2017/04/17(月) - 09:51
カウベルグがフィニッシュ前から姿を消しても、アムステルゴールドレースはアムステルゴールドレースだった。クウィアトコウスキーとのスプリント一騎打ちに持ち込んだフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)が自身4度目のアムステル勝利を果たした。
長年アムステルの勝負を決めていた名物カウベルグ(全長1.2km/平均5.8%)がフィニッシュ前から取り払われ、新たな展開を予感させた第52回アムステルゴールドレース(UCIワールドツアー)。「ジェットコースター」に例えられる261km(獲得標高差3,700m)のレースは、オランダ南部リンブルフ州の州都マーストリヒトをスタートした。
210km以上にわたって逃げたラース・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)やマッズウルス・シュミット(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)ら12名はフィニッシュまで45kmを残して吸収。そこから新しいレースが始まる。
登場する35ヶ所の上りのうち、29番目のクルイスベルグ(残り39km地点)でティエシー・ブノート(ベルギー、ロット・ソウダル)が加速するとビッグネームが動いた。ブノートのアタックに最も早く反応したのはジルベールとセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)で、ここにホン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)、ホセ・ロハス(スペイン、モビスター)、ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・スコット)、ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)、ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)が追い付いた。
こうして形成された強力な先頭ジルベールグループに対し、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)は後方の集団待機。BMCレーシングの集団牽引によって先頭ジルベールグループのリードが広がらないままレースは進む。「1000のカーブ」と呼ばれるほどの連続アップダウン&ワインディングコースでは、大会連覇がかかったエンリーコ・ガスパロット(イタリア、バーレーン・メリダ)やロマン・クロイツィゲル(チェコ、オリカ・スコット)が落車によって脱落した。
先頭グループとメイン集団のタイム差が縮まる中、32番目のケウテンベルグ(残り29km地点)でクウィアトコウスキーが集団内からカウンターアタックを仕掛け、そのまま先頭グループまでブリッジ成功。ブノートとリンデマンが脱落したため、ジルベール、エナオ、イサギレ、ロハス、アルバジーニ、ハース、クウィアトコウスキーの7名が先行する展開に。
これに対して後方ではヴァンアーヴェルマートやバルベルデがティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)やファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)、ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)、ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)、ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)とともに7名の追走グループを形成した。
先頭と追走のタイム差は拡大し、33番目のカウベルグを終えてタイム差は40秒に。追走グループにはマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)を含む集団が追いついたが、先頭グループとのタイム差は一向に縮まらなかった。
逃げ切りが確定的になった状態で迎えた最後のベメレルベルグ(全長800m/平均4.7%)。ここで動いたのは世界チャンピオン経験者の2人だった。クウィアトコウスキーのアタックにジルベールが反応し、そのまま2人が先行した状態でベメレルベルグの頂上をクリアする。クウィアトコウスキーのSTRAVAログによると、先頭の2人は平均スピード34km/hでベメレルベルグを駆け上がり、その先の6km平坦区間を50km/h前後で巡航している。
協調体制を築けない後続を振り切って、クウィアトコウスキーとジルベールが逃げ切った。カウベルグに向かう下りをショートカットし、平坦路を経て最終ストレートのレイクス通りに登場した元世界チャンピオンの2人。同じストレートで2年前にアムステル勝利を手にしているクウィアトコウスキーと、同じく5年前に世界タイトルを手にしているジルベールによるスプリント一騎打ちが始まった。
ジルベールに先行させ、番手をとったクウィアトコウスキーが残り300mのタイミングで腰を上げる。ミラノ〜サンレモでペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を下しているクウィアトコウスキーの戦略的なスプリント。一気に先頭に出たクウィアトコウスキーだったが、負けじと踏みなおしたベルギーチャンピオンが並び、前に出る。6時間半の攻防の最後に、ジルベールのスプリントが伸びた。
ジルベールが4本指を挙げてフィニッシュ。70年代から80年代にかけて通算5勝を飾ったヤン・ラース(オランダ)に次ぐ史上2人目となるアムステル4勝目(2010年、2011年、2014年、2017年)を飾った。かつてフィニッシュラインがカウベルグ頂上に引かれていた時代から、2度にわたってフィニッシュのレイアウトの変更が行われた今も、「カウベルグキング」と呼ばれるジルベールは強かった。
ロンド・ファン・フラーンデレンとアムステルの同年生はは1975年のエディ・メルクス(ベルギー)と1979年のヤン・ラース(オランダ)以来となる史上3人目の快挙。「アグレッシブに攻めたことが勝利につながった。自分の好きな展開で、パーフェクトな1日だった」と、ワロン生まれのベルギーチャンピオンは語る。
「例年よりも早くクルイスベルグでレースが動いた。そこで先頭グループに入った選手は勝利に値する走りだったと思う。強力なメンバーが揃ったおかげで逃げ切ることができた。最後のベメレルベルグで他の選手がリミットぎりぎりに見えたので、クウィアトコウスキーと飛び出したんだ。最後のスプリントで彼の早掛けに驚いたけど、向い風が吹いていたので落ち着いて踏み直し、追いついて追い抜いた」。ジルベールは3日後のラ・フレーシュ・ワロンヌにももちろん出場予定。2011年に果たしているアルデンヌ・クラシック3連勝の再現に期待がかかる。
ミラノ〜サンレモに続いて優勝スプリントに絡んだクウィアトコウスキーは「チームとしてモチベーション高くレースに挑み、セルジオルイス・エナオのサポートを得て良い展開に持ち込めたけど、満足のいく結果を得ることができなかった。偉大なチャンピオンであるフィリップ・ジルベールに敗れたということ以外何も言えない。彼の勝利を心から祝福したい」とジルベールを讃える。抜群の登坂力を見せたクウィアトコウスキーはラ・フレーシュ・ワロンヌとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも注目の存在だ。
アムステルゴールドレース2017
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) 6h31'40"
2位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)
3位 ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・スコット) +10"
4位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)
5位 ホセ・ロハス(スペイン、モビスター)
6位 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)
7位 ホン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) +14"
8位 ミヒャエル・ゴグル(オーストリア、トレック・セガフレード) +1'10"
9位 ソニー・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +1'11"
10位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)
DNF 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ)
DNF 別府史之(日本、トレック・セガフレード)
text:Kei Tsuji
photo:TDWsport
長年アムステルの勝負を決めていた名物カウベルグ(全長1.2km/平均5.8%)がフィニッシュ前から取り払われ、新たな展開を予感させた第52回アムステルゴールドレース(UCIワールドツアー)。「ジェットコースター」に例えられる261km(獲得標高差3,700m)のレースは、オランダ南部リンブルフ州の州都マーストリヒトをスタートした。
210km以上にわたって逃げたラース・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)やマッズウルス・シュミット(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)ら12名はフィニッシュまで45kmを残して吸収。そこから新しいレースが始まる。
登場する35ヶ所の上りのうち、29番目のクルイスベルグ(残り39km地点)でティエシー・ブノート(ベルギー、ロット・ソウダル)が加速するとビッグネームが動いた。ブノートのアタックに最も早く反応したのはジルベールとセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)で、ここにホン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)、ホセ・ロハス(スペイン、モビスター)、ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・スコット)、ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)、ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)が追い付いた。
こうして形成された強力な先頭ジルベールグループに対し、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)は後方の集団待機。BMCレーシングの集団牽引によって先頭ジルベールグループのリードが広がらないままレースは進む。「1000のカーブ」と呼ばれるほどの連続アップダウン&ワインディングコースでは、大会連覇がかかったエンリーコ・ガスパロット(イタリア、バーレーン・メリダ)やロマン・クロイツィゲル(チェコ、オリカ・スコット)が落車によって脱落した。
先頭グループとメイン集団のタイム差が縮まる中、32番目のケウテンベルグ(残り29km地点)でクウィアトコウスキーが集団内からカウンターアタックを仕掛け、そのまま先頭グループまでブリッジ成功。ブノートとリンデマンが脱落したため、ジルベール、エナオ、イサギレ、ロハス、アルバジーニ、ハース、クウィアトコウスキーの7名が先行する展開に。
これに対して後方ではヴァンアーヴェルマートやバルベルデがティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)やファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)、ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)、ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)、ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)とともに7名の追走グループを形成した。
先頭と追走のタイム差は拡大し、33番目のカウベルグを終えてタイム差は40秒に。追走グループにはマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)を含む集団が追いついたが、先頭グループとのタイム差は一向に縮まらなかった。
逃げ切りが確定的になった状態で迎えた最後のベメレルベルグ(全長800m/平均4.7%)。ここで動いたのは世界チャンピオン経験者の2人だった。クウィアトコウスキーのアタックにジルベールが反応し、そのまま2人が先行した状態でベメレルベルグの頂上をクリアする。クウィアトコウスキーのSTRAVAログによると、先頭の2人は平均スピード34km/hでベメレルベルグを駆け上がり、その先の6km平坦区間を50km/h前後で巡航している。
協調体制を築けない後続を振り切って、クウィアトコウスキーとジルベールが逃げ切った。カウベルグに向かう下りをショートカットし、平坦路を経て最終ストレートのレイクス通りに登場した元世界チャンピオンの2人。同じストレートで2年前にアムステル勝利を手にしているクウィアトコウスキーと、同じく5年前に世界タイトルを手にしているジルベールによるスプリント一騎打ちが始まった。
ジルベールに先行させ、番手をとったクウィアトコウスキーが残り300mのタイミングで腰を上げる。ミラノ〜サンレモでペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を下しているクウィアトコウスキーの戦略的なスプリント。一気に先頭に出たクウィアトコウスキーだったが、負けじと踏みなおしたベルギーチャンピオンが並び、前に出る。6時間半の攻防の最後に、ジルベールのスプリントが伸びた。
ジルベールが4本指を挙げてフィニッシュ。70年代から80年代にかけて通算5勝を飾ったヤン・ラース(オランダ)に次ぐ史上2人目となるアムステル4勝目(2010年、2011年、2014年、2017年)を飾った。かつてフィニッシュラインがカウベルグ頂上に引かれていた時代から、2度にわたってフィニッシュのレイアウトの変更が行われた今も、「カウベルグキング」と呼ばれるジルベールは強かった。
ロンド・ファン・フラーンデレンとアムステルの同年生はは1975年のエディ・メルクス(ベルギー)と1979年のヤン・ラース(オランダ)以来となる史上3人目の快挙。「アグレッシブに攻めたことが勝利につながった。自分の好きな展開で、パーフェクトな1日だった」と、ワロン生まれのベルギーチャンピオンは語る。
「例年よりも早くクルイスベルグでレースが動いた。そこで先頭グループに入った選手は勝利に値する走りだったと思う。強力なメンバーが揃ったおかげで逃げ切ることができた。最後のベメレルベルグで他の選手がリミットぎりぎりに見えたので、クウィアトコウスキーと飛び出したんだ。最後のスプリントで彼の早掛けに驚いたけど、向い風が吹いていたので落ち着いて踏み直し、追いついて追い抜いた」。ジルベールは3日後のラ・フレーシュ・ワロンヌにももちろん出場予定。2011年に果たしているアルデンヌ・クラシック3連勝の再現に期待がかかる。
ミラノ〜サンレモに続いて優勝スプリントに絡んだクウィアトコウスキーは「チームとしてモチベーション高くレースに挑み、セルジオルイス・エナオのサポートを得て良い展開に持ち込めたけど、満足のいく結果を得ることができなかった。偉大なチャンピオンであるフィリップ・ジルベールに敗れたということ以外何も言えない。彼の勝利を心から祝福したい」とジルベールを讃える。抜群の登坂力を見せたクウィアトコウスキーはラ・フレーシュ・ワロンヌとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも注目の存在だ。
アムステルゴールドレース2017
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) 6h31'40"
2位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)
3位 ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・スコット) +10"
4位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)
5位 ホセ・ロハス(スペイン、モビスター)
6位 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)
7位 ホン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) +14"
8位 ミヒャエル・ゴグル(オーストリア、トレック・セガフレード) +1'10"
9位 ソニー・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +1'11"
10位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)
DNF 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ)
DNF 別府史之(日本、トレック・セガフレード)
text:Kei Tsuji
photo:TDWsport
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