2024/09/09(月) - 09:35
スペインの首都マドリードで快走見せたシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)が、ブエルタ・ア・エスパーニャ第21ステージの個人タイムトライアルを制覇。区間2位のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)は自身4度目となる総合優勝に輝き、最多タイ記録に並んだ。
9月8日(日) 第21ステージ
テレフォニカ〜マドリード 24.6km(個人TT)
第79回ブエルタ・ア・エスパーニャの最終日はすなわち、2024年グランツールのファイナルステージでもある。その舞台となったのはスペインの首都マドリードで、パレードランを含むロードレースではなく、ポルトガルで行われた初日以来となる個人タイムトライアルで決着した。
24.6kmコースは丘一つない平坦路のためTTスペシャリスト向き。途中180度コーナーが登場するものの、テクニカルではない単純なパワー勝負となった。
第20ステージを終了時点でマイヨロホを着るプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)と総合2位ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル)の差は2分2秒。ログリッチ本人は「僕はTTスペシャリストではない」と繰り返し言うものの、東京五輪の金メダリストを相手に総合の逆転は困難であると予想された。
プロ3年目にして念願のグランツール初出場を果たしたティム・ナーベルマン(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)から、1分間隔(ラスト20名は2分間隔)で135名が続々とマドリードの市街地コースに飛び出す。最初に暫定トップの選手が待つホットシートに座ったのは、4番手出走したティボー・ゲルナレック(フランス、アルケアB&Bホテルズ)だった。
しかしそのタイムをすぐさまエドアルド・アッフィニ(ヴィスマ・リースアバイク)が上回る。今大会はリードアウトからワウト・ファンアールト(ベルギー)に勝利をもたらしたイタリアTT選手権2位のアッフィニは、前輪にもディスクホイールを装着したバイクで快走。それを来年のチームメイトであるヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)が更新する、27分22秒でフィニッシュした。
今年限りで現役を退く37歳のトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・デスティニー)が25度目のグランツール出場を終え、同じく現役引退を発表しているロベルト・ヘーシンク(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)も沿道の声援に応えながら24度目のグランツールで完走を果たす。その後今大会2度の2位と勝利に迫ったマウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー)がトップタイムで駆け抜け、すぐにそのタイムをフィリッポ・バロンチーニ(イタリア、UAEチームエミレーツ)が3秒更新した。
バロンチーニは2021年のU23TT世界選手権で優勝し、今年リドル・トレックから移籍した24歳。初日の個人TTを制した優勝候補の1人であるブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)は落車する不運に見舞われるなか、全体の97番目にシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)がスタートを切った。
初日は4位に甘んじ、集団スプリントでトップ5に2度入ったキュング。第1中間計測地点(7.9km)のトップタイムを更新した元ヨーロッパTT王者は、続く第2計測(16.8km)も最速で通過。バロンチーニのタイムを43秒上回る26分28秒という圧巻のタイムを叩き出した。
大会を通してミケル・ランダ(スペイン、Tレックス・クイックステップ)を献身的に支えたマティア・カッタネオ(イタリア)はバロンチーニより速いタイムで駆けながらも、コーナーでのタイムロスによりキュングから41秒遅れでフィニッシュ。そしていよいよ総合上位勢の出番が回ってきた。
なかでも注目されたのはデンマークTT王者であるマティアス・スケルモース(リドル・トレック)の走り。しかし総合エースとして臨んだ3週間の疲労からか、序盤からスピードに乗ることはできず1分1秒遅れでレースを終える。だがダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)が2分14秒遅れ(44位)だったため、スケルモースは総合で逆転して5位に入ると共に、着用するマイヨブランコ(ヤングライダー賞)を守り抜いた。
総合4位のリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)と総合3位エンリク・マス(スペイン、モビスター)は、総合2位のベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル)にプレッシャーを与えることはできない。反対にオコーナーは序盤から飛ばし、第1計測を2番目に早いタイムで通過。その後スピードを維持することはできなかったものの、区間11位(1分5秒遅れ)という好タイムで総合2位の座を守った。
そして最終出走者としてマイヨロホを纏ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が走り出した。3日前にチーム内に蔓延した食中毒と疑われる症状により選手が3名がリタイアし、ログリッチもレース後「20回はトイレに行ったよ」と語る本調子ではないなか、第1計測をキュングから13秒遅れという好スタートを切った。
第2計測でもキュングと28秒遅れの2番手通過したログリッチは、最後までスピードを落とすことなくフィニッシュラインに26分59秒で到着。キュングから30秒遅れの区間2位で、自身4度目のブエルタ総合優勝を決めた。
12回出場したグランツールで何度も勝利に迫り、逃し続けてきたキュング。「グランツールでの勝利を長きに渡り追い続けてきた。このようなコースではフィニッシュに向かい踏み続けるだけだった。グランツール初勝利は本当に嬉しいよ。30秒のリードで勝ったということは、偶然ではなく僕が一番強かったということ。チーム、そして新しいTTバイクを改善してくれたウィリエールと共に努力してきたものが、勝利という結果に繋がった」と悲願の初勝利を喜び、母国スイスで開催されるロード世界選手権に向けて弾みをつけた。
そしてロベルト・エラス(スペイン)に並び、歴代最多タイとなる4度目のマイヨロホを手に入れたログリッチは「(最多記録は)嬉しいことだ。タフなレースだったがすべてが上手くいった。(キュングの)走りは素晴らしく、このようなコースは彼に向いている。自らモチベーションを高め、勝利を狙いにいった。辛かったと同時に楽しんで走ることができた」とコメント。
また、「ここまで来るのに多くの犠牲を払ってきた。それは僕だけでなく家族も同じこと。この結果がとても嬉しいし、周りのサポートに感謝する。もちろん(最多記録となる)5勝目を狙いに行きたいが、4勝はすでにクレイジーな結果だよ」と語った。
今年のジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスはタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が共に総合優勝したため、スロベニア人が3大ツールを完全制覇。またマイヨプントス(ポイント賞)は区間3勝したカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)が2年連続で獲得し、マイヨモンターニャ(山岳賞)はジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)、総合敢闘賞には何度も逃げから勝利に迫り、第16ステージで勝利したマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)が輝いている。
ログリッチを含む選手たちのコメントは、別記事にてお伝えいたします。
9月8日(日) 第21ステージ
テレフォニカ〜マドリード 24.6km(個人TT)
第79回ブエルタ・ア・エスパーニャの最終日はすなわち、2024年グランツールのファイナルステージでもある。その舞台となったのはスペインの首都マドリードで、パレードランを含むロードレースではなく、ポルトガルで行われた初日以来となる個人タイムトライアルで決着した。
24.6kmコースは丘一つない平坦路のためTTスペシャリスト向き。途中180度コーナーが登場するものの、テクニカルではない単純なパワー勝負となった。
第20ステージを終了時点でマイヨロホを着るプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)と総合2位ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル)の差は2分2秒。ログリッチ本人は「僕はTTスペシャリストではない」と繰り返し言うものの、東京五輪の金メダリストを相手に総合の逆転は困難であると予想された。
プロ3年目にして念願のグランツール初出場を果たしたティム・ナーベルマン(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)から、1分間隔(ラスト20名は2分間隔)で135名が続々とマドリードの市街地コースに飛び出す。最初に暫定トップの選手が待つホットシートに座ったのは、4番手出走したティボー・ゲルナレック(フランス、アルケアB&Bホテルズ)だった。
しかしそのタイムをすぐさまエドアルド・アッフィニ(ヴィスマ・リースアバイク)が上回る。今大会はリードアウトからワウト・ファンアールト(ベルギー)に勝利をもたらしたイタリアTT選手権2位のアッフィニは、前輪にもディスクホイールを装着したバイクで快走。それを来年のチームメイトであるヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)が更新する、27分22秒でフィニッシュした。
今年限りで現役を退く37歳のトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・デスティニー)が25度目のグランツール出場を終え、同じく現役引退を発表しているロベルト・ヘーシンク(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)も沿道の声援に応えながら24度目のグランツールで完走を果たす。その後今大会2度の2位と勝利に迫ったマウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー)がトップタイムで駆け抜け、すぐにそのタイムをフィリッポ・バロンチーニ(イタリア、UAEチームエミレーツ)が3秒更新した。
バロンチーニは2021年のU23TT世界選手権で優勝し、今年リドル・トレックから移籍した24歳。初日の個人TTを制した優勝候補の1人であるブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)は落車する不運に見舞われるなか、全体の97番目にシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)がスタートを切った。
初日は4位に甘んじ、集団スプリントでトップ5に2度入ったキュング。第1中間計測地点(7.9km)のトップタイムを更新した元ヨーロッパTT王者は、続く第2計測(16.8km)も最速で通過。バロンチーニのタイムを43秒上回る26分28秒という圧巻のタイムを叩き出した。
大会を通してミケル・ランダ(スペイン、Tレックス・クイックステップ)を献身的に支えたマティア・カッタネオ(イタリア)はバロンチーニより速いタイムで駆けながらも、コーナーでのタイムロスによりキュングから41秒遅れでフィニッシュ。そしていよいよ総合上位勢の出番が回ってきた。
なかでも注目されたのはデンマークTT王者であるマティアス・スケルモース(リドル・トレック)の走り。しかし総合エースとして臨んだ3週間の疲労からか、序盤からスピードに乗ることはできず1分1秒遅れでレースを終える。だがダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)が2分14秒遅れ(44位)だったため、スケルモースは総合で逆転して5位に入ると共に、着用するマイヨブランコ(ヤングライダー賞)を守り抜いた。
総合4位のリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)と総合3位エンリク・マス(スペイン、モビスター)は、総合2位のベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル)にプレッシャーを与えることはできない。反対にオコーナーは序盤から飛ばし、第1計測を2番目に早いタイムで通過。その後スピードを維持することはできなかったものの、区間11位(1分5秒遅れ)という好タイムで総合2位の座を守った。
そして最終出走者としてマイヨロホを纏ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が走り出した。3日前にチーム内に蔓延した食中毒と疑われる症状により選手が3名がリタイアし、ログリッチもレース後「20回はトイレに行ったよ」と語る本調子ではないなか、第1計測をキュングから13秒遅れという好スタートを切った。
第2計測でもキュングと28秒遅れの2番手通過したログリッチは、最後までスピードを落とすことなくフィニッシュラインに26分59秒で到着。キュングから30秒遅れの区間2位で、自身4度目のブエルタ総合優勝を決めた。
12回出場したグランツールで何度も勝利に迫り、逃し続けてきたキュング。「グランツールでの勝利を長きに渡り追い続けてきた。このようなコースではフィニッシュに向かい踏み続けるだけだった。グランツール初勝利は本当に嬉しいよ。30秒のリードで勝ったということは、偶然ではなく僕が一番強かったということ。チーム、そして新しいTTバイクを改善してくれたウィリエールと共に努力してきたものが、勝利という結果に繋がった」と悲願の初勝利を喜び、母国スイスで開催されるロード世界選手権に向けて弾みをつけた。
そしてロベルト・エラス(スペイン)に並び、歴代最多タイとなる4度目のマイヨロホを手に入れたログリッチは「(最多記録は)嬉しいことだ。タフなレースだったがすべてが上手くいった。(キュングの)走りは素晴らしく、このようなコースは彼に向いている。自らモチベーションを高め、勝利を狙いにいった。辛かったと同時に楽しんで走ることができた」とコメント。
また、「ここまで来るのに多くの犠牲を払ってきた。それは僕だけでなく家族も同じこと。この結果がとても嬉しいし、周りのサポートに感謝する。もちろん(最多記録となる)5勝目を狙いに行きたいが、4勝はすでにクレイジーな結果だよ」と語った。
今年のジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスはタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が共に総合優勝したため、スロベニア人が3大ツールを完全制覇。またマイヨプントス(ポイント賞)は区間3勝したカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)が2年連続で獲得し、マイヨモンターニャ(山岳賞)はジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)、総合敢闘賞には何度も逃げから勝利に迫り、第16ステージで勝利したマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)が輝いている。
ログリッチを含む選手たちのコメントは、別記事にてお伝えいたします。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第21ステージ
1位 | シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) | 26:28 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +0:30 |
3位 | マティア・カッタネオ(イタリア、Tレックス・クイックステップ) | +0:41 |
4位 | フィリッポ・バロンチーニ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | +0:43 |
5位 | マウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー) | +0:46 |
6位 | マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック) | +0:52 |
7位 | ヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー) | +0:54 |
8位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) | +1:01 |
9位 | ハリー・スウェニー(オーストラリア、EFエデュケーション・イージーポスト) | +1:02 |
10位 | ブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) | +1:03 |
11位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) | +1:05 |
23位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +1:33 |
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | 81:49:18 |
2位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) | +2:36 |
3位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +3:13 |
4位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | +4:02 |
5位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) | +5:49 |
6位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | +6:32 |
7位 | フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +7:05 |
8位 | ミケル・ランダ(スペイン、Tレックス・クイックステップ) | +8:48 |
9位 | パヴェル・シヴァコフ(ロシア、UAEチームエミレーツ) | +10:04 |
10位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +11:19 |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 226pts |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | 140pts |
3位 | マックス・プール(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | 118pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) | 78pts |
2位 | マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 76pts |
3位 | パブロ・カストリーリョ(スペイン、エキポ・ケルンファルマ) | 43pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) | 81:55:07 |
2位 | フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +1:16 |
3位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +5:30 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 245:12:58 |
2位 | レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ | +33:53 |
3位 | デカトロンAG2Rラモンディアル | +1:23:09 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
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