2012/05/21(月) - 11:29
カテゴリー山岳が4つ登場する169kmを走る難関山岳ステージ。序盤から逃げたマッテオ・ラボッティーニがゴール寸前でホアキン・ロドリゲスに追いつかれながら驚異の粘りを見せステージ優勝。ライバル達に差を付けたプリートがマリア・ローザの奪回に成功した。
5月20日日に開催されたジロ・デ・イタリア第15ステージは、北イタリアの代表都市、ミラノにほど近いブスト・アルシツィオを出発し、レッコを通過した後は大きく山岳地帯を周り、北東に位置するコモのピアン・デイ・レジネッリ峠へと、ロンバルディア平原の北側に位置する山岳地帯を走り抜ける169km。
途中にはカテゴリー1級、3級、2級の山岳が連続し、最後には2級のピアン・デイ・レジネッリがそびえる厳しいコースだ。山頂ゴールのカテゴリーは2級ながら、前半から10%近い勾配が続くためアタックが決まりやすい。翌日に休息日を控えていることもあり、総合上位争いを掛けた激しい山岳バトルが繰り広がられると予想された。
この日の天候は雨。気温14℃と肌寒い気候の中、ジェレミー・ハント(イギリス、チームスカイ)を除く179名の選手たちがスタートを切っていく。
この日も厳しいコースを控えているためか、レースは10kmを経過してもアタックがかからず。ギヨーム・ボナフォン(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)とマッテオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)の2名が18km地点から抜け出すと、集団は総合で大きく遅れているこの2名の動きをすぐに容認した。
第11ステージの落車の影響を引きずり調子の上がらないフランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)は山岳に突入する前にバイクを降り、リタイヤを選択。後にグレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)とジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)もレースを去った。シュレクは右肩の痛みを訴え、ヴィスコンティは喘息のような症状が出たためと発表している。
タイム差を順調に稼ぎだしていく先頭2名に対して、メイン集団からはステファン・デニフル(オーストリア、ヴァカンソレイユ・DCM)など4名の追走グループが形成されるも、やがて吸収。中間スプリントはメイン集団の先頭をマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)が獲得し、マリアロッサ・パッシオーネをキープする意欲を見せる。
やがて先頭2名は登坂距離15km、平均勾配6.3%を誇る1級山岳ヴァリコ・ディ・ヴァルカーナを登り始める。するとラボッティーニはボナフォンを切り離し、単独で先行することを選択。ここからラボッティーニの長い独走が始まることとなる。
およそ8分弱のタイム差を持って山岳へと入った集団からは、エマヌエーレ・セッラ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)、アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)、マルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター)、アンドレイ・アマドール(スペイン、モビスター)、アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)ら有力勢を含む11名の追走グループが形成された。
残り50km、3級山岳フォルチェッラ・ディ・ブラへと登る手前では、ラボッティーニのリードは追走グループに対して5分。メイン集団に対しては9分半。
追走グループと、リクイガス・キャノンデールやアスタナが統率を図る集団のどちらもが間隔を詰めながらレースを展開する中、一人独走を続けるラボッティーニはフォルチェッラ・ディ・ブラと、2級山岳サンピエトロを連続してトップ通過。山岳ポイントを荒稼ぎしたことで一躍マリア・アッズーラ獲得を成功させた。
このサンピエトロの下りは、2009年のジロ第8ステージで、ペドロ・オリッリョが崖下に転落し、選手生命を断つ重症を負ったポイントだ。ここで先頭のラボッティーニがスリップして落車するも大事には至らず。すぐに立ち上がると、逃げ切り勝利を目指して再びバイクにまたがった。
そしてラボッティーニはラスト8kmから始まる2級山岳ピアン・デイ・レジネッリへと突入。続いて5名まで人数を減らしていた追走グループは2分半、ペースを上げ続けるマリア・ローザグループはおよそ3分半のタイムギャップをもってレジネッリへ。
ラスト4km。苦しい表情を見せながら上るラボッティーニ。追走グループからはクネゴが遅れ、ロサダが独走を開始。シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)の牽きによってスピードの上がりきった集団からはミケーレ・スカルポーニがアタック。
この動きによってマリア・ローザを着るライダー・ヘジダルが遅れ、メンバーはロドリゲス、スカルポーニ、セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)、イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)のみとなる。
そしてここから総合首位返り咲きを狙うロドリゲスが飛び立った。
パンチのある圧倒的な登坂力をみせるロドリゲスは、ライバル達の追随を許さない。ロサダをパスすると、そのままの勢いを保ったまま先頭のラボッティーニをゴール前残り350mでキャッチした。そのままロドリゲスが先行するかと思われたが、ここで緩くなった勾配がラボッティーニに味方した。
ロドリゲスの背後に食らいつくと、残り50mでスプリントを開始。驚異的な粘りと力を見せたラボッティーニに、ロドリゲスはゴール勝負を選択しなかった。後ろを振り返り、優勝を確信したラボッティーニは両手でガッツポーズを何度も繰り返しながら、先頭でゴールへと飛び込んだ。
「アタックしたときは勝つなんて少しも考えなかった。」第7ステージに続く逃げを打ち、落車をし、最後はロドリゲスに追いつかれながら難関山岳ステージで150kmに渡る逃げ切りを成功させたラボッティーニは、プロ2年目にして劇的なグランツール初ステージ優勝を遂げた。
ラボッティーニは、「ロドリゲスが僕を追い抜いていった時、負けたと思った。でも残り50mで再び抜き返すことができた。全く信じられないよ」と驚きと喜びを語る。
イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)とミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)はロドリゲスから25秒遅れ、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)は29秒遅れでゴール。
マリア・ローザを着るライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)が39秒遅れの12位でゴールしたことで、マリア・ローザは再びロドリゲスへと渡った。
別府史之(オリカ・グリーンエッジ)は34分48秒遅れの141位でゴールしている。
翌日は2週間ぶりの休息日。更に厳しさを増す第3週を前に、選手たちはコンディションの回復に努める。
ジロ・デ・イタリア2012第15ステージ結果
1位 マッテオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ) 5h15'30"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
3位 アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ) +23″
4位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ) +25″
5位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)
6位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
7位 ステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CFSイノックス) +29″
8位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)
9位 ジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)
10位 アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
個人総合成績
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 65h11'07"
2位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) +30″
3位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +01′22″
4位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) +01′26″
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +01′27″
6位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +01′36″
7位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +01′42″
8位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ) +01′55″
9位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)+02′12″
10位 サンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット) +02′13″
ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)
山岳賞 マリアアッズーラ
マッテオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)
新人賞 マリアビアンカ
セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
チーム総合成績
モビスター
photo:Kei.TSUJI,CorVos,Riccardo Scanferla
text:So.Isobe
5月20日日に開催されたジロ・デ・イタリア第15ステージは、北イタリアの代表都市、ミラノにほど近いブスト・アルシツィオを出発し、レッコを通過した後は大きく山岳地帯を周り、北東に位置するコモのピアン・デイ・レジネッリ峠へと、ロンバルディア平原の北側に位置する山岳地帯を走り抜ける169km。
途中にはカテゴリー1級、3級、2級の山岳が連続し、最後には2級のピアン・デイ・レジネッリがそびえる厳しいコースだ。山頂ゴールのカテゴリーは2級ながら、前半から10%近い勾配が続くためアタックが決まりやすい。翌日に休息日を控えていることもあり、総合上位争いを掛けた激しい山岳バトルが繰り広がられると予想された。
この日の天候は雨。気温14℃と肌寒い気候の中、ジェレミー・ハント(イギリス、チームスカイ)を除く179名の選手たちがスタートを切っていく。
この日も厳しいコースを控えているためか、レースは10kmを経過してもアタックがかからず。ギヨーム・ボナフォン(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)とマッテオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)の2名が18km地点から抜け出すと、集団は総合で大きく遅れているこの2名の動きをすぐに容認した。
第11ステージの落車の影響を引きずり調子の上がらないフランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)は山岳に突入する前にバイクを降り、リタイヤを選択。後にグレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)とジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)もレースを去った。シュレクは右肩の痛みを訴え、ヴィスコンティは喘息のような症状が出たためと発表している。
タイム差を順調に稼ぎだしていく先頭2名に対して、メイン集団からはステファン・デニフル(オーストリア、ヴァカンソレイユ・DCM)など4名の追走グループが形成されるも、やがて吸収。中間スプリントはメイン集団の先頭をマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)が獲得し、マリアロッサ・パッシオーネをキープする意欲を見せる。
やがて先頭2名は登坂距離15km、平均勾配6.3%を誇る1級山岳ヴァリコ・ディ・ヴァルカーナを登り始める。するとラボッティーニはボナフォンを切り離し、単独で先行することを選択。ここからラボッティーニの長い独走が始まることとなる。
およそ8分弱のタイム差を持って山岳へと入った集団からは、エマヌエーレ・セッラ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)、アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)、マルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター)、アンドレイ・アマドール(スペイン、モビスター)、アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)ら有力勢を含む11名の追走グループが形成された。
残り50km、3級山岳フォルチェッラ・ディ・ブラへと登る手前では、ラボッティーニのリードは追走グループに対して5分。メイン集団に対しては9分半。
追走グループと、リクイガス・キャノンデールやアスタナが統率を図る集団のどちらもが間隔を詰めながらレースを展開する中、一人独走を続けるラボッティーニはフォルチェッラ・ディ・ブラと、2級山岳サンピエトロを連続してトップ通過。山岳ポイントを荒稼ぎしたことで一躍マリア・アッズーラ獲得を成功させた。
このサンピエトロの下りは、2009年のジロ第8ステージで、ペドロ・オリッリョが崖下に転落し、選手生命を断つ重症を負ったポイントだ。ここで先頭のラボッティーニがスリップして落車するも大事には至らず。すぐに立ち上がると、逃げ切り勝利を目指して再びバイクにまたがった。
そしてラボッティーニはラスト8kmから始まる2級山岳ピアン・デイ・レジネッリへと突入。続いて5名まで人数を減らしていた追走グループは2分半、ペースを上げ続けるマリア・ローザグループはおよそ3分半のタイムギャップをもってレジネッリへ。
ラスト4km。苦しい表情を見せながら上るラボッティーニ。追走グループからはクネゴが遅れ、ロサダが独走を開始。シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)の牽きによってスピードの上がりきった集団からはミケーレ・スカルポーニがアタック。
この動きによってマリア・ローザを着るライダー・ヘジダルが遅れ、メンバーはロドリゲス、スカルポーニ、セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)、イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)のみとなる。
そしてここから総合首位返り咲きを狙うロドリゲスが飛び立った。
パンチのある圧倒的な登坂力をみせるロドリゲスは、ライバル達の追随を許さない。ロサダをパスすると、そのままの勢いを保ったまま先頭のラボッティーニをゴール前残り350mでキャッチした。そのままロドリゲスが先行するかと思われたが、ここで緩くなった勾配がラボッティーニに味方した。
ロドリゲスの背後に食らいつくと、残り50mでスプリントを開始。驚異的な粘りと力を見せたラボッティーニに、ロドリゲスはゴール勝負を選択しなかった。後ろを振り返り、優勝を確信したラボッティーニは両手でガッツポーズを何度も繰り返しながら、先頭でゴールへと飛び込んだ。
「アタックしたときは勝つなんて少しも考えなかった。」第7ステージに続く逃げを打ち、落車をし、最後はロドリゲスに追いつかれながら難関山岳ステージで150kmに渡る逃げ切りを成功させたラボッティーニは、プロ2年目にして劇的なグランツール初ステージ優勝を遂げた。
ラボッティーニは、「ロドリゲスが僕を追い抜いていった時、負けたと思った。でも残り50mで再び抜き返すことができた。全く信じられないよ」と驚きと喜びを語る。
イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)とミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)はロドリゲスから25秒遅れ、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)は29秒遅れでゴール。
マリア・ローザを着るライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)が39秒遅れの12位でゴールしたことで、マリア・ローザは再びロドリゲスへと渡った。
別府史之(オリカ・グリーンエッジ)は34分48秒遅れの141位でゴールしている。
翌日は2週間ぶりの休息日。更に厳しさを増す第3週を前に、選手たちはコンディションの回復に努める。
ジロ・デ・イタリア2012第15ステージ結果
1位 マッテオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ) 5h15'30"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
3位 アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ) +23″
4位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ) +25″
5位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)
6位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
7位 ステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CFSイノックス) +29″
8位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)
9位 ジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)
10位 アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
個人総合成績
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 65h11'07"
2位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) +30″
3位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +01′22″
4位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) +01′26″
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +01′27″
6位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +01′36″
7位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +01′42″
8位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ) +01′55″
9位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)+02′12″
10位 サンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット) +02′13″
ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)
山岳賞 マリアアッズーラ
マッテオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)
新人賞 マリアビアンカ
セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
チーム総合成績
モビスター
photo:Kei.TSUJI,CorVos,Riccardo Scanferla
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