。ブラインドコーナーや、木々の根っこ、この地域一帯の特徴である石灰岩のガレ場、激坂などのこなし方を門田選手はユーモアを交えながら解説。「お陰さまでうまく走ることができました」と、翌日のレースを終えた受講者たちから好評を博していた。

ちなみに、門田選手の話に最も聞き入っていたのは、現役時代よりバイクコントロールに定評のあった野寺監督。そんな監督に、今回MTBイベントに参加した理由について聞いてみると「同じ自転車競技でもロードとMTBでは全く違いますが、オフロードで操作性を養うことでロードレーサーとしての能力を高めることができると考えています」とのこと。キャプテンの入部正太朗選手や西村大輝選手をはじめ「これまではMTBを乗らなかった」というシマノレーシングの選手達もかなり楽しんでいた様子だ。

得意のウィリーで会場を湧かせたシマノレーシングの野寺監督得意のウィリーで会場を湧かせたシマノレーシングの野寺監督 逆立ちしているのはシマノレーシングのどの選手でしょう?逆立ちしているのはシマノレーシングのどの選手でしょう?


チームでイベントを楽しんでいたFLAMINGOの皆さんチームでイベントを楽しんでいたFLAMINGOの皆さん 優勝トロフィーは琉球ガラス製優勝トロフィーは琉球ガラス製


2日目は、今季よりJCFが運営に乗り出した新たなシリーズ戦「Coupe du Japon」の初大会でもあるメインイベントのレースプログラム。結果は既報の通りで、男子エリートは門田選手、セカンドカテゴリーのチャレンジはレース運営スタッフでもある国富直樹選手、女子エリートは東京から参戦した鈴木美香子選手が、それぞれ制している。この他にもハードなセクションを除いたコースでビギナー&キッズ向けのレースも開催された。

なお、順位のつかないオープンとしてチャレンジに参加したシマノレーシングは、野寺監督が現役選手全員を置き去りにして、「ジロの山岳よりキツい」と言いながらも全体の2番手でフィニッシュ。途中でウィリーを披露するなど、魅せる走りは現役復帰を予感させるに充分である(多分、本人にそのつもりはないはず)。

イベントの最後には糸満市長の上原裕常氏らによるトークショーが行われたイベントの最後には糸満市長の上原裕常氏らによるトークショーが行われた
レースプログラムが全て終了した後は前日に続き、誰でも参加できる太っ腹なライディングスクールや、トークショーが行なわれ、イベントは終了。家族や仲間と一緒にワイワイと楽しみ、国内トップレベルのレースを体感することができた2日間であった。



さて、この大会は「市長杯」と冠し、糸満市の冬場のエコスポーツ拡大事業として開催されている。沖縄ではまだまだマウンテンバイクが盛んとは言えないが、今後はMTBを盛り上げると共に観光などと絡めて地域振興を図っていきたいという狙いだ。

会場にはブリヂストン・アンカーの女性ファンが駆けつけた会場にはブリヂストン・アンカーの女性ファンが駆けつけた 今大会の前にはその試みの1つとして斉藤選手と松本選手が、来る本格的なシーズンに向けて大会前に合同合宿を実施した。沖縄で行われる様々なサイクルイベントの運営に携わっている沖縄輪業の森豊さんは、選手たちの長期滞在は自転車競技発展に大きく貢献するだろうと期待をよせる。

「ちょうど今の時期は、野球やサッカーのプロチームが沖縄でキャンプを行っています。シーズン前のリラックスした選手たちは話かけやすく、沖縄ではそこで交流をもった子どもたちが、そのスポーツでプロを目指していくというケースが非常に多いんです。ですので、MTBを含めプロサイクリストの皆さんに沖縄で合宿を行って頂き、そこで交流した子供たちが自転車に興味を持ってくれれば、第2の新城幸也、第2の内間康平が誕生することでしょう」。

今後、糸満市長杯マウンテンバイク大会では本土のサイクリストへ向けた参戦ツアーを用意する可能性があるという。その中には家族連れにも対応できるよう、レース中にバスをチャーターしての観光ツアーを行うなどのアイデアもあるとのこと。ロードレースのツール・ド・おきなわで大成功を収めている沖縄だが、MTBでも一大大会としてこの糸満市長杯が全国に定着するポテンシャルは充分にありそうだ。



text&photo:Yuya.Yamamoto

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