2016/04/28(木) - 14:23
「北の地獄」の異名をとるパリ~ルーベを走ったプロバイクを紹介する。オリカ・グリーンエッジら7チームが行った石畳対策に注目したい。
オリカ・グリーンエッジ【スコット Foil Team Issue、Solace Team Issue、Addict Team Issue】
ベテランのマシュー・ヘイマン(オリカ・グリーンエッジ)がキャリア最大の勝利を飾ったオリカ・グリーンエッジ。スコットのサポートを受けるため多くのライダーがエンデュランスロードである「Solace Team Issue(リムブレーキモデル)」を選択した一方、ヘイマンはエアロロード「Foil Team Issue」を使用した。これは、石畳での振動吸収性よりも、舗装路での巡航性を重要視したためだろう。
各チームがこぞって石畳対策を講じることで有名なパリ〜ルーベだが、ヘイマンのバイクに施された石畳対策はごくわずかで、28mm幅のタイヤとボトルケージの2点のみ。普段よりも大きなインナーチェーンリングもパリ~ルーベならではのセットアップといえよう。
コンポーネントはシマノDURA-ACE Di2で、ホイールはシマノWH-9000-C50-TU。今回の勝利でエアロフレーム+エアロホイールという組み合わせは後年パリ〜ルーベのスタンダードとなるのだろうか?組みわせるタイヤはコンチネンタルCOMPETITION PROLTDで、幅は28mmだ。
ハンドルはPROのアルミモデルで、ステムとシートポストはFOILの専用品。サドはフィジークAntaresで、普段通りにカーボンレール仕様のものが装着されていた。バーテープの巻き方は普段通りで、2重巻きにしたり、ゲルパッドを巻き込むといった振動対策は行われていないように見える。ボトルケージはホールド力の高さに定評のあるエリートのCANNIBALに変更されていた。
ジャイアント・アルペシン【ジャイアント DEFY ADVANCED SL】
ジャイアント・アルペシンは、エンデュランスバイク「DEFY ADVANCED SL」を使用した。レース前の試走ではスルーアクスルとフラットマウントブレーキを装備するプロトタイプをテストしていたが、実際のレースでは昨年大会のウィニングバイクでもある旧型を駆った。上記したヘイマンのバイクとは異なり、バイクには多くの石畳対策が施されている。
コンポーネントはシマノDURA-ACE Di2をメインとするが、ブレーキのみ「SHIMANO」と書かれたグレード不明の製品(構造を見るに105だろうか)を使用している。恐らくこの機材選択にはアーチサイズが関係しているようで、DURA-ACEよりも105のほうがアーチサイズが2mmほど大きい。これによってタイヤとブレーキキャリパー本体のクリアランスを広げているものと思われる。また、ブレーキワイヤーには、BB裏取り付けタイプのダイレクトマウントブレーキと併用するクイックリリースを取り付けている。
ホイールはシマノWH-9000で、多くのライダーが35mmハイトを選択。組み合わるタイヤはヴィットリアのプロトタイプで、センターは進行方向に溝が切ってあり、サイドは杉目という、現行ラインアップには存在しないトレッドパターンを持つもの。幅は30mmで、パリ~ルーベ出場チームの中でも最もワイドサイズだ。
ハンドル、ステム、サドルはPROで統一。写真のバート・デバッカー(ベルギー)のバイクには、バーテープがエンドからステムクランプ部まで巻かれていた。ボトルケージはエリートの定番モデルであり、そのホールド力からパリ~ルーベでは高い使用率を誇る「CIUSSI GEL」だ。
アスタナ【スペシャライズド S-WOKS ROUBAIX、S-WORKS TARMAC】
アスタナのエースであり、今回のパリ~ルーベでも優勝候補に1人と目されていたラース・ボーム(オランダ)。今大会ではS-WORKS TARMACでスタートし舗装路が続く前半を走り、石畳が登場する後半にはエンデュランスモデルのS-WOKS ROUBAIXに乗り換えていた。
また、使用する場面に合わせてタイヤのセットアップも変更している。TARMACには25mm程度のS-WORKS TURBOを、ROUBAIXにはコットンケーシングを使う北のクラシック用特別タイヤ(幅は28mm)が装着されていた。
コンポーネントは電子式のカンパニョーロ SUPERRECORD EPSで統一しており、パワーメーターはクランク式のSRMとしている。ホイールはフレンチブランドのコリマで、選手によって数種類のハイトを使い分けた。ハンドル、ステム、シートポストはFSAで、TARMACには剛性を重視してか廉価帯のアルミハンドルを装着していた。その他、サドルはスペシャライズドのPOWER、ペダルはルックKEO、ボトルケージはタックスDevaとしている。
BMCレーシング【BMC Granfondo RBX】
昨年に引き続き、今年のパリ~ルーベでもBMCレーシングはスペシャルマシン「Granfondo RBX」を投入した。このバイクはエンデュランスモデル「Granfondo GF01」をベースとしており、素材やレイアップ、ジオメトリーをそのままに、最大30mm幅のタイヤを装着できるようクリアランスを拡大したモデルだコンポーネントはシマノDURA-ACE Di2で、パワーメーターはクランク式のSRMとしている。
ホイールは全選手がシマノWH-9000-C50-TUを使用した。組み合わせるタイヤは、サポートを受けるコンチネンタルではなく、ロゴのない別ブランドの製品。トレッドパターンから判断するにDUGASTのようだ。ハンドルとステムは3Tで、フレームのアップライトなジオメトリーに合わせて、長いステムが多く使用されていた。その他、サドルはチームカラーのフィジーク、ボトルケージはエリートCIUSSI GEL。
カチューシャ【キャニオン AEROAD CF SLX、ULTIMATE CF SLX】
振動吸収性を強化したエンデュランスバイクを投入するチームが多い中、カチューシャの機材は普段とほとんど変わらない。エースのアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)を始めとした多くのライダーがエアロロードの「AEROAD CF SLX」を使用する一方で、パリ~ルーベ出場メンバーの中ではミカエル・モルコフだけが軽量オールラウンドモデルの「ULTIMATE CF SLX」を選択した。石畳対策のためのパーツアッセンブルは、タイヤとボトルケージの2点とわずかだ。
コンポーネントは無線変速のスラム RED eTapだが、スラムはダイレクトマウントブレーキを製造していないことから、AEROAD CF SLXにはシマノDURA-ACEのブレーキが取り付けられていた。パワーメーターはクランク式のクォークとしている。
ホイールはスラム系列のジップで、多くのライダーが45mmハイトの303を選択している。組み合わせるタイヤは、サポートを受けるコンチネンタルではなく、ロゴを消したFMBのParis Roubaixで、幅は27mm(モルコフのみコンチネンタルを使用)。ステムとステムはキャニオン製で、サドルはセライタリア、ボトルケージは定番のエリートCIUSSI GELだ。
コフィディス【オルベア ORCA OMR】
長い歴史を持つフランスチームのコフィディスが使うのはスペイン・バスク地方を拠点とするオルベア。チームのメインバイクは軽量オールラウンドモデルの「ORCA OMP」で、パリ~ルーベでも全ライダーが同モデルを駆った。パリ~ルーベのためのスペシャルセットアップは、これでもかと言わんばかりに太く巻かれたバーテープと、ブレーキのサブレバー、大きなインナーチェーンリング、ボトルケージに貼られた紙やすりの様な滑り止めの4点だ。
アッセンブルでの特徴は、FSAのサポートを受けることから、FSAとヴィジョンのパーツを多用すること。コンポーネントはシマノDURA-ACE Di2をメインとしつつ、カーボンクランクはSRMのパワーメーターを搭載するK-Force、ブレーキはSL-Kとしている。ホイールはヴィジョンのMetronシリーズで、多くのライダーが40mmハイトを選択。タイヤはKENDA SCと表記があるものの、ヴィットリアのCORSA CX(旧型)とうり二つ。
ハンドル、ステム、シートポストもFSAで統一されており、カーボン製のハイエンドモデルであるK-Forceが多く使用されていた。その他、サドルとバーテープはセライタリア、ペダルはルックKEO、ボトルケージはタックスDeva。
デルコ・マルセイユ・プロヴェンス【KTM REVELATOR MASTER】
ワイルドカードとしてパリ~ルーベに出場した地元フランスのプロコンチネンタルチーム、デルコ・マルセイユ・プロヴェンス。バイクはオーストリアを拠点とするKTMから供給を受けている。
日本国内ではオートバイで知られるKTMだが、ヨーロッパでは自転車部門も大規模に展開しており、ロード、MTB、トレッキング、E-Bikeとあらゆる車種を網羅する総合バイクブランドだ。チームがパリ~ルーベで駆ったのは快適性に長ける「REVELATOR MASTER」で、ややアップライトなジオメトリーや、突き出しが大きなシートチューブといった特徴を持つ。
コンポーネントには機械式のスラム RED22を採用する。足まわりはコリマホイールにシュワルベタイヤという組み合わせ。唯一といってもいい石畳対策はタイヤで、多くのライダーが、FMBのコットンケーシングにシュワルベONEのコンパウンドを重ねたプロ供給専用モデルを使用したと同時に、数台のバイクにはチューブレスタイヤが取り付けられていたという。ハンドルとステムはリッチーで、サドル、シートポスト、バーテープはフィジークで統一。ボトルとケージはゼファールで、ペダルはタイムXpressoだ。
photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
オリカ・グリーンエッジ【スコット Foil Team Issue、Solace Team Issue、Addict Team Issue】
ベテランのマシュー・ヘイマン(オリカ・グリーンエッジ)がキャリア最大の勝利を飾ったオリカ・グリーンエッジ。スコットのサポートを受けるため多くのライダーがエンデュランスロードである「Solace Team Issue(リムブレーキモデル)」を選択した一方、ヘイマンはエアロロード「Foil Team Issue」を使用した。これは、石畳での振動吸収性よりも、舗装路での巡航性を重要視したためだろう。
各チームがこぞって石畳対策を講じることで有名なパリ〜ルーベだが、ヘイマンのバイクに施された石畳対策はごくわずかで、28mm幅のタイヤとボトルケージの2点のみ。普段よりも大きなインナーチェーンリングもパリ~ルーベならではのセットアップといえよう。
コンポーネントはシマノDURA-ACE Di2で、ホイールはシマノWH-9000-C50-TU。今回の勝利でエアロフレーム+エアロホイールという組み合わせは後年パリ〜ルーベのスタンダードとなるのだろうか?組みわせるタイヤはコンチネンタルCOMPETITION PROLTDで、幅は28mmだ。
ハンドルはPROのアルミモデルで、ステムとシートポストはFOILの専用品。サドはフィジークAntaresで、普段通りにカーボンレール仕様のものが装着されていた。バーテープの巻き方は普段通りで、2重巻きにしたり、ゲルパッドを巻き込むといった振動対策は行われていないように見える。ボトルケージはホールド力の高さに定評のあるエリートのCANNIBALに変更されていた。
ジャイアント・アルペシン【ジャイアント DEFY ADVANCED SL】
ジャイアント・アルペシンは、エンデュランスバイク「DEFY ADVANCED SL」を使用した。レース前の試走ではスルーアクスルとフラットマウントブレーキを装備するプロトタイプをテストしていたが、実際のレースでは昨年大会のウィニングバイクでもある旧型を駆った。上記したヘイマンのバイクとは異なり、バイクには多くの石畳対策が施されている。
コンポーネントはシマノDURA-ACE Di2をメインとするが、ブレーキのみ「SHIMANO」と書かれたグレード不明の製品(構造を見るに105だろうか)を使用している。恐らくこの機材選択にはアーチサイズが関係しているようで、DURA-ACEよりも105のほうがアーチサイズが2mmほど大きい。これによってタイヤとブレーキキャリパー本体のクリアランスを広げているものと思われる。また、ブレーキワイヤーには、BB裏取り付けタイプのダイレクトマウントブレーキと併用するクイックリリースを取り付けている。
ホイールはシマノWH-9000で、多くのライダーが35mmハイトを選択。組み合わるタイヤはヴィットリアのプロトタイプで、センターは進行方向に溝が切ってあり、サイドは杉目という、現行ラインアップには存在しないトレッドパターンを持つもの。幅は30mmで、パリ~ルーベ出場チームの中でも最もワイドサイズだ。
ハンドル、ステム、サドルはPROで統一。写真のバート・デバッカー(ベルギー)のバイクには、バーテープがエンドからステムクランプ部まで巻かれていた。ボトルケージはエリートの定番モデルであり、そのホールド力からパリ~ルーベでは高い使用率を誇る「CIUSSI GEL」だ。
アスタナ【スペシャライズド S-WOKS ROUBAIX、S-WORKS TARMAC】
アスタナのエースであり、今回のパリ~ルーベでも優勝候補に1人と目されていたラース・ボーム(オランダ)。今大会ではS-WORKS TARMACでスタートし舗装路が続く前半を走り、石畳が登場する後半にはエンデュランスモデルのS-WOKS ROUBAIXに乗り換えていた。
また、使用する場面に合わせてタイヤのセットアップも変更している。TARMACには25mm程度のS-WORKS TURBOを、ROUBAIXにはコットンケーシングを使う北のクラシック用特別タイヤ(幅は28mm)が装着されていた。
コンポーネントは電子式のカンパニョーロ SUPERRECORD EPSで統一しており、パワーメーターはクランク式のSRMとしている。ホイールはフレンチブランドのコリマで、選手によって数種類のハイトを使い分けた。ハンドル、ステム、シートポストはFSAで、TARMACには剛性を重視してか廉価帯のアルミハンドルを装着していた。その他、サドルはスペシャライズドのPOWER、ペダルはルックKEO、ボトルケージはタックスDevaとしている。
BMCレーシング【BMC Granfondo RBX】
昨年に引き続き、今年のパリ~ルーベでもBMCレーシングはスペシャルマシン「Granfondo RBX」を投入した。このバイクはエンデュランスモデル「Granfondo GF01」をベースとしており、素材やレイアップ、ジオメトリーをそのままに、最大30mm幅のタイヤを装着できるようクリアランスを拡大したモデルだコンポーネントはシマノDURA-ACE Di2で、パワーメーターはクランク式のSRMとしている。
ホイールは全選手がシマノWH-9000-C50-TUを使用した。組み合わせるタイヤは、サポートを受けるコンチネンタルではなく、ロゴのない別ブランドの製品。トレッドパターンから判断するにDUGASTのようだ。ハンドルとステムは3Tで、フレームのアップライトなジオメトリーに合わせて、長いステムが多く使用されていた。その他、サドルはチームカラーのフィジーク、ボトルケージはエリートCIUSSI GEL。
カチューシャ【キャニオン AEROAD CF SLX、ULTIMATE CF SLX】
振動吸収性を強化したエンデュランスバイクを投入するチームが多い中、カチューシャの機材は普段とほとんど変わらない。エースのアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)を始めとした多くのライダーがエアロロードの「AEROAD CF SLX」を使用する一方で、パリ~ルーベ出場メンバーの中ではミカエル・モルコフだけが軽量オールラウンドモデルの「ULTIMATE CF SLX」を選択した。石畳対策のためのパーツアッセンブルは、タイヤとボトルケージの2点とわずかだ。
コンポーネントは無線変速のスラム RED eTapだが、スラムはダイレクトマウントブレーキを製造していないことから、AEROAD CF SLXにはシマノDURA-ACEのブレーキが取り付けられていた。パワーメーターはクランク式のクォークとしている。
ホイールはスラム系列のジップで、多くのライダーが45mmハイトの303を選択している。組み合わせるタイヤは、サポートを受けるコンチネンタルではなく、ロゴを消したFMBのParis Roubaixで、幅は27mm(モルコフのみコンチネンタルを使用)。ステムとステムはキャニオン製で、サドルはセライタリア、ボトルケージは定番のエリートCIUSSI GELだ。
コフィディス【オルベア ORCA OMR】
長い歴史を持つフランスチームのコフィディスが使うのはスペイン・バスク地方を拠点とするオルベア。チームのメインバイクは軽量オールラウンドモデルの「ORCA OMP」で、パリ~ルーベでも全ライダーが同モデルを駆った。パリ~ルーベのためのスペシャルセットアップは、これでもかと言わんばかりに太く巻かれたバーテープと、ブレーキのサブレバー、大きなインナーチェーンリング、ボトルケージに貼られた紙やすりの様な滑り止めの4点だ。
アッセンブルでの特徴は、FSAのサポートを受けることから、FSAとヴィジョンのパーツを多用すること。コンポーネントはシマノDURA-ACE Di2をメインとしつつ、カーボンクランクはSRMのパワーメーターを搭載するK-Force、ブレーキはSL-Kとしている。ホイールはヴィジョンのMetronシリーズで、多くのライダーが40mmハイトを選択。タイヤはKENDA SCと表記があるものの、ヴィットリアのCORSA CX(旧型)とうり二つ。
ハンドル、ステム、シートポストもFSAで統一されており、カーボン製のハイエンドモデルであるK-Forceが多く使用されていた。その他、サドルとバーテープはセライタリア、ペダルはルックKEO、ボトルケージはタックスDeva。
デルコ・マルセイユ・プロヴェンス【KTM REVELATOR MASTER】
ワイルドカードとしてパリ~ルーベに出場した地元フランスのプロコンチネンタルチーム、デルコ・マルセイユ・プロヴェンス。バイクはオーストリアを拠点とするKTMから供給を受けている。
日本国内ではオートバイで知られるKTMだが、ヨーロッパでは自転車部門も大規模に展開しており、ロード、MTB、トレッキング、E-Bikeとあらゆる車種を網羅する総合バイクブランドだ。チームがパリ~ルーベで駆ったのは快適性に長ける「REVELATOR MASTER」で、ややアップライトなジオメトリーや、突き出しが大きなシートチューブといった特徴を持つ。
コンポーネントには機械式のスラム RED22を採用する。足まわりはコリマホイールにシュワルベタイヤという組み合わせ。唯一といってもいい石畳対策はタイヤで、多くのライダーが、FMBのコットンケーシングにシュワルベONEのコンパウンドを重ねたプロ供給専用モデルを使用したと同時に、数台のバイクにはチューブレスタイヤが取り付けられていたという。ハンドルとステムはリッチーで、サドル、シートポスト、バーテープはフィジークで統一。ボトルとケージはゼファールで、ペダルはタイムXpressoだ。
photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
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