2024/05/09(木) - 08:23
逃げ集団から勝者が生まれたジロ・デ・イタリア第5ステージ。ヴァルグレンをスプリントで退けたバンジャマン・トマ(フランス)が、自身初のグランツール勝利と共にコフィディスに今シーズン初白星をもたらした。
前日に南西を目指した選手たちはこの日、出発地点ジェノヴァからティレニア海沿いを南西に向かう。ジロ・デ・イタリア第5ステージは丘陵ステージに分類された178kmコースで、フィニッシュ地点はジロ区間42勝や奇抜なジャージ姿でも知られるマリオ・チポッリーニの生まれ故郷ルッカだ。
この日のカテゴリー山岳は序盤の3級(勾配は緩いが登坂距離15.3kmと長い)と、ラスト21.1kmに頂上を迎える4級の2つだけ。ルッカの市街地を走るラスト3kmからは緩いコーナーが連続するため、エーススプリンターを最短距離で導くリードアウトの技量がスプリントの鍵を握ると予想された。
昨年大会から続く5度の2位を乗り越え、悲願の勝利を掴んだジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)が慣れ親しんだマリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)を着て集団先頭でスタートを待つ。そしてその隣にはビブショーツまでピンク色に染め上げたマリアローザのタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が並び、現地時間午後1時に170名の選手たちが走り出した。
気温20度に加え、雲一つない晴天のなかルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)のアタックに2名が追従。そこにシモン・ゲシュケ(ドイツ、コフィディス)とマヌエーレ・トロッツィ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)が合流し、直後にエウェン・コステュー(フランス、アルケアB&Bホテルズ)がメイン集団に戻ったため4名の逃げ集団が形成された。
プロトンの先導役を担ったのは、前日も長時間牽引したアマヌエル・ゲブレイグザビエル(エリトリア、リドル・トレック)とアルペシン・ドゥクーニンク。3級山岳に突入するとカーデン・グローブス(オーストリア)でスプリント勝利を狙うアルペシンがペースを上げ、思惑通りファビオ・ヤコブセン(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)やカレブ・ユアン(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)などピュアスプリンターたちが遅れていった。
最大1分45秒のリードが3級山岳で一気に縮小した逃げ集団では、ゲシュケが先頭通過して山岳ポイントを9点獲得する。そしてスプリンターたちを絞り、引き離したいアルペシンのハイペースは残り111kmで早くも逃げを吸収。しかし残り100kmを切るとアルペシンは突然牽引を止め、一時は4分差をつけられたヤコブセンらスプリンターたちが続々とプロトンに復帰した。
新たな逃げが生まれず、ひと塊のままメイン集団は残り78.8km地点の中間スプリントにやってきた。単独落車したリードアウト役のクリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)を尻目に、オラフ・コーイ(オランダ)とミラン、グローブスの3人が最大ポイントを狙いスプリント。ここではグローブスが先着(12pts)し、その直後にバンジャマン・トマ(フランス、コフィディス)のアタックから4名の逃げグループが形成された。
残り77kmで形成された逃げ集団
バンジャマン・トマ(フランス、コフィディス)
ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
エンゾ・パレニ(フランス、グルパマFDJ)
アンドレア・ピエトロボン(イタリア、ポルティ・コメタ)
この逃げを容認したプロトンはゲブレイグザビエルが再び牽引を始め、そこにアルペシンとスーダル・クイックステップがペースメイクに選手を出す。インテルジロ(58.2km)ではピアニストの顔を持つ25歳のピエトロボンが先頭通過。そしてメイン集団ではここでもグローブスがトップ通過(3pts)し、その後方では左肩が裂けたヨーロッパ王者ジャージを着るラポルトが集団に復帰した。
最大1分半のリードから拡げることのできない逃げグループは、残り30kmを1分差で通過する。一方で3日連続の集団スプリントに向け、常に逃げを射程圏内に置くプロトンでは7名を巻き込む落車が発生。それにはヴィスマのアッティラ・ヴァルテル(ハンガリー)が巻き込まれ、他にはマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)やトビアス・フォス(ノルウェー、イネオス・グレナディアーズ)の姿も。しかし大勢には影響を及ばすことなく、最終4級山岳をヴァルグレンが先頭で越え、レースはフィニッシュまでの平坦路に突入した。
相変わらずプロトン先頭はリドルが人数を固め、アルペシンは牽引に一人を送る。一方、最終局面により多くの選手を残していたいスーダルは前に出ず、それをリドルとアルペシンが咎めるシーンも。そして懸命なローテーションでフィニッシュを目指す先頭の4名との差は、ここから中々縮まらなかった。
危機感を覚えたメイン集団では残り13kmを切ってようやくスーダルとジェイコ・アルウラーが牽引に選手を出し、そこにヴィスマも加わる。しかし残り10kmで45秒、残り5kmで40秒と差は縮まらず、時速60kmを維持した4名は牽制に入ることなくフラムルージュ(残り1km)を通過。この時点で22秒のリードがあったため、ジロ・デ・イタリア第5ステージの勝利は逃げの4名に委ねられた。
スプリント勝負を嫌ったピエトロボンが最終ストレートの手前で飛び出し、それをヴァルグレンとパレニが引き戻す。そして力尽き頭を垂れるパレニを尻目に、残り50mからヴァルグレンとトマがスプリントを開始。両者が懸命に踏み込む戦いは、トラック競技の現ヨーロッパ王者でもあるトマの勝利で決着した。
イタリア在住のフランス人であるトマが、慣れ親しんだ地で掴んだグランツール初勝利。「フィニッシュまでの道のりはまるで長いチームパシュートのようだった。本当に信じられない勝利。残り10kmから勝利を意識し始め、時速60kmで進めば可能だと思った。第2の故郷であるイタリアで勝つことができ、本当に嬉しいよ」と劇的な勝利を振り返った。
2022年のツール・ド・フランス第15ステージでは同じく逃げから勝利に迫ったものの、残り450mで集団に捉えられたトマ。「そのことが頭をよぎったが、”今日は僕の日になる”と自分に言い聞かせたんだ」と見事、その雪辱を晴らした。
また不調に喘ぐコフィディスにとっては、これが今シーズン初勝利となった。
11秒遅れでやってきたプロトンはユアンを退け、ミランが先着。勝利こそ逃したものの、ミランは14ポイントを加算してマリアチクラミーノのリード拡大に成功している。
前日に南西を目指した選手たちはこの日、出発地点ジェノヴァからティレニア海沿いを南西に向かう。ジロ・デ・イタリア第5ステージは丘陵ステージに分類された178kmコースで、フィニッシュ地点はジロ区間42勝や奇抜なジャージ姿でも知られるマリオ・チポッリーニの生まれ故郷ルッカだ。
この日のカテゴリー山岳は序盤の3級(勾配は緩いが登坂距離15.3kmと長い)と、ラスト21.1kmに頂上を迎える4級の2つだけ。ルッカの市街地を走るラスト3kmからは緩いコーナーが連続するため、エーススプリンターを最短距離で導くリードアウトの技量がスプリントの鍵を握ると予想された。
昨年大会から続く5度の2位を乗り越え、悲願の勝利を掴んだジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)が慣れ親しんだマリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)を着て集団先頭でスタートを待つ。そしてその隣にはビブショーツまでピンク色に染め上げたマリアローザのタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が並び、現地時間午後1時に170名の選手たちが走り出した。
気温20度に加え、雲一つない晴天のなかルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)のアタックに2名が追従。そこにシモン・ゲシュケ(ドイツ、コフィディス)とマヌエーレ・トロッツィ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)が合流し、直後にエウェン・コステュー(フランス、アルケアB&Bホテルズ)がメイン集団に戻ったため4名の逃げ集団が形成された。
プロトンの先導役を担ったのは、前日も長時間牽引したアマヌエル・ゲブレイグザビエル(エリトリア、リドル・トレック)とアルペシン・ドゥクーニンク。3級山岳に突入するとカーデン・グローブス(オーストリア)でスプリント勝利を狙うアルペシンがペースを上げ、思惑通りファビオ・ヤコブセン(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)やカレブ・ユアン(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)などピュアスプリンターたちが遅れていった。
最大1分45秒のリードが3級山岳で一気に縮小した逃げ集団では、ゲシュケが先頭通過して山岳ポイントを9点獲得する。そしてスプリンターたちを絞り、引き離したいアルペシンのハイペースは残り111kmで早くも逃げを吸収。しかし残り100kmを切るとアルペシンは突然牽引を止め、一時は4分差をつけられたヤコブセンらスプリンターたちが続々とプロトンに復帰した。
新たな逃げが生まれず、ひと塊のままメイン集団は残り78.8km地点の中間スプリントにやってきた。単独落車したリードアウト役のクリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)を尻目に、オラフ・コーイ(オランダ)とミラン、グローブスの3人が最大ポイントを狙いスプリント。ここではグローブスが先着(12pts)し、その直後にバンジャマン・トマ(フランス、コフィディス)のアタックから4名の逃げグループが形成された。
残り77kmで形成された逃げ集団
バンジャマン・トマ(フランス、コフィディス)
ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
エンゾ・パレニ(フランス、グルパマFDJ)
アンドレア・ピエトロボン(イタリア、ポルティ・コメタ)
この逃げを容認したプロトンはゲブレイグザビエルが再び牽引を始め、そこにアルペシンとスーダル・クイックステップがペースメイクに選手を出す。インテルジロ(58.2km)ではピアニストの顔を持つ25歳のピエトロボンが先頭通過。そしてメイン集団ではここでもグローブスがトップ通過(3pts)し、その後方では左肩が裂けたヨーロッパ王者ジャージを着るラポルトが集団に復帰した。
最大1分半のリードから拡げることのできない逃げグループは、残り30kmを1分差で通過する。一方で3日連続の集団スプリントに向け、常に逃げを射程圏内に置くプロトンでは7名を巻き込む落車が発生。それにはヴィスマのアッティラ・ヴァルテル(ハンガリー)が巻き込まれ、他にはマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)やトビアス・フォス(ノルウェー、イネオス・グレナディアーズ)の姿も。しかし大勢には影響を及ばすことなく、最終4級山岳をヴァルグレンが先頭で越え、レースはフィニッシュまでの平坦路に突入した。
相変わらずプロトン先頭はリドルが人数を固め、アルペシンは牽引に一人を送る。一方、最終局面により多くの選手を残していたいスーダルは前に出ず、それをリドルとアルペシンが咎めるシーンも。そして懸命なローテーションでフィニッシュを目指す先頭の4名との差は、ここから中々縮まらなかった。
危機感を覚えたメイン集団では残り13kmを切ってようやくスーダルとジェイコ・アルウラーが牽引に選手を出し、そこにヴィスマも加わる。しかし残り10kmで45秒、残り5kmで40秒と差は縮まらず、時速60kmを維持した4名は牽制に入ることなくフラムルージュ(残り1km)を通過。この時点で22秒のリードがあったため、ジロ・デ・イタリア第5ステージの勝利は逃げの4名に委ねられた。
スプリント勝負を嫌ったピエトロボンが最終ストレートの手前で飛び出し、それをヴァルグレンとパレニが引き戻す。そして力尽き頭を垂れるパレニを尻目に、残り50mからヴァルグレンとトマがスプリントを開始。両者が懸命に踏み込む戦いは、トラック競技の現ヨーロッパ王者でもあるトマの勝利で決着した。
イタリア在住のフランス人であるトマが、慣れ親しんだ地で掴んだグランツール初勝利。「フィニッシュまでの道のりはまるで長いチームパシュートのようだった。本当に信じられない勝利。残り10kmから勝利を意識し始め、時速60kmで進めば可能だと思った。第2の故郷であるイタリアで勝つことができ、本当に嬉しいよ」と劇的な勝利を振り返った。
2022年のツール・ド・フランス第15ステージでは同じく逃げから勝利に迫ったものの、残り450mで集団に捉えられたトマ。「そのことが頭をよぎったが、”今日は僕の日になる”と自分に言い聞かせたんだ」と見事、その雪辱を晴らした。
また不調に喘ぐコフィディスにとっては、これが今シーズン初勝利となった。
11秒遅れでやってきたプロトンはユアンを退け、ミランが先着。勝利こそ逃したものの、ミランは14ポイントを加算してマリアチクラミーノのリード拡大に成功している。
ジロ・デ・イタリア2024第5ステージ結果
1位 | バンジャマン・トマ(フランス、コフィディス) | 3:59:59 |
2位 | ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
3位 | アンドレア・ピエトロボン(イタリア、ポルティ・コメタ) | |
4位 | エンゾ・パレニ(フランス、グルパマFDJ) | +0:03 |
5位 | ジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) | +0:11 |
6位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) | |
7位 | フィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
8位 | ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | |
9位 | オラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) | |
10位 | マディス・ミケルス(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 19:19:15 |
2位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +0:46 |
3位 | ダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:47 |
4位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | +0:55 |
5位 | エイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア、モビスター) | +0:56 |
6位 | ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、アスタナ・カザクスタン) | +1:07 |
7位 | フアン・ロペス(スペイン、リドル・トレック) | +1:11 |
8位 | ヤン・ヒルト(チェコ、スーダル・クイックステップ) | +1:13 |
9位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザクスタン、アスタナ・カザクスタン) | +1:26 |
10位 | エステバン・チャベス(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト) |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) | 134pts |
2位 | ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 89pts |
3位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 80pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 51pts |
2位 | リリアン・カルメジャーヌ(フランス、アンテルマルシェ・ワンティ) | 32pts |
3位 | ダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) | 26pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | 19:20:10 |
2位 | アレックス・ボーダン(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) | +0:45 |
3位 | マウリ・ファンセヴェナント(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +0:49 |
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 58:02:47 |
2位 | アスタナ・カザクスタン | +0:14 |
3位 | ボーラ・ハンスグローエ | +0:55 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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