2016/08/22(月) - 08:10
ビーチリゾート地として知られるバヨナの街にやってきた大集団。ブエルタ第2ステージを締めくくる混戦のスプリントバトルを制したのはジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)だった。
ロードレース初日となる第2ステージはオウレンセをスタートする160.8kmのフラットステージ。前日のチームTTでも走った湖畔路を走り、ポルトガル国境の直ぐ近くを大西洋に向かって西進する。
ちょうどコースの真ん中に位置する3級山岳フォンテフリア峠(8.2km/平均3.2%)は今大会最初のカテゴリー山岳。先頭通過すればマイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)を獲得できるだけに、アタック合戦がスタート直後から繰り広げられた。
最高気温30度で、強い太陽光によって数字以上の暑さを感じさせる夏の日。幹線道路を進む集団からローラン・ピション(フランス、FDJ)、チェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・アルゴン18)、ブライアン・ノロー(フランス、ディレクトエネルジー)が飛び出すとメイン集団はスピードを落とした。最大4分のリードを得た先頭3名は足早に3級山岳フォンテフリア峠に向かう。
チームスカイのダビ・ロペスガルシア(スペイン)とイアン・ボズウェル(アメリカ)が長時間メイン集団の先頭に立ってペースメイク。レース中盤にかけてここにトレック・セガフレードとジャイアント・アルペシンも合流。全開で追えばすぐに捕まえてしまうような1分前後のタイム差で3級山岳フォンテフリア峠に差し掛かった。
ジリジリと太陽が照らす3級山岳の頂上では先頭3名によるスプリントが繰り広げられ、先頭通過したピションがマイヨモンターニャ着用の権利を得ている。ピションはこの日、マイヨモンターニャとマイヨコンビナーダ(複合賞ジャージ)、そして敢闘賞を総なめにした。
タイム差が1分と2分を行ったり来たりしながら、前週に発生したという大規模な火事によって黒焦げとなった山間部をレースは進行。タイム差が1分を切った残り40kmで次なる動きが生まれる。突如現れた急勾配の登り(カテゴリー無し)でベルギーチャンピオンがアタックを仕掛けた。
「一日中ずっとスローペースで煩わしかったので、チームの許可を得てアタック。ボーナスタイム3秒が設定されたスプリントポイントも近づいていたし、何かトライしたかったんだ」というフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)が単独でメイン集団から飛び出し、そのまま先頭3名をキャッチ。メイン集団から30秒ほどのタイム差を得て逃げ始める。
力強い走りを見せたジルベールはスペイン最大の漁港があるビーゴに設置されたスプリントポイントを先頭通過してみせたが、フレッシュなスプリンターが揃うメイン集団を振り切るには至らず、残り16km地点で引き戻される。続いて、隣国ポルトガルの北部出身で、連日多くのファンの声援を受けているティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ)が小さな丘を利用してアタック。しかし結局はこの動きも決定打を欠き、残り4kmで集団は一つに戻った。
数え切れないほど登場する車両減速用のバンプやロータリー、中央分離帯などのトラップを抜け、大集団がバイオナのフィニッシュラインに向けた海岸道路に入る。ロット・ソウダルやディメンションデータ、ジャイアント・アルペシン、ボーラ・アルゴン18のトレインが入り乱れ、落車も発生する混沌とした状態のまま残り1km。するとエティックス・クイックステップの3名がタイミングよく先頭に出た。
ゼネク・スティバル(チェコ)とイヴ・ランパート(ベルギー)にリードアウトされたメールスマンが、残り200mから始まる緩い左コーナーのイン側からスプリント。番手につけたクリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)を一気に引き離し、追いすがるミハエル・シュワルスマン(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)らを振り切ったメールスマンが勝利した。
前哨戦として知られるブエルタ・ア・ブルゴスで上位入賞を繰り返し、好調のまま挑んだブエルタでグランツール初勝利を飾ったメールスマン。好機をつかんだ30歳は「この数週間ずっと調子が上がり続けていた。だから良い結果を残せるという自信があったし、実際に最初の目標であるステージ優勝をこうして達成することができて安堵の気持ちに包まれている」と語る。
「確かに今年のブエルタにはトップスプリンターが出場していない。でもその分いろんな選手がチャンスを狙って競り合うから、ずっとレースのコントロールが難しくなるんだ。ナーバスでストレスフルなフィナーレになりがちだけど、今日は残り2kmからチームメイトが上手くスプリントに導いてくれた。残り800mでスティービー(スティバル)が先頭に立ち、残り400mから残り200kmまでイヴ(ランパート)の後ろでタイミングを待ち続けた。この勝利は素晴らしいチームワークの賜物だ」とメールスマン。エティックスは今季グランツールのステージ通算6勝目。メールスマンはブエルタでステージ優勝を飾った85人目のベルギー人選手となった。
スプリントに絡んだ新城幸也(ランプレ・メリダ)は最終ストレートで発生したライアン・アンダーソン(カナダ、ディレクトエネルジー)の落車の影響を受けて踏み切れずにステージ15位でフィニッシュ。また、ステージ4位に入ったミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)がチームメイトのピーター・ケノー(イギリス)からマイヨロホを受け継いでいる。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第2ステージ結果
1位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ) 4h16’39”
2位 ミハエル・シュワルスマン(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)
3位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、オリカ・バイクエクスチェンジ)
4位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)
5位 ヨナス・ファンへネヒテン(ベルギー、ロットNLユンボ)
6位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
7位 ニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、トレック・セガフレード)
8位 ヨナタン・レストレポ(コロンビア、カチューシャ)
9位 ジャンピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、BMCレーシング)
10位 ロレンソ・マンジン(フランス、FDJ)
15位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)
103位 別府史之(日本、トレック・セガフレード)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 4h47’16”
2位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
5位 サルヴァトーレ・プッチオ(イタリア、チームスカイ)
6位 ピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)
7位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
8位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)
9位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)
10位 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター)
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ) 25pts
2位 ミハエル・シュワルスマン(ドイツ、ボーラ・アルゴン18) 20pts
3位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、オリカ・バイクエクスチェンジ)16pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ローラン・ピション(フランス、FDJ) 3pts
2位 チャザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・アルゴン18) 2pts
3位 ブライアン・ノロー(フランス、ユーロップカー) 1pt
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ローラン・ピション(フランス、FDJ) 192pts
2位 ブライアン・ノロー(フランス、ユーロップカー) 213pts
チーム総合成績
1位 チームスカイ 13h20’34”
2位 モビスター
3位 オリカ・バイクエクスチェンジ +06”
text&photo:Kei Tsuji in Vigo, Spain
ロードレース初日となる第2ステージはオウレンセをスタートする160.8kmのフラットステージ。前日のチームTTでも走った湖畔路を走り、ポルトガル国境の直ぐ近くを大西洋に向かって西進する。
ちょうどコースの真ん中に位置する3級山岳フォンテフリア峠(8.2km/平均3.2%)は今大会最初のカテゴリー山岳。先頭通過すればマイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)を獲得できるだけに、アタック合戦がスタート直後から繰り広げられた。
最高気温30度で、強い太陽光によって数字以上の暑さを感じさせる夏の日。幹線道路を進む集団からローラン・ピション(フランス、FDJ)、チェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・アルゴン18)、ブライアン・ノロー(フランス、ディレクトエネルジー)が飛び出すとメイン集団はスピードを落とした。最大4分のリードを得た先頭3名は足早に3級山岳フォンテフリア峠に向かう。
チームスカイのダビ・ロペスガルシア(スペイン)とイアン・ボズウェル(アメリカ)が長時間メイン集団の先頭に立ってペースメイク。レース中盤にかけてここにトレック・セガフレードとジャイアント・アルペシンも合流。全開で追えばすぐに捕まえてしまうような1分前後のタイム差で3級山岳フォンテフリア峠に差し掛かった。
ジリジリと太陽が照らす3級山岳の頂上では先頭3名によるスプリントが繰り広げられ、先頭通過したピションがマイヨモンターニャ着用の権利を得ている。ピションはこの日、マイヨモンターニャとマイヨコンビナーダ(複合賞ジャージ)、そして敢闘賞を総なめにした。
タイム差が1分と2分を行ったり来たりしながら、前週に発生したという大規模な火事によって黒焦げとなった山間部をレースは進行。タイム差が1分を切った残り40kmで次なる動きが生まれる。突如現れた急勾配の登り(カテゴリー無し)でベルギーチャンピオンがアタックを仕掛けた。
「一日中ずっとスローペースで煩わしかったので、チームの許可を得てアタック。ボーナスタイム3秒が設定されたスプリントポイントも近づいていたし、何かトライしたかったんだ」というフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)が単独でメイン集団から飛び出し、そのまま先頭3名をキャッチ。メイン集団から30秒ほどのタイム差を得て逃げ始める。
力強い走りを見せたジルベールはスペイン最大の漁港があるビーゴに設置されたスプリントポイントを先頭通過してみせたが、フレッシュなスプリンターが揃うメイン集団を振り切るには至らず、残り16km地点で引き戻される。続いて、隣国ポルトガルの北部出身で、連日多くのファンの声援を受けているティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ)が小さな丘を利用してアタック。しかし結局はこの動きも決定打を欠き、残り4kmで集団は一つに戻った。
数え切れないほど登場する車両減速用のバンプやロータリー、中央分離帯などのトラップを抜け、大集団がバイオナのフィニッシュラインに向けた海岸道路に入る。ロット・ソウダルやディメンションデータ、ジャイアント・アルペシン、ボーラ・アルゴン18のトレインが入り乱れ、落車も発生する混沌とした状態のまま残り1km。するとエティックス・クイックステップの3名がタイミングよく先頭に出た。
ゼネク・スティバル(チェコ)とイヴ・ランパート(ベルギー)にリードアウトされたメールスマンが、残り200mから始まる緩い左コーナーのイン側からスプリント。番手につけたクリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)を一気に引き離し、追いすがるミハエル・シュワルスマン(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)らを振り切ったメールスマンが勝利した。
前哨戦として知られるブエルタ・ア・ブルゴスで上位入賞を繰り返し、好調のまま挑んだブエルタでグランツール初勝利を飾ったメールスマン。好機をつかんだ30歳は「この数週間ずっと調子が上がり続けていた。だから良い結果を残せるという自信があったし、実際に最初の目標であるステージ優勝をこうして達成することができて安堵の気持ちに包まれている」と語る。
「確かに今年のブエルタにはトップスプリンターが出場していない。でもその分いろんな選手がチャンスを狙って競り合うから、ずっとレースのコントロールが難しくなるんだ。ナーバスでストレスフルなフィナーレになりがちだけど、今日は残り2kmからチームメイトが上手くスプリントに導いてくれた。残り800mでスティービー(スティバル)が先頭に立ち、残り400mから残り200kmまでイヴ(ランパート)の後ろでタイミングを待ち続けた。この勝利は素晴らしいチームワークの賜物だ」とメールスマン。エティックスは今季グランツールのステージ通算6勝目。メールスマンはブエルタでステージ優勝を飾った85人目のベルギー人選手となった。
スプリントに絡んだ新城幸也(ランプレ・メリダ)は最終ストレートで発生したライアン・アンダーソン(カナダ、ディレクトエネルジー)の落車の影響を受けて踏み切れずにステージ15位でフィニッシュ。また、ステージ4位に入ったミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)がチームメイトのピーター・ケノー(イギリス)からマイヨロホを受け継いでいる。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第2ステージ結果
1位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ) 4h16’39”
2位 ミハエル・シュワルスマン(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)
3位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、オリカ・バイクエクスチェンジ)
4位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)
5位 ヨナス・ファンへネヒテン(ベルギー、ロットNLユンボ)
6位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
7位 ニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、トレック・セガフレード)
8位 ヨナタン・レストレポ(コロンビア、カチューシャ)
9位 ジャンピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、BMCレーシング)
10位 ロレンソ・マンジン(フランス、FDJ)
15位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)
103位 別府史之(日本、トレック・セガフレード)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 4h47’16”
2位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
5位 サルヴァトーレ・プッチオ(イタリア、チームスカイ)
6位 ピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)
7位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
8位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)
9位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)
10位 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター)
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ) 25pts
2位 ミハエル・シュワルスマン(ドイツ、ボーラ・アルゴン18) 20pts
3位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、オリカ・バイクエクスチェンジ)16pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ローラン・ピション(フランス、FDJ) 3pts
2位 チャザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・アルゴン18) 2pts
3位 ブライアン・ノロー(フランス、ユーロップカー) 1pt
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ローラン・ピション(フランス、FDJ) 192pts
2位 ブライアン・ノロー(フランス、ユーロップカー) 213pts
チーム総合成績
1位 チームスカイ 13h20’34”
2位 モビスター
3位 オリカ・バイクエクスチェンジ +06”
text&photo:Kei Tsuji in Vigo, Spain