2018/12/10(月) - 00:00
一晩で真っ白になったマキノ高原で誕生した新チャンピオン。スキー場らしい雪の斜面でシクロクロス日本一を決める全日本選手権が開催され、序盤から抜け出した前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)が初のタイトル獲得を果たした。
前日とは打って変わって大雪のコンディションに見舞われたシクロクロス全日本選手権。前夜にかけて降り始めた雪によって、12月9日のレース当日は最大20cmほどの積雪が観測された。コースはもちろん100%真っ白な雪に覆われ、気温2〜3度の灰色の空からは断続的に雪やあられが降り続く。午前中の男子ジュニア、男子U23、そして女子エリートのレースで形成された深い轍に沿って、男子エリートライダーたちがバイクを走らせた。
78名がスタートを切ると、最初の舗装路の登りで横山航太(シマノレーシング)と丸山厚(Team RIDLEY)の2人がリードを奪う。第1コーナーでライン取りをミスしたディフェンディングチャンピオンの小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)がポジションを大きく落とす中、先行する横山と丸山に前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)がジョインした。
乗車率の低いキャンバー区間を終えて早速先頭に立ったのは、3週間前のRaphaスーパークロス野辺山(UCI-C1)で海外勢を下して優勝を飾った前田。「他の選手と比べて雪の走り方が苦手なので、最後まで接戦になるような展開に持ち込みたくなかった。だから1周目のランの区間は全力で走りました」という前田が横山と丸山、そしてその後ろに続く沢田時(チームブリヂストンサイクリング)や竹之内悠(東洋フレーム)を引き離していく。
マッドコンディションだった土曜日のマスターズレースのラップタイムが概ね7〜8分だったのに対し、雪によって著しく乗車率が下がり、下りもスピードを乗せることができない男子エリート1周目のラップタイムは11分を超えた。レース時間が5周回に決定した時点で前田は単独2番手となった横山から20秒程度のリードを得る。3番手を走る丸山には沢田が小坂光が追いついて4周目へと入っていく。
主催者が除雪した舗装路も見る見るうちに白くなっていくほど、容赦なく降り続いた雪。しかし、エリートライダーが作る轍によって徐々に乗車率が上がり、ラップタイムはぐんぐんと縮小していく。9分台のラップタイムをマークしたのは1周目から先頭をひた走る前田と単独2番手の横山。両者のタイム差が20秒前後を推移したまま、互いのミスによって縮まると広がるを繰り返しながら17秒差で最終周回の鐘を聞く。
一つのミスやトラブルで簡単に詰まるタイム差で走り続けた前田と横山。しかし2人のタイム差は最後まで詰まることなく、前田が16秒のリードをもったまま、フィニッシュラインに向かってスプリントしながら舗装路を駆け上がった。
1周目でリードを奪ってから最後まで先頭を譲ることなく走りきった前田が初のシクロクロス全日本選手権制覇を達成。「全日本選手権はジュニア時代からずっと勝てていなかったタイトル。勝てない年が続いていたので、ようやく勝てたという気持ちです」と語る前田のナショナルチャンピオンジャージの胸元では金メダルが光る。
「プレッシャーに弱くてすぐ緊張する性格なので、これまでの全日本選手権では勝手に緊張して勝手にミスして沈んでいた。さらに(3週間前の)野辺山で勝ったので、大きく期待される存在でした。そのプレッシャーが嫌だった。しかも今まで良いイメージがないマキノのコースに雪が降ったので、ふざけるな、最悪だと思いました。東京出身で、雪のレースを走った経験も数えるぐらいしかない。機材も含めて走り方が正直分からなかった」と、スタート前に曇った表情を浮かべていた前田は語る。「でも今朝この一面雪が積もったコースを見て、逆に振り切れた。ちょっと投げやりになって、程よく緊張が解けた状態だったんだと思います。やれることをやろうとシンプルな気持ちで挑んだのが良かったんだと思う」と、前田は後ろ向きな気持ちを前向きに切り替えた。
「雪の走り方が上手い横山選手と乗車スキルで決まるような勝負になれば分が悪い。だから1周目のランで自分が一番速いと感じて、ここしかないと思って全力で走りました。このコースは誰かの後ろで走るよりも、先頭で自分のラインで走るほうが有利。抜け出してからは、踏めるところはしっかり踏んで、ミスのないように、最後まで集中力を保って走ることができた」と新チャンピオンは語る。「日本のシクロクロスシーンは勝つ選手が毎週変わる拮抗した状態。互いに切磋琢磨して高め合いたい」と、前田は長い目で国内シーンのレベルアップを目指している。
過去に積雪レースで圧勝した経験もある横山は「今朝、窓を開けた瞬間(積雪を見て)今日は自分の日だと思ったんですが、やっぱり今シーズンこれまでのレースの結果を見てわかる通り、前田選手の走りが素晴らしかった。もちろん悔しいですが、チャンピオンになるべき人が勝ったんだと思います。昨年2位で今年2位。来年こそ1位を取りたい」とコメント。なお、2019年度のシクロクロス全日本選手権開催場所は未定だ。
沢田を振り切り、3位に入って表彰台に滑り込んだのはタイトル防衛がかかった小坂光。「ディフェンディングチャンピオンとして初めて挑んだ大会。スタートでつまずいてそこから追いかける展開になってしまったんですが、最後まで集中して自分の力を出し切れたと思います。今日は最初から最後まで(前田)公平が強かったと思います」と勝者を称えた。
女子エリートならびに男子U23、男子ジュニアは別記事でお伝えします。
前日とは打って変わって大雪のコンディションに見舞われたシクロクロス全日本選手権。前夜にかけて降り始めた雪によって、12月9日のレース当日は最大20cmほどの積雪が観測された。コースはもちろん100%真っ白な雪に覆われ、気温2〜3度の灰色の空からは断続的に雪やあられが降り続く。午前中の男子ジュニア、男子U23、そして女子エリートのレースで形成された深い轍に沿って、男子エリートライダーたちがバイクを走らせた。
78名がスタートを切ると、最初の舗装路の登りで横山航太(シマノレーシング)と丸山厚(Team RIDLEY)の2人がリードを奪う。第1コーナーでライン取りをミスしたディフェンディングチャンピオンの小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)がポジションを大きく落とす中、先行する横山と丸山に前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)がジョインした。
乗車率の低いキャンバー区間を終えて早速先頭に立ったのは、3週間前のRaphaスーパークロス野辺山(UCI-C1)で海外勢を下して優勝を飾った前田。「他の選手と比べて雪の走り方が苦手なので、最後まで接戦になるような展開に持ち込みたくなかった。だから1周目のランの区間は全力で走りました」という前田が横山と丸山、そしてその後ろに続く沢田時(チームブリヂストンサイクリング)や竹之内悠(東洋フレーム)を引き離していく。
マッドコンディションだった土曜日のマスターズレースのラップタイムが概ね7〜8分だったのに対し、雪によって著しく乗車率が下がり、下りもスピードを乗せることができない男子エリート1周目のラップタイムは11分を超えた。レース時間が5周回に決定した時点で前田は単独2番手となった横山から20秒程度のリードを得る。3番手を走る丸山には沢田が小坂光が追いついて4周目へと入っていく。
主催者が除雪した舗装路も見る見るうちに白くなっていくほど、容赦なく降り続いた雪。しかし、エリートライダーが作る轍によって徐々に乗車率が上がり、ラップタイムはぐんぐんと縮小していく。9分台のラップタイムをマークしたのは1周目から先頭をひた走る前田と単独2番手の横山。両者のタイム差が20秒前後を推移したまま、互いのミスによって縮まると広がるを繰り返しながら17秒差で最終周回の鐘を聞く。
一つのミスやトラブルで簡単に詰まるタイム差で走り続けた前田と横山。しかし2人のタイム差は最後まで詰まることなく、前田が16秒のリードをもったまま、フィニッシュラインに向かってスプリントしながら舗装路を駆け上がった。
1周目でリードを奪ってから最後まで先頭を譲ることなく走りきった前田が初のシクロクロス全日本選手権制覇を達成。「全日本選手権はジュニア時代からずっと勝てていなかったタイトル。勝てない年が続いていたので、ようやく勝てたという気持ちです」と語る前田のナショナルチャンピオンジャージの胸元では金メダルが光る。
「プレッシャーに弱くてすぐ緊張する性格なので、これまでの全日本選手権では勝手に緊張して勝手にミスして沈んでいた。さらに(3週間前の)野辺山で勝ったので、大きく期待される存在でした。そのプレッシャーが嫌だった。しかも今まで良いイメージがないマキノのコースに雪が降ったので、ふざけるな、最悪だと思いました。東京出身で、雪のレースを走った経験も数えるぐらいしかない。機材も含めて走り方が正直分からなかった」と、スタート前に曇った表情を浮かべていた前田は語る。「でも今朝この一面雪が積もったコースを見て、逆に振り切れた。ちょっと投げやりになって、程よく緊張が解けた状態だったんだと思います。やれることをやろうとシンプルな気持ちで挑んだのが良かったんだと思う」と、前田は後ろ向きな気持ちを前向きに切り替えた。
「雪の走り方が上手い横山選手と乗車スキルで決まるような勝負になれば分が悪い。だから1周目のランで自分が一番速いと感じて、ここしかないと思って全力で走りました。このコースは誰かの後ろで走るよりも、先頭で自分のラインで走るほうが有利。抜け出してからは、踏めるところはしっかり踏んで、ミスのないように、最後まで集中力を保って走ることができた」と新チャンピオンは語る。「日本のシクロクロスシーンは勝つ選手が毎週変わる拮抗した状態。互いに切磋琢磨して高め合いたい」と、前田は長い目で国内シーンのレベルアップを目指している。
過去に積雪レースで圧勝した経験もある横山は「今朝、窓を開けた瞬間(積雪を見て)今日は自分の日だと思ったんですが、やっぱり今シーズンこれまでのレースの結果を見てわかる通り、前田選手の走りが素晴らしかった。もちろん悔しいですが、チャンピオンになるべき人が勝ったんだと思います。昨年2位で今年2位。来年こそ1位を取りたい」とコメント。なお、2019年度のシクロクロス全日本選手権開催場所は未定だ。
沢田を振り切り、3位に入って表彰台に滑り込んだのはタイトル防衛がかかった小坂光。「ディフェンディングチャンピオンとして初めて挑んだ大会。スタートでつまずいてそこから追いかける展開になってしまったんですが、最後まで集中して自分の力を出し切れたと思います。今日は最初から最後まで(前田)公平が強かったと思います」と勝者を称えた。
女子エリートならびに男子U23、男子ジュニアは別記事でお伝えします。
シクロクロス全日本選手権2018 男子エリート結果
1位 | 前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 0:50:29 |
2位 | 横山航太(シマノレーシング) | 0:00:16 |
3位 | 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) | 0:00:36 |
4位 | 沢田時(チームブリヂストンサイクリング) | 0:00:41 |
5位 | 竹之内悠(東洋フレーム) | 0:01:02 |
6位 | 丸山厚(チームリドレー) | 0:01:10 |
7位 | 門田基志(TEAM GIANT) | 0:03:38 |
8位 | 兼子博昭(スワコレーシングチーム) | 0:03:55 |
9位 | 松本駿(TEAM SCOTT) | 0:04:14 |
10位 | 小森亮平(愛三工業レーシングチーム) | 0:04:20 |
text&photo:Kei Tsuji
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