2012/07/14(土) - 10:43
3つのカテゴリー山岳を含む226kmで、5人の大逃げが決まった。緩やかな登りを含むゴール地点で自分の展開に持ち込んだのは、経験豊かなデーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン・シャープ)。35歳のベテランTTスペシャリストが自身4度目となるステージ優勝を掴んだ。
ツールはアルプスを離れ、次なる決戦地ピレネーに向けて西進を開始する。
第12ステージは、サンジャン・ド・モーリエンヌからアノネー・ダヴェジウまで、今大会最長の226kmコース。レース序盤に1級山岳グラン・クシュロン峠(登坂距離12.5km・平均勾配6.5%)と1級山岳グラニエ峠(登坂距離9.7km・平均勾配8.6%)を越えると、あとは比較的難易度の低いコースが続く。
ゴール手前に3級山岳が置かれているが、総合が動くほどの難易度ではなく、それでいて、スプリンター向きでもない。つまり逃げ切りが決まりやすいコースレイアウト。激しいアタック合戦でレースはスタートした。
すでに総合で順位を落としていたロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)はDNS。166名がスタートを切ると、最初の1級山岳グラン・クシュロン峠に向かってメイン集団からアタックが繰り返される。
メイン集団から飛び出したのは、ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック・ニッサン)を含む19名。チームメイトのマイヨアポワを守りたいロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)を先頭にグラン・クシュロン峠をクリアしていく。
このグラン・クシュロン峠の下りで、メイン集団から飛び出したダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)がクラッシュ。ベテラン山岳スペシャリストはリタイアを余儀なくされてる。他にも、レース序盤にトム・フィーラース(オランダ、アルゴス・シマノ)がレースを去った。
11名に絞られた先頭グループは、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)が牽引するメイン集団に対して2分のリードを持って次なる1級山岳グラニエ峠へ。ここで先頭はミラー、キセロフスキー、ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)、エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)、シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)の5名に。キセロフスキーがこの頂上も先頭通過した。
メイン集団からはクリストフ・ケルヌ(フランス、ユーロップカー)やジェローム・コッペル(フランス、ソール・ソジャサン)が飛び出すも、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)が軽くジャンプしてこれを封じ込める。メイン集団は1分遅れでグラニエ峠を通過。下りでペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)が飛び出した。
中間スプリントポイントを狙って攻撃に出たサガンは、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)らとともに先頭グループを追走する。しかし先頭とのタイム差は縮まらず、後方ではマシュー・ゴス(オーストラリア)擁するオリカ・グリーンエッジがメイン集団を率いて追撃。
サガンらは結局メイン集団に吸収。するとメイン集団は一気にペースダウンし、先頭5名(ミラー、キセロフスキー、ゴティエ、マルティネス、ペロー)の逃げを容認。2連続1級山岳で遅れていたティボー・ピノ(フランス、FDJ・ビッグマット)やピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)は集団に復帰した。
ゴールまで100kmを残してタイム差は12分に。最終的にタイム差は最大12分50秒まで広がる。逃げ切りを確定させた5名は、動きを見せないまま3級山岳を越え、ゴールに向かう緩やかな登りに差し掛かる。
このラスト4kmから始まる登りで最初に動いたのはマルティネス。しかし決まらず、牽制状態の中からキセロフスキーが飛び出すも決まらない。ラスト3kmでペローが飛び出すとミラーが反応。独走力のあるこの2人の飛び出しが決まった。
同じ1977年生まれの35歳で、TTスペシャリストに分類されるペローとミラー。マルティネス、ゴティエ、キセロフスキーの追撃を振り切った2人によるゴールスプリントで、タイミングよく加速したミラーが先着した。
2000年、2002年、2003年に続く自身4度目のステージ優勝を飾ったミラー(2011年のチームTTを含めると5勝目)。ジロ・デ・イタリアでステージ1勝、ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ5勝を飾っているスコットランド人(出身は地中海に浮かぶマルタ島)は「キャリアの中で最高クラスの勝利だ。(ツールのモンヴァントゥーで死亡したイギリス人の)今日はトム・シンプソンの死から45年目の区切りになる日であることが、とくに感慨深い。今日は不運続きのチームのために勝ちたかったんだ」とコメントする。
ミラーはロンドン五輪にイギリスチームのメンバーとして出場予定。同じくイギリスチームのメンバーであるカヴェンディッシュ、ウィギンズ、フルームもステージ優勝を飾っている。「これで僕たちの英国チームは今年のツールのステージ優勝者が4人(カヴェンディッシュ、フルーム、ウィギンズ、ミラー)になった。僕たちはオリンピック最強のチームを持つことになる。1人は世界チャンピオンで、1人はマイヨジョーヌを着て、もう1人はマイヨジョーヌの最大の脅威。10年前にはとても考えられなかったことだ」とコメントする。
メイン集団は結局7分53秒遅れでゴール。マイヨヴェールを懸けたゴールスプリントでゴスがサガンを下した。しかしサガンの進路を塞いだとしてゴスには降格処分が与えられている(同集団の最後尾)。この結果、サガンがマイヨヴェールのリードを広げることに成功した。
最初の1級山岳で遅れ、チームとしての仕事ができなかったことに不満げな新城幸也(ユーロップカー)は10分15秒遅れでゴールしている。
選手コメントはレース公式サイトより。
ツール・ド・フランス2012第12ステージ結果
1位 デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン・シャープ) 5h42'46"
2位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)
3位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル) +05"
4位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)
5位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
6位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) +7'53"
7位 マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
8位 セバスティアン・イノー(フランス、アージェードゥーゼル) +7'54"
9位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
10位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)
100位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +10'15"
個人総合成績 マイヨ・ジョーヌ
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) 48h43'53"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +2'05"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +2'23"
4位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +3'19"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル) +4'48"
6位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・ニッサン) +6'15"
7位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム) +6'57"
8位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ) +7'30"
9位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) +8'31"
10位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ・ビッグマット) +8'51"
100位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +1h35'48"
ポイント賞 マイヨ・ヴェール
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
山岳賞 マイヨ・ブラン・アポワ・ルージュ
フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)
新人賞 マイヨ・ブラン
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)
チーム総合成績
レディオシャック・ニッサン
敢闘賞
ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
ツールはアルプスを離れ、次なる決戦地ピレネーに向けて西進を開始する。
第12ステージは、サンジャン・ド・モーリエンヌからアノネー・ダヴェジウまで、今大会最長の226kmコース。レース序盤に1級山岳グラン・クシュロン峠(登坂距離12.5km・平均勾配6.5%)と1級山岳グラニエ峠(登坂距離9.7km・平均勾配8.6%)を越えると、あとは比較的難易度の低いコースが続く。
ゴール手前に3級山岳が置かれているが、総合が動くほどの難易度ではなく、それでいて、スプリンター向きでもない。つまり逃げ切りが決まりやすいコースレイアウト。激しいアタック合戦でレースはスタートした。
すでに総合で順位を落としていたロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)はDNS。166名がスタートを切ると、最初の1級山岳グラン・クシュロン峠に向かってメイン集団からアタックが繰り返される。
メイン集団から飛び出したのは、ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック・ニッサン)を含む19名。チームメイトのマイヨアポワを守りたいロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)を先頭にグラン・クシュロン峠をクリアしていく。
このグラン・クシュロン峠の下りで、メイン集団から飛び出したダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)がクラッシュ。ベテラン山岳スペシャリストはリタイアを余儀なくされてる。他にも、レース序盤にトム・フィーラース(オランダ、アルゴス・シマノ)がレースを去った。
11名に絞られた先頭グループは、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)が牽引するメイン集団に対して2分のリードを持って次なる1級山岳グラニエ峠へ。ここで先頭はミラー、キセロフスキー、ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)、エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)、シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)の5名に。キセロフスキーがこの頂上も先頭通過した。
メイン集団からはクリストフ・ケルヌ(フランス、ユーロップカー)やジェローム・コッペル(フランス、ソール・ソジャサン)が飛び出すも、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)が軽くジャンプしてこれを封じ込める。メイン集団は1分遅れでグラニエ峠を通過。下りでペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)が飛び出した。
中間スプリントポイントを狙って攻撃に出たサガンは、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)らとともに先頭グループを追走する。しかし先頭とのタイム差は縮まらず、後方ではマシュー・ゴス(オーストラリア)擁するオリカ・グリーンエッジがメイン集団を率いて追撃。
サガンらは結局メイン集団に吸収。するとメイン集団は一気にペースダウンし、先頭5名(ミラー、キセロフスキー、ゴティエ、マルティネス、ペロー)の逃げを容認。2連続1級山岳で遅れていたティボー・ピノ(フランス、FDJ・ビッグマット)やピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)は集団に復帰した。
ゴールまで100kmを残してタイム差は12分に。最終的にタイム差は最大12分50秒まで広がる。逃げ切りを確定させた5名は、動きを見せないまま3級山岳を越え、ゴールに向かう緩やかな登りに差し掛かる。
このラスト4kmから始まる登りで最初に動いたのはマルティネス。しかし決まらず、牽制状態の中からキセロフスキーが飛び出すも決まらない。ラスト3kmでペローが飛び出すとミラーが反応。独走力のあるこの2人の飛び出しが決まった。
同じ1977年生まれの35歳で、TTスペシャリストに分類されるペローとミラー。マルティネス、ゴティエ、キセロフスキーの追撃を振り切った2人によるゴールスプリントで、タイミングよく加速したミラーが先着した。
2000年、2002年、2003年に続く自身4度目のステージ優勝を飾ったミラー(2011年のチームTTを含めると5勝目)。ジロ・デ・イタリアでステージ1勝、ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ5勝を飾っているスコットランド人(出身は地中海に浮かぶマルタ島)は「キャリアの中で最高クラスの勝利だ。(ツールのモンヴァントゥーで死亡したイギリス人の)今日はトム・シンプソンの死から45年目の区切りになる日であることが、とくに感慨深い。今日は不運続きのチームのために勝ちたかったんだ」とコメントする。
ミラーはロンドン五輪にイギリスチームのメンバーとして出場予定。同じくイギリスチームのメンバーであるカヴェンディッシュ、ウィギンズ、フルームもステージ優勝を飾っている。「これで僕たちの英国チームは今年のツールのステージ優勝者が4人(カヴェンディッシュ、フルーム、ウィギンズ、ミラー)になった。僕たちはオリンピック最強のチームを持つことになる。1人は世界チャンピオンで、1人はマイヨジョーヌを着て、もう1人はマイヨジョーヌの最大の脅威。10年前にはとても考えられなかったことだ」とコメントする。
メイン集団は結局7分53秒遅れでゴール。マイヨヴェールを懸けたゴールスプリントでゴスがサガンを下した。しかしサガンの進路を塞いだとしてゴスには降格処分が与えられている(同集団の最後尾)。この結果、サガンがマイヨヴェールのリードを広げることに成功した。
最初の1級山岳で遅れ、チームとしての仕事ができなかったことに不満げな新城幸也(ユーロップカー)は10分15秒遅れでゴールしている。
選手コメントはレース公式サイトより。
ツール・ド・フランス2012第12ステージ結果
1位 デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン・シャープ) 5h42'46"
2位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)
3位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル) +05"
4位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)
5位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
6位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) +7'53"
7位 マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
8位 セバスティアン・イノー(フランス、アージェードゥーゼル) +7'54"
9位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
10位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)
100位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +10'15"
個人総合成績 マイヨ・ジョーヌ
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) 48h43'53"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +2'05"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +2'23"
4位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +3'19"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル) +4'48"
6位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・ニッサン) +6'15"
7位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム) +6'57"
8位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ) +7'30"
9位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) +8'31"
10位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ・ビッグマット) +8'51"
100位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +1h35'48"
ポイント賞 マイヨ・ヴェール
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
山岳賞 マイヨ・ブラン・アポワ・ルージュ
フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)
新人賞 マイヨ・ブラン
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)
チーム総合成績
レディオシャック・ニッサン
敢闘賞
ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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