2018/07/24(火) - 15:29
カナディアンバイクブランド、アルゴン18よりユニークなモデル名が特徴的なエントリーロードの「GO!」をインプレッション。上位モデルのテクノロジーを引き継ぎつつ、ハンドリングの安定性や快適性を重視した設計で、乗りやすさを押し出した普段使いに最適な1台に仕上がる。
1989年にモントリオール市内のショップオリジナルバイクブランドとして誕生した、カナダのアルゴン18。創業者であり現CEOを務めるジェルベー・リュー氏の元プロロードレーサーとしての経験とノウハウを注ぎ込み、より効率的で乗りやすく速いジオメトリーやセッティングを追求したハイパフォーマンスな各種バイクラインアップを揃える。
1990年にインターバイクに初出展し本格的にバイクブランドとしての道を歩みだすと、その後2001年にはアルミフレーム全盛期の中、他社に先立ってカーボンバイクの「HELIUM」をリリース。更に2008年にはタイムトライアルバイクの「E-114」がユーロバイクアワードを受賞するなど、成長を続けたアルゴン18は着実にその知名度を高めていった。
そして2015、2016年とプロコンチネンタルチームのボーラ・アルゴン18へのバイクサポートを行い、ブランドとして念願のツール・ド・フランス出場を果たすと、2017年からはワールドチームのアスタナへの機材供給を開始。現在チームのメインバイクとして、オールラウンドモデルのフラッグシップ「GALLIUM PRO」が選手たちの走りを支えている。
一貫して競技志向なレーシングバイクの開発を続けてきた同社だが、2018モデルでブランド初となるライフスタイルに寄り添ったエントリーグレードのカーボンバイクをリリースした。それが今回インプレッションした「GO!」である。他のハイエンドモデルで培ったテクノロジーを活かしながら、ライドの楽しさを味わうバイクとして趣向を変えた1台に仕上がる。
シンプルなルックスに貢献している直線的なフレームワークは上位グレードと変わらず、細身のチュービングによって街中にも溶け込む派手すぎない見た目を実現。その上でエンデュランスモデル「KRYPTON」譲りのコンパクトなリア三角と、緩くカーブを描いたシートステー形状によってコンフォートな味付けを施しているのが特徴だ。
アルゴン18独自の設計コンセプトであるHDS(ホリゾンタル・デュアル・システム)も引き続き採用する。フレームを対角線で切り分けたときの上部をコンフォートゾーン、下部をパワーゾーンとし、トップチューブからシートステーにかけてしなりを生み出し、ダウンチューブからチェーンステーにかけては高い剛性感を持たせることで最適な走行性能を獲得しているのだ。また上下に分かれたカラーリングはそのコンセプトを表すもの。
ジオメトリーを見てみると、レースモデルと比較して寝たヘッド角と長めのホイールベース、長めのヘッドチューブや短めのリーチなど、より安定感の高い走りとアップライトなポジションが可能なよう煮詰められているのが分かる。アルゴン18のアイコンであり、ヘッドパーツ上側のベアリングの高さを段階的に変更できる「3Dヘッドチューブ」も搭載。25mm高のパーツを標準装備し、アップライトなハンドル位置でもヘッド周りの剛性低下を抑えられる他、オプションで高さ0mmパーツも用意される。
小柄なライダーでも選べるXXS~Mまでの4サイズ展開。それぞれAFS(アルゴンフィットシステム)に基づき各ライダーに最適な性能と快適な乗り心地、優れたハンドリングを提供するようサイズ毎に最適化された設計を施しているのもポイントだ。
フレームはメカニカルコンポーネント専用でケーブル内装式、その他プレスフィットBB、27.2mm径シートポストなどのスペックだ。2色で塗り分けたフレームはブラックとともに、ミントもしくはアンスラサイトでペイントした2カラーで展開。シマノ105完成車とカンパニョーロCENTAUR完成車で販売される。それでは、インプレッションに移ろう。
― インプレッション
「乗り心地の良さが光るサイクリングが楽しくなる1台」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
ひと漕ぎふた漕ぎしただけで分かるほど乗り心地が抜群に良いバイクに仕上がっています。それでいて走りも軽く、コンフォートバイクという方向の味付けではありません。速さ重視の性能ではないものの、乗っていて楽しい走りを見せてくれるので、特にロングライドを走ってみたいというエントリーライダーにこそマッチしそうな印象です。
細身のリアセクションとフロントフォークが良い感じにしなってくれるので、路面からの振動を上手い具合に吸収してくれています。それでいて思い切りパワーを駆けてもフレームがヨレることなく、ボリューム感や剛性感もきちんと持ち合わせていることで、気持ちよく進む走りを実現しているのだと思います。後輪の追従性も良く、バイクが跳ねてしまうようなこともありませんでした。
バイクの重量以上に登りの走りも軽く、アップダウンのある山道なども軽快に駆けていける性能も持っています。競技用途であればレースバイクのGALLIUMなどの方が走りにキレがあるかもしれませんが、エントリーモデルとして違う持ち味を持たせたことで、アルゴン18の中でも個性ある性格を獲得した1台と言えるでしょう。
カンパニョーロのCENTAURはレバーのフィット感も良いですし、ブレーキも十分な制動力を見せてくれるので、完成車で購入した時にコンポーネントで不満はないと思います。強いて言うならタイヤをハイエンドのものに変えると、より走りが洗練されてライドが楽しくなることでしょう。
日本ではまだマイナーブランドではありますが、バイクの設計や走りを見ると上手く作られておりメーカーの技術力が垣間見える自転車だと思います。フレームのペイントも他のレースモデルとはイメージを変えており、差別化の意思を感じますね。エントリーグレードと言えど侮れない性能で、ロングライドをメインにレースも走りたいという人にはベストなバイクとなりそうです。
「クセのない軽い走りが魅力、エントリーモデル以上の性能」小西裕介(なるしまフレンド)
まず”乗りやすい”というのが第一印象で、万人が気に入るだろう扱いやすさがありますね。クセもなく漕ぎ出しも軽いですし、ちょっと乗っただけでこのバイク走るなという感触を得ました。リアトライアングルの造形で振動吸収性を狙っているのでしょうが、快適性だけではないのがGO!の良いところです。乗り心地ばかり優先したエントリーモデルだと走りがもっさりしがちですが、そんなこともなく走りの性能と上手くバランスされているのが特徴だと思います。
走りのイメージが良かったのは登りですね。10km/h以下のゆっくりした速度から踏み込んでみても、すんなり加速してくれて軽快に登ってくれるんです。バイク自体は軽い訳ではありませんが、それだけに走りの軽さが際立つ印象です。パワーをかけたときの剛性感に不満もなく、これでエントリーグレードと言うならかなり出来の良い走りではないでしょうか。
高速域で大きな衝撃が来るようなシーンだとどうしてもバイクが跳ねてしまいますが、比較的ゆっくりめなスピードで巡航している分には振動吸収性は良く、快適なライドを楽しめる味付けだなと感じます。それでもまったり走るツーリングバイクというよりは、軽い走りを活かしてヒルクライムに挑戦するなどレース向きに使っても楽しめる1台になりそうです。
大トルクを掛けて伸びるような加速というような性格ではありませんが、軽めのギアで軽快に回していくペダリングだとフレームの持ち味を活かせるでしょう。コンフォート寄りな設計なのかもしれませんが、直進安定が強く出ていることもなく、むしろクイックな操作感があり、シッティングからダンシングへの移行もスムーズに行なえますね。
また個人的にはホイールをアップグレードしてみたいかなと。特にディープリムではなく、軽めのローハイトホイールに変えるとより登りでの走りの軽さが強調されることでしょう。レーシングブランドのアルゴン18だけに、このGO!もレースもこなせるポテンシャルも十分に持ち合わせているので、上手くバランスされた走りの良さを感じてもらいたいですね。
アルゴン18 GO!
カラー:Black/Electric Mint Gloss、Black Anthracite Matt
フレーム重量:1,190g
サイズ:XXS、XS、S、M
価 格:
シマノ105完成車 258,000円(税抜)
カンパニョーロCENTAUR完成車 270,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
小西裕介(なるしまフレンド)
なるしまフレンド神宮店メカニックチーフ。長年実業団登録選手として活躍し、国内トップレベルのレーサーとしてホビーレースで数多くの優勝経験を持つ。レース歴は20年以上に及び走れるスタッフとして信頼を集めながらも、メカニックの知識も豊富で走りからメカまで幅広いアドバイスをお客さんに提供する。脚質はサーキットコースを得意とするスピードマンだ。
CWレコメンドショップページ
なるしまフレンドHP
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。過去にはツール・ド・おきなわ市民200kmや、ジャパンカップオープンレースなどの国内ビックレースにて優勝を経験。2016年にはニセコクラシック年代別優勝も果たし、今なお衰えを知らない”最速店長”の一人である。
サイクルポイント オーベストFacebook
text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
1989年にモントリオール市内のショップオリジナルバイクブランドとして誕生した、カナダのアルゴン18。創業者であり現CEOを務めるジェルベー・リュー氏の元プロロードレーサーとしての経験とノウハウを注ぎ込み、より効率的で乗りやすく速いジオメトリーやセッティングを追求したハイパフォーマンスな各種バイクラインアップを揃える。
1990年にインターバイクに初出展し本格的にバイクブランドとしての道を歩みだすと、その後2001年にはアルミフレーム全盛期の中、他社に先立ってカーボンバイクの「HELIUM」をリリース。更に2008年にはタイムトライアルバイクの「E-114」がユーロバイクアワードを受賞するなど、成長を続けたアルゴン18は着実にその知名度を高めていった。
そして2015、2016年とプロコンチネンタルチームのボーラ・アルゴン18へのバイクサポートを行い、ブランドとして念願のツール・ド・フランス出場を果たすと、2017年からはワールドチームのアスタナへの機材供給を開始。現在チームのメインバイクとして、オールラウンドモデルのフラッグシップ「GALLIUM PRO」が選手たちの走りを支えている。
一貫して競技志向なレーシングバイクの開発を続けてきた同社だが、2018モデルでブランド初となるライフスタイルに寄り添ったエントリーグレードのカーボンバイクをリリースした。それが今回インプレッションした「GO!」である。他のハイエンドモデルで培ったテクノロジーを活かしながら、ライドの楽しさを味わうバイクとして趣向を変えた1台に仕上がる。
シンプルなルックスに貢献している直線的なフレームワークは上位グレードと変わらず、細身のチュービングによって街中にも溶け込む派手すぎない見た目を実現。その上でエンデュランスモデル「KRYPTON」譲りのコンパクトなリア三角と、緩くカーブを描いたシートステー形状によってコンフォートな味付けを施しているのが特徴だ。
アルゴン18独自の設計コンセプトであるHDS(ホリゾンタル・デュアル・システム)も引き続き採用する。フレームを対角線で切り分けたときの上部をコンフォートゾーン、下部をパワーゾーンとし、トップチューブからシートステーにかけてしなりを生み出し、ダウンチューブからチェーンステーにかけては高い剛性感を持たせることで最適な走行性能を獲得しているのだ。また上下に分かれたカラーリングはそのコンセプトを表すもの。
ジオメトリーを見てみると、レースモデルと比較して寝たヘッド角と長めのホイールベース、長めのヘッドチューブや短めのリーチなど、より安定感の高い走りとアップライトなポジションが可能なよう煮詰められているのが分かる。アルゴン18のアイコンであり、ヘッドパーツ上側のベアリングの高さを段階的に変更できる「3Dヘッドチューブ」も搭載。25mm高のパーツを標準装備し、アップライトなハンドル位置でもヘッド周りの剛性低下を抑えられる他、オプションで高さ0mmパーツも用意される。
小柄なライダーでも選べるXXS~Mまでの4サイズ展開。それぞれAFS(アルゴンフィットシステム)に基づき各ライダーに最適な性能と快適な乗り心地、優れたハンドリングを提供するようサイズ毎に最適化された設計を施しているのもポイントだ。
フレームはメカニカルコンポーネント専用でケーブル内装式、その他プレスフィットBB、27.2mm径シートポストなどのスペックだ。2色で塗り分けたフレームはブラックとともに、ミントもしくはアンスラサイトでペイントした2カラーで展開。シマノ105完成車とカンパニョーロCENTAUR完成車で販売される。それでは、インプレッションに移ろう。
― インプレッション
「乗り心地の良さが光るサイクリングが楽しくなる1台」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
ひと漕ぎふた漕ぎしただけで分かるほど乗り心地が抜群に良いバイクに仕上がっています。それでいて走りも軽く、コンフォートバイクという方向の味付けではありません。速さ重視の性能ではないものの、乗っていて楽しい走りを見せてくれるので、特にロングライドを走ってみたいというエントリーライダーにこそマッチしそうな印象です。
細身のリアセクションとフロントフォークが良い感じにしなってくれるので、路面からの振動を上手い具合に吸収してくれています。それでいて思い切りパワーを駆けてもフレームがヨレることなく、ボリューム感や剛性感もきちんと持ち合わせていることで、気持ちよく進む走りを実現しているのだと思います。後輪の追従性も良く、バイクが跳ねてしまうようなこともありませんでした。
バイクの重量以上に登りの走りも軽く、アップダウンのある山道なども軽快に駆けていける性能も持っています。競技用途であればレースバイクのGALLIUMなどの方が走りにキレがあるかもしれませんが、エントリーモデルとして違う持ち味を持たせたことで、アルゴン18の中でも個性ある性格を獲得した1台と言えるでしょう。
カンパニョーロのCENTAURはレバーのフィット感も良いですし、ブレーキも十分な制動力を見せてくれるので、完成車で購入した時にコンポーネントで不満はないと思います。強いて言うならタイヤをハイエンドのものに変えると、より走りが洗練されてライドが楽しくなることでしょう。
日本ではまだマイナーブランドではありますが、バイクの設計や走りを見ると上手く作られておりメーカーの技術力が垣間見える自転車だと思います。フレームのペイントも他のレースモデルとはイメージを変えており、差別化の意思を感じますね。エントリーグレードと言えど侮れない性能で、ロングライドをメインにレースも走りたいという人にはベストなバイクとなりそうです。
「クセのない軽い走りが魅力、エントリーモデル以上の性能」小西裕介(なるしまフレンド)
まず”乗りやすい”というのが第一印象で、万人が気に入るだろう扱いやすさがありますね。クセもなく漕ぎ出しも軽いですし、ちょっと乗っただけでこのバイク走るなという感触を得ました。リアトライアングルの造形で振動吸収性を狙っているのでしょうが、快適性だけではないのがGO!の良いところです。乗り心地ばかり優先したエントリーモデルだと走りがもっさりしがちですが、そんなこともなく走りの性能と上手くバランスされているのが特徴だと思います。
走りのイメージが良かったのは登りですね。10km/h以下のゆっくりした速度から踏み込んでみても、すんなり加速してくれて軽快に登ってくれるんです。バイク自体は軽い訳ではありませんが、それだけに走りの軽さが際立つ印象です。パワーをかけたときの剛性感に不満もなく、これでエントリーグレードと言うならかなり出来の良い走りではないでしょうか。
高速域で大きな衝撃が来るようなシーンだとどうしてもバイクが跳ねてしまいますが、比較的ゆっくりめなスピードで巡航している分には振動吸収性は良く、快適なライドを楽しめる味付けだなと感じます。それでもまったり走るツーリングバイクというよりは、軽い走りを活かしてヒルクライムに挑戦するなどレース向きに使っても楽しめる1台になりそうです。
大トルクを掛けて伸びるような加速というような性格ではありませんが、軽めのギアで軽快に回していくペダリングだとフレームの持ち味を活かせるでしょう。コンフォート寄りな設計なのかもしれませんが、直進安定が強く出ていることもなく、むしろクイックな操作感があり、シッティングからダンシングへの移行もスムーズに行なえますね。
また個人的にはホイールをアップグレードしてみたいかなと。特にディープリムではなく、軽めのローハイトホイールに変えるとより登りでの走りの軽さが強調されることでしょう。レーシングブランドのアルゴン18だけに、このGO!もレースもこなせるポテンシャルも十分に持ち合わせているので、上手くバランスされた走りの良さを感じてもらいたいですね。
アルゴン18 GO!
カラー:Black/Electric Mint Gloss、Black Anthracite Matt
フレーム重量:1,190g
サイズ:XXS、XS、S、M
価 格:
シマノ105完成車 258,000円(税抜)
カンパニョーロCENTAUR完成車 270,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
小西裕介(なるしまフレンド)
なるしまフレンド神宮店メカニックチーフ。長年実業団登録選手として活躍し、国内トップレベルのレーサーとしてホビーレースで数多くの優勝経験を持つ。レース歴は20年以上に及び走れるスタッフとして信頼を集めながらも、メカニックの知識も豊富で走りからメカまで幅広いアドバイスをお客さんに提供する。脚質はサーキットコースを得意とするスピードマンだ。
CWレコメンドショップページ
なるしまフレンドHP
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。過去にはツール・ド・おきなわ市民200kmや、ジャパンカップオープンレースなどの国内ビックレースにて優勝を経験。2016年にはニセコクラシック年代別優勝も果たし、今なお衰えを知らない”最速店長”の一人である。
サイクルポイント オーベストFacebook
text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
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