2023/03/19(日) - 09:10
勝負所ポッジオでのライバルのアタックに対応し、頂上手前で爆発的なアタックを決めたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が第114回ミラノ〜サンレモ勝者に輝く。ロンド・ファン・フラーンデレン2勝に続く、自身3度目の"モニュメント"勝利を掴み取った。
イタリアで『ラ・プリマヴェーラ(春)』と呼ばれる伝統の一戦に集ったのは、グランツールの総合表彰台を狙うオールラウンダーからスプリンター、クラシックハンター、そしてクライマー、あるいはTTスペシャリストまでをも含む25チーム170名。つまりはあらゆる選手にチャンスがある、ニュートラル区間を合わせると300kmの大台に乗る現存する最長のワンデークラシックがミラノの街からスタートした。
スタートフラッグが振られると同時にエオーロ・コメタ勢の波状アタックが掛かり、まずはミルコ・マエストリ(イタリア)とアレッサンドロ・トネッリ(イタリア、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ)が2人逃げを決め、さらに7名の追走グループが合流。ジロ・デ・イタリアでお馴染みの"逃げスペシャリスト"を含む、9名が先頭で逃げグループを組織した。
エオーロとグリーンプロジェクト、ジェイコ・アルウラーがそれぞれ2人ずつ入れ、アスタナ・カザフスタンとQ36.5プロサイクリング、そしてチューダープロサイクリングが1名ずつを加えた、ブルー要素多めの逃げグループ。若干の横風を受けながらメイン集団を牽引するトレック・セガフレードのジャコポ・モスカ(イタリア)とユンボ・ヴィスマのヨス・ファンエムデン(オランダ)は最大でも3分13秒というタイトなタイムコントロールを行い、レースの緊張感を緩めることはしなかった。
ロンバルディア平原に別れを告げ、逃げグループとプロトンはちょうどコースの真ん中に位置するトゥルキーノ峠をクリア。ロンバルディア平原とリグーリア海岸の分岐点、そして体感気温的に冬と春の分岐点となるこのトゥルキーノ峠では途中、2019年覇者のジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)が落車するアクシデントも発生したが、特に大きな問題なく集団復帰を果たしている。
レースは「これぞミラノ〜サンレモ」と形容できる、急峻な岩肌が続くリグーリア海岸沿いを一路南下する。相変わらずタイム差3分で追う集団先頭にはUAEチームエミレーツとアルペシン・ドゥクーニンクも合流。残り60kmを切ってから連続するカーポ・メーレ、カーポ・チェルヴォ、カーポ・ベルタの通称『トレ・カーピ(3つの岬)』に差し掛かるとタイム差は1分半まで縮まった。
ミラノ〜サンレモの勝負は、残り21.5km地点でピークを迎えるチプレッサ(距離5.65km/平均4.1%/最大9%)と、残り5.4km地点でピークを迎えるポッジオ(距離3.7km/平均3.7%/最大8%)という2つの登り。そこで形成される独走もしくは複数名の逃げ切り、もしくは精鋭集団によるスプリントで決する。人数を減らしながらも粘り強く逃げた先頭グループだったが、テンションを上げるメイン集団によってチプレッサ入口で吸収。タデイ・ポガチャル(スロベニア)を従えたUAEチームエミレーツの牽引によって注目の若手スプリンター、アルノー・デリー(ベルギー、ロット・デスティニー)を含むスプリンター勢が脱落を喫した。
タイトコーナーが続くダウンヒルではマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が後続を置き去りにするシーンもあったものの、ポッジオまで勝負を待つべくアタックはかけない。バーレーン・ヴィクトリアスの牽引でいよいよポッジオに突入すると、中腹で一気に勝負が始まった。
ポガチャルを従えたティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツ)が一気にペースを上げて隊列を引き伸ばし、全員が苦しくなってきたタイミングで9番目を走っていたマッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)があえてペースを落とし"中切れ"を演出。UAEのチームプレーで8名の先頭グループが生まれた途端、頂上手前で一気にポガチャルが仕掛けた。
今年出場レース全てで総合優勝あるいは優勝(合計9勝)と波に乗るポガチャルの攻撃だったが、独走に持ち込むまでには至らない。イネオス・グレナディアーズのエースを務めるフィリッポ・ガンナ(イタリア)が即座に反応し、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)とファンデルプールも連結。「単独になるだけの強さは無かった。チームメイトが素晴らしい働きをしてくれたのに残念」と悔やむ前ツール覇者に対し、頂上手前で一気にファンデルプールが踏み込んだ。
大観衆が詰めかけたポッジオ頂上でのタイム差は僅か2,3秒。一人逃げるファンデルプールに対してポガチャル&ガンナ&ファンアールトが追い、その後ろに昨年覇者マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)とマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が続く。そしてこの矢継ぎ早の超高速登坂によってピュアスプリンターの希望は完全に打ち砕れた。
スムーズにダウンヒルをこなし、リードを少しずつ、しかし確実に拡大していくファンデルプール。脚が無いポガチャルに代わってファンアールトが自ら牽引役を務めたものの、ダウンヒルを終えた時点でのタイム差は6秒。火がついたような猛烈な走りで飛ばすファンデルプールにとって、その差は十分なものだった。
亡き祖父レイモン・プリドール(1961年)に続く、ファンデルプール家2度目のミラノ〜サンレモ制覇。フィニッシュ手前で大きく両手を広げ、頭を抱え、ガッツポーズで6時間25分23秒に及ぶ長丁場の戦いを締めくくる。15秒遅れた追走グループではイタリアの期待を背負うガンナがロングスパートで先着。3位にファンアールト、4位はポガチャルだった。
ストラーデビアンケを15位で終え、続くティレーノ〜アドリアティコでも本調子ではなく、絶対的な優勝候補には挙げられていなかったファンデルプールの完勝。初出場2020年13位、2021年5位、2022年3位に続く4年目の正直であり、レース前コメントでの「理想の優勝プラン」を実行した形となった。
今年も集団のままフィニッシュにたどり着くことができなかったピュアスプリンター最上位は、32秒遅れでフィニッシュしたカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・ディステニー)の16位だった。
イタリアで『ラ・プリマヴェーラ(春)』と呼ばれる伝統の一戦に集ったのは、グランツールの総合表彰台を狙うオールラウンダーからスプリンター、クラシックハンター、そしてクライマー、あるいはTTスペシャリストまでをも含む25チーム170名。つまりはあらゆる選手にチャンスがある、ニュートラル区間を合わせると300kmの大台に乗る現存する最長のワンデークラシックがミラノの街からスタートした。
スタートフラッグが振られると同時にエオーロ・コメタ勢の波状アタックが掛かり、まずはミルコ・マエストリ(イタリア)とアレッサンドロ・トネッリ(イタリア、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ)が2人逃げを決め、さらに7名の追走グループが合流。ジロ・デ・イタリアでお馴染みの"逃げスペシャリスト"を含む、9名が先頭で逃げグループを組織した。
エオーロとグリーンプロジェクト、ジェイコ・アルウラーがそれぞれ2人ずつ入れ、アスタナ・カザフスタンとQ36.5プロサイクリング、そしてチューダープロサイクリングが1名ずつを加えた、ブルー要素多めの逃げグループ。若干の横風を受けながらメイン集団を牽引するトレック・セガフレードのジャコポ・モスカ(イタリア)とユンボ・ヴィスマのヨス・ファンエムデン(オランダ)は最大でも3分13秒というタイトなタイムコントロールを行い、レースの緊張感を緩めることはしなかった。
ロンバルディア平原に別れを告げ、逃げグループとプロトンはちょうどコースの真ん中に位置するトゥルキーノ峠をクリア。ロンバルディア平原とリグーリア海岸の分岐点、そして体感気温的に冬と春の分岐点となるこのトゥルキーノ峠では途中、2019年覇者のジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)が落車するアクシデントも発生したが、特に大きな問題なく集団復帰を果たしている。
レースは「これぞミラノ〜サンレモ」と形容できる、急峻な岩肌が続くリグーリア海岸沿いを一路南下する。相変わらずタイム差3分で追う集団先頭にはUAEチームエミレーツとアルペシン・ドゥクーニンクも合流。残り60kmを切ってから連続するカーポ・メーレ、カーポ・チェルヴォ、カーポ・ベルタの通称『トレ・カーピ(3つの岬)』に差し掛かるとタイム差は1分半まで縮まった。
ミラノ〜サンレモの勝負は、残り21.5km地点でピークを迎えるチプレッサ(距離5.65km/平均4.1%/最大9%)と、残り5.4km地点でピークを迎えるポッジオ(距離3.7km/平均3.7%/最大8%)という2つの登り。そこで形成される独走もしくは複数名の逃げ切り、もしくは精鋭集団によるスプリントで決する。人数を減らしながらも粘り強く逃げた先頭グループだったが、テンションを上げるメイン集団によってチプレッサ入口で吸収。タデイ・ポガチャル(スロベニア)を従えたUAEチームエミレーツの牽引によって注目の若手スプリンター、アルノー・デリー(ベルギー、ロット・デスティニー)を含むスプリンター勢が脱落を喫した。
タイトコーナーが続くダウンヒルではマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が後続を置き去りにするシーンもあったものの、ポッジオまで勝負を待つべくアタックはかけない。バーレーン・ヴィクトリアスの牽引でいよいよポッジオに突入すると、中腹で一気に勝負が始まった。
ポガチャルを従えたティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツ)が一気にペースを上げて隊列を引き伸ばし、全員が苦しくなってきたタイミングで9番目を走っていたマッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)があえてペースを落とし"中切れ"を演出。UAEのチームプレーで8名の先頭グループが生まれた途端、頂上手前で一気にポガチャルが仕掛けた。
今年出場レース全てで総合優勝あるいは優勝(合計9勝)と波に乗るポガチャルの攻撃だったが、独走に持ち込むまでには至らない。イネオス・グレナディアーズのエースを務めるフィリッポ・ガンナ(イタリア)が即座に反応し、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)とファンデルプールも連結。「単独になるだけの強さは無かった。チームメイトが素晴らしい働きをしてくれたのに残念」と悔やむ前ツール覇者に対し、頂上手前で一気にファンデルプールが踏み込んだ。
大観衆が詰めかけたポッジオ頂上でのタイム差は僅か2,3秒。一人逃げるファンデルプールに対してポガチャル&ガンナ&ファンアールトが追い、その後ろに昨年覇者マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)とマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が続く。そしてこの矢継ぎ早の超高速登坂によってピュアスプリンターの希望は完全に打ち砕れた。
スムーズにダウンヒルをこなし、リードを少しずつ、しかし確実に拡大していくファンデルプール。脚が無いポガチャルに代わってファンアールトが自ら牽引役を務めたものの、ダウンヒルを終えた時点でのタイム差は6秒。火がついたような猛烈な走りで飛ばすファンデルプールにとって、その差は十分なものだった。
亡き祖父レイモン・プリドール(1961年)に続く、ファンデルプール家2度目のミラノ〜サンレモ制覇。フィニッシュ手前で大きく両手を広げ、頭を抱え、ガッツポーズで6時間25分23秒に及ぶ長丁場の戦いを締めくくる。15秒遅れた追走グループではイタリアの期待を背負うガンナがロングスパートで先着。3位にファンアールト、4位はポガチャルだった。
ストラーデビアンケを15位で終え、続くティレーノ〜アドリアティコでも本調子ではなく、絶対的な優勝候補には挙げられていなかったファンデルプールの完勝。初出場2020年13位、2021年5位、2022年3位に続く4年目の正直であり、レース前コメントでの「理想の優勝プラン」を実行した形となった。
今年も集団のままフィニッシュにたどり着くことができなかったピュアスプリンター最上位は、32秒遅れでフィニッシュしたカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・ディステニー)の16位だった。
ミラノ〜サンレモ2023結果
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | 6:25:23 |
2位 | フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) | +0:15 |
3位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | |
4位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | |
5位 | セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、アルペシン・ドゥクーニンク) | +0:26 |
6位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | |
7位 | ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
8位 | マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
9位 | アントニー・テュルジス(フランス、トタルエネルジー) | |
10位 | ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) | |
11位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ) | |
12位 | ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、スーダル・クイックステップ) | +0:32 |
13位 | クリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ) | |
14位 | マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
15位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
16位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・ディステニー) | |
17位 | マルコ・ハラー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
18位 | ニキアス・アルント(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
19位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ) | |
20位 | イヴ・ランパールト(ベルギー、スーダル・クイックステップ) |
text:So.Isobe
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