2018/07/23(月) - 03:01
中央山塊を走る休息日前のツール・ド・フランス第15ステージは再び大集団が逃げ切り。1級山岳ピック・ド・ノールで絞り込まれ、下りで形成された3名によるスプリントでマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ)がアスタナにステージ2連勝をもたらした。
ミヨー橋の下を通過するプロトン photo:Luca Bettini
ツール・ド・フランス2018第15ステージ photo:A.S.O.
ツール・ド・フランス2018第15ステージ photo:A.S.O.
ピレネー到達前に、プロトンは中央山塊(マッシフサントラル)の南端に位置するノアール山脈を越える。スタート後すぐ「世界一高い橋」ミヨー橋の下をくぐり、休息の地であるカルカッソンヌまでカテゴリー3級、2級、1級のカテゴリー山岳をこなす。残り41km地点に位置する1級山岳ピック・ド・ノール(全長12.3km/平均6.3%)はツール初登場。この日は1日中ずっと西からの横風が吹き付けた。
前日に引き続いて逃げ切り向きのレイアウトはアタッカーたちの触手を大いに刺激した。ミヨー橋の直下に置かれた0km地点を通過すると同時にアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)やトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)がアタック。その後も断続的にアタック合戦が続き、最初の3級山岳をマイヨアポワのジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)が先頭通過した。
逃げグループもとい、大きな逃げ集団が形成されたのはレース開始から40kmが過ぎてから。2日連続逃げとなるマイヨヴェールのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)の他、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)やラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)といったオールラウンダーを含む28名が逃げ切り優勝への切符を手にした。
スタート前に話し込むマイヨヴェールのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)とマイヨジョーヌのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
橋の桁下は270mしかないので頭を下げて通るよう注意喚起 photo:Kei Tsuji
逃げ集団を形成するグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)ら photo:Kei Tsuji
チームスカイがメンバー全員で集団先頭に立つ photo:Kei Tsuji
総合争いに関係しないメンバーであるとして、2日連続でチームスカイは逃げ集団の先行を容認した。序盤のハイペースな展開にアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が遅れるシーンも見られたが、その後ペースを落としたメイン集団に復帰してタイムアウトを免れている。
タイム差がぐんぐんと広がりゆく中、ステージ中盤の2級山岳シエ峠でリリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)が逃げ集団の中からアタック。単独で2級山岳を越えて地元であるタルヌ県に入ったカルメジャーヌだったが、フィニッシュまで110kmを残した独走は得策ではないとして逃げ集団に戻っている。
タイム差が10分を超え、逃げ切りが濃厚となった逃げ集団の中から次に動いたのはファビアン・グルリエ(フランス、ディレクトエネルジー)とジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)の2人。フランス人が多く駆けつけた日曜日のコース沿道を盛り上げるようにフランス人が逃げる。
この日最後の難所である1級山岳ピック・ド・ノールの麓に設定されたスプリントポイント(121.5km地点)をベルナールとグルリエが先頭通過し、1分後方ではサガンがしっかりと3番手通過して15ポイントを獲得。サガンはその後メイン集団に吸収されてステージ上位入賞を逃したものの、ポイント賞2位アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)の実に3倍近いポイントを保持。マイヨヴェール着用日数を100日まで伸ばしている。
1級山岳ピック・ド・ノールを単独で登頂したラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji
マイカを追うセルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ)ら photo:Kei Tsuji
逃げグループを率いるマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ) photo:Kei Tsuji
メイン集団から飛び出したダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ) photo:Kei Tsuji
先頭のグルリエとベルナールは、追走グループに1分30秒、メイン集団に13分ものタイム差をつけて木々が生い茂った1級山岳ピック・ド・ノールを登っていく。急勾配区間を含む登りで追走グループからカウンターアタックを仕掛けたマイカがすぐさまグルリエとベルナールを追い抜いて先頭を奪った。
そのまま強風吹きすさぶ1級山岳ピック・ド・ノールの頂上をクリアしたマイカは、追走するモレマとコルトニールセンに30秒、カルメジャーヌやイサギレ、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)を含む追走グループから40秒のリードで下り区間へと突入する。チームスカイが支配したメイン集団からは総合10位ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)が単独アタックを成功させ、総合ライバルたちに1分差をつけて頂上を越えた。
長い下り区間で先頭マイカはリードを失い、結局フィニッシュまで14kmを残して先頭は8名に再編成される。時を同じくしてメイン集団から飛び出していたマーティンは吸収。結果的にメイン集団から抜け出す選手は生まれず、総合トップ10の選手たちはステージ優勝者から13分以上遅れてフィニッシュしている。
残り10kmを切ると先頭グループからはアタック合戦が始まる。ポッツォヴィーヴォらが果敢にアタックを仕掛けたが決まらず、残り6km地点でモレマ、コルトニールセン、イサギレの3名がライバルたちを振り切ることに成功。カルカッソンヌまで逃げ切った3名によるスプリントでステージ優勝争いは決着することに。
残り250mからイサギレが先に仕掛けたが、2016年ブエルタ・ア・エスパーニャの集団スプリントで2勝しているコルトニールセンのスプリントは圧倒的だった。デンマーク生まれの25歳が初出場のツールでステージ初優勝。アスタナに2日連続となる逃げ切りステージ優勝をもたらした。
強風が吹き付ける1級山岳ピック・ド・ノールを登るクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)ら photo:Kei Tsuji
1級山岳ピック・ド・ノールを登っていくメイン集団 photo:Kei Tsuji
3名によるスプリントに勝利したマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ) photo:Luca Bettini
13分以上遅れてフィニッシュするメイン集団 photo:Luca Bettini
獲得標高差が2,900mに達する中級山岳ステージで逃げ切り、シーズン3勝目を飾ったコルトニールセンは「初出場のツールで初優勝するなんて本当に嬉しい。今日はミケル・ヴァルグレンと一緒に逃げに乗って、彼と協調しながらうまく勝負に持ち込めた。ヤコブ・フルサングの総合成績と並行して開幕前から狙っていた2ステージで勝利するなんて。初出場のブエルタでステージ2勝した経験があるので、今回もチャンスがあると思っていた」とコメント。ともに逃げたヴァルグレンはステージ4位でフィニッシュしている。また、逃げ集団内で走行しながら、終盤に落車したセルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ)は肘を骨折。ステージ22位で完走しているが、パウェルスは第16ステージの欠場を決めている。
ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)がタイムを失うことなくタイムを得ることもなくマイヨジョーヌを守り、ツールは2回目の休息日を迎える。なお、この日はレース終了後にUCIコミッセールはジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)に失格処分を与えた。理由はスタート直後にモスコンがエリー・ジェスベール(フランス、フォルトゥネオ・オスカロ)を殴打したため。モスコンの失格については後ほど詳しくお伝えします。
アスタナに2連勝をもたらしたマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ) photo:Luca Bettini
マイヨジョーヌを守ったまま最終週に挑むゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Luca Bettini
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ピレネー到達前に、プロトンは中央山塊(マッシフサントラル)の南端に位置するノアール山脈を越える。スタート後すぐ「世界一高い橋」ミヨー橋の下をくぐり、休息の地であるカルカッソンヌまでカテゴリー3級、2級、1級のカテゴリー山岳をこなす。残り41km地点に位置する1級山岳ピック・ド・ノール(全長12.3km/平均6.3%)はツール初登場。この日は1日中ずっと西からの横風が吹き付けた。
前日に引き続いて逃げ切り向きのレイアウトはアタッカーたちの触手を大いに刺激した。ミヨー橋の直下に置かれた0km地点を通過すると同時にアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)やトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)がアタック。その後も断続的にアタック合戦が続き、最初の3級山岳をマイヨアポワのジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)が先頭通過した。
逃げグループもとい、大きな逃げ集団が形成されたのはレース開始から40kmが過ぎてから。2日連続逃げとなるマイヨヴェールのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)の他、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)やラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)といったオールラウンダーを含む28名が逃げ切り優勝への切符を手にした。
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総合争いに関係しないメンバーであるとして、2日連続でチームスカイは逃げ集団の先行を容認した。序盤のハイペースな展開にアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が遅れるシーンも見られたが、その後ペースを落としたメイン集団に復帰してタイムアウトを免れている。
タイム差がぐんぐんと広がりゆく中、ステージ中盤の2級山岳シエ峠でリリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)が逃げ集団の中からアタック。単独で2級山岳を越えて地元であるタルヌ県に入ったカルメジャーヌだったが、フィニッシュまで110kmを残した独走は得策ではないとして逃げ集団に戻っている。
タイム差が10分を超え、逃げ切りが濃厚となった逃げ集団の中から次に動いたのはファビアン・グルリエ(フランス、ディレクトエネルジー)とジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)の2人。フランス人が多く駆けつけた日曜日のコース沿道を盛り上げるようにフランス人が逃げる。
この日最後の難所である1級山岳ピック・ド・ノールの麓に設定されたスプリントポイント(121.5km地点)をベルナールとグルリエが先頭通過し、1分後方ではサガンがしっかりと3番手通過して15ポイントを獲得。サガンはその後メイン集団に吸収されてステージ上位入賞を逃したものの、ポイント賞2位アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)の実に3倍近いポイントを保持。マイヨヴェール着用日数を100日まで伸ばしている。
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先頭のグルリエとベルナールは、追走グループに1分30秒、メイン集団に13分ものタイム差をつけて木々が生い茂った1級山岳ピック・ド・ノールを登っていく。急勾配区間を含む登りで追走グループからカウンターアタックを仕掛けたマイカがすぐさまグルリエとベルナールを追い抜いて先頭を奪った。
そのまま強風吹きすさぶ1級山岳ピック・ド・ノールの頂上をクリアしたマイカは、追走するモレマとコルトニールセンに30秒、カルメジャーヌやイサギレ、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)を含む追走グループから40秒のリードで下り区間へと突入する。チームスカイが支配したメイン集団からは総合10位ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)が単独アタックを成功させ、総合ライバルたちに1分差をつけて頂上を越えた。
長い下り区間で先頭マイカはリードを失い、結局フィニッシュまで14kmを残して先頭は8名に再編成される。時を同じくしてメイン集団から飛び出していたマーティンは吸収。結果的にメイン集団から抜け出す選手は生まれず、総合トップ10の選手たちはステージ優勝者から13分以上遅れてフィニッシュしている。
残り10kmを切ると先頭グループからはアタック合戦が始まる。ポッツォヴィーヴォらが果敢にアタックを仕掛けたが決まらず、残り6km地点でモレマ、コルトニールセン、イサギレの3名がライバルたちを振り切ることに成功。カルカッソンヌまで逃げ切った3名によるスプリントでステージ優勝争いは決着することに。
残り250mからイサギレが先に仕掛けたが、2016年ブエルタ・ア・エスパーニャの集団スプリントで2勝しているコルトニールセンのスプリントは圧倒的だった。デンマーク生まれの25歳が初出場のツールでステージ初優勝。アスタナに2日連続となる逃げ切りステージ優勝をもたらした。
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獲得標高差が2,900mに達する中級山岳ステージで逃げ切り、シーズン3勝目を飾ったコルトニールセンは「初出場のツールで初優勝するなんて本当に嬉しい。今日はミケル・ヴァルグレンと一緒に逃げに乗って、彼と協調しながらうまく勝負に持ち込めた。ヤコブ・フルサングの総合成績と並行して開幕前から狙っていた2ステージで勝利するなんて。初出場のブエルタでステージ2勝した経験があるので、今回もチャンスがあると思っていた」とコメント。ともに逃げたヴァルグレンはステージ4位でフィニッシュしている。また、逃げ集団内で走行しながら、終盤に落車したセルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ)は肘を骨折。ステージ22位で完走しているが、パウェルスは第16ステージの欠場を決めている。
ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)がタイムを失うことなくタイムを得ることもなくマイヨジョーヌを守り、ツールは2回目の休息日を迎える。なお、この日はレース終了後にUCIコミッセールはジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)に失格処分を与えた。理由はスタート直後にモスコンがエリー・ジェスベール(フランス、フォルトゥネオ・オスカロ)を殴打したため。モスコンの失格については後ほど詳しくお伝えします。
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ツール・ド・フランス2018第15ステージ結果
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) | 62:49:47 |
2位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 0:01:39 |
3位 | トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) | 0:01:50 |
4位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) | 0:02:38 |
5位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) | 0:03:21 |
6位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | 0:03:42 |
7位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) | 0:03:57 |
8位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:04:23 |
9位 | ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) | 0:06:14 |
10位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ) | 0:06:54 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 452pts |
2位 | アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) | 170pts |
3位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 133pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) | 92pts |
2位 | ワレン・バルギル(フランス、フォルトゥネオ・サムシック) | 70pts |
3位 | セルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ) | 66pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール) | 63:07:15 |
2位 | ギヨーム・マルタン(フランス、ワンティ・グループゴベール) | 0:02:27 |
3位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) | 0:06:16 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 188:47:32 |
2位 | バーレーン・メリダ | 0:07:10 |
3位 | チームスカイ | 0:42:22 |
text&photo:Kei Tsuji in Carcassonne, France