大会最初の頂上ゴールが設定されたツール・ド・スイス(UCIプロツアー)第5ステージは、この地元スイスのビッグレースを大きな目標に掲げていたミハエル・アルバジーニ(スイス、チームコロンビア)がスプリント勝利。タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)が首位を守った。

湖と山々に囲まれた美しい景色の中を進む湖と山々に囲まれた美しい景色の中を進む photo:www.tds.ch隣国オーストリアに入国する第5ステージは、ラスト61kmで1級山岳アールベルク峠(標高1793m)を越え、最後は1級山岳ラディスと3級山岳フィッセル・ホーフを駆け上がってゴール。大会最初の頂上ゴールだ。

レースは序盤にパスカル・フンガービューラー(スイス、フォアアールベルク・コラテック)のアタックが決まり、最大10分のリードを得て逃げた。150kmに渡って単独で逃げ続けたフンガービューラーだったが、難所アールベルク峠の上りで失速。集団から飛び出したトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)ら5名に下りで吸収されてしまう。

序盤から150kmに渡って逃げ続けたパスカル・フンガービューラー(スイス、フォアアールベルク・コラテック)序盤から150kmに渡って逃げ続けたパスカル・フンガービューラー(スイス、フォアアールベルク・コラテック) photo:www.tds.chそのヴォクレールらもメイン集団に吸収され、ラスト37km地点でレースは一旦リセット。そこからカウンターアタックでマークス・ブルグハート(ドイツ、チームコロンビア)とビョルン・シュレーダー(ドイツ、ミルラム)が飛び出したが、最後の1級山岳ラディスの上りが始まるとすぐに吸収される。平均勾配8.9%、最大勾配16%のこの上りでメイン集団は活性化した。

上りで積極的にアタックを仕掛けたのは、ツール・ド・ロマンディ総合3位のレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)。山岳賞&総合成績狙いのトニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)もアタックを仕掛けたが、集団を引き離すことはできなかった。

チームメイトに守られて走るタディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)チームメイトに守られて走るタディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル) photo:www.tds.chアンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)らのペースアップによって縮小した集団は、リーダージャージを着るタディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)らのアタックを飲み込みながら上りを進み、人数を揃えたサクソバンクがペースを上げてラスト2km。しかしそこに総合2位のアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)の姿は無かった。

Aシュレクの脱落に怯んだサクソバンクの隙を突いて、ラスト1kmでマルティンが再びアタック。マルティンが吸収されるとターラマエが飛び出し、これに反応したカンチェラーラとアルバジーニが先頭へ。最後は上りスプリントで伸び続けたアルバジーニがカンチェラーラを破ってゴール。片手を突き上げた。

1級山岳アールベルク峠を進む選手たち1級山岳アールベルク峠を進む選手たち photo:Cor Vos2005年に続くツール・ド・スイス通算2勝目を飾ったアルバジーニは「最後は全力でステージ優勝を狙って走った。難関ステージでの価値ある勝利だ」とコメント。

「ラスト1kmを切ってから選手(ターラマエ)がアタックしたとき、反応したカンチェラーラの後ろについた。そこから100%フルスロットルでスプリントしたんだ。長い山岳コースを越えてからのスプリントはタフだったけど、何とか先頭を勝ち取った」。

カンチェラーラを振り切ってゴールするミハエル・アルバジーニ(スイス、チームコロンビア)カンチェラーラを振り切ってゴールするミハエル・アルバジーニ(スイス、チームコロンビア) photo:www.tds.ch「このツール・ド・スイスは5月上旬からずっと狙っていたレース。何しろスイスは地元だから、自分にとって非常に意味のあるレースだ。スイスで勝つことはスイス人選手にとって特別なことだよ。でも今日の上りはスイスの自宅から遠く離れていたので、事前の知識が全く無かった」。アルバジーニはリクイガス時代の2005年大会でスプリント賞、2006年には山岳賞とスプリント賞をダブル受賞している。

現在トップから1分05秒遅れの総合12位につけるアルバジーニは「出来れば総合の表彰台を狙いたい。でも序盤のステージでは思わぬ苦戦を強いられたんだ。脚がついてこなくて、有力選手たちから遅れてしまった。だから今は総合トップ10を狙う。ステージ優勝と総合トップ10は満足のいく結果だよ」。アルバジーニと総合トップ10のタイム差は僅かに3秒だ。

並んでゴールするアンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)とタディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)並んでゴールするアンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)とタディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル) photo:www.tds.chチームコロンビアは5ステージ中、3勝を飾る怒濤の活躍。この日も積極的に動いたマルティンは山岳賞争いのリードを広げることに成功し、総合でもチーム最高の6位につけている。

しかしこの日最大のサプライズは、総合2位Aシュレクの脱落だろう。突如ブレーキがかかったAシュレクは先頭集団からラスト3km付近で脱落。トップから1分05秒遅れでゴールし、総合13位にダウンした。前日の逃げの疲労から回復していなかったのか?ツールに向けてAシュレクは不安要素を露呈する結果となった。

最大のライバルAシュレクの脱落により、ヴァリャベッチがリーダージャージをキープ。総合争いはまだまだ1分以内に8名がひしめく混戦状態だ。

しかも総合下位にはカンチェラーラやクレーデン、マルティン、ラーション、カルペツといったタイムトライアルに強い選手が揃っている。最終日には距離39kmの個人タイムトライアルが設定されており、山岳を得意とする選手は後半の山岳ステージで更なる攻撃を仕掛ける必要がある。総合争いは最後まで混戦必至だ。

選手コメントは各チームウェブサイトより。

ツール・ド・スイス2009第5ステージ結果
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、チームコロンビア)5h24'04"
2位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)
3位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)
4位 オリバー・ザウグ(スイス、リクイガス)
5位 ウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ)
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)
7位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
8位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)
9位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)
10位 マキシム・モンフォール(ベルギー、コフィディス)

個人総合成績
1位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル)18h52'01"
2位 オリバー・ザウグ(スイス、リクイガス)+14"
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)+14"
4位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+42"
5位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+45"
6位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)+54"
7位 マキシム・モンフォール(ベルギー、チームコロンビア)+55"
8位 グスタフエリック・ラーション(スウェーデン、サクソバンク)+56"
9位 ウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ)+1'01"
10位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)+1'02"

ポイント賞
ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)

山岳賞
トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)

中間スプリント賞
エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ランプレ)

チーム総合成績
サクソバンク