2016/01/22(金) - 18:24
10名の小集団スプリントに続いて、70名の大集団スプリントでもそのスピードは他を圧倒した。リーダージャージを着るサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が2日連続のスプリント勝利。4度目の大会制覇を狙うゲランスが総合リードを得てクイーンステージに挑むことに。
後半戦に突入したツアー・ダウンアンダー。第4ステージはアデレード市内のノーウッドから丘陵地帯を抜けてビクターハーバーに至る138km。ビクターハーバーはその名の通り港町で、グレートオーストラリア湾に突き出たフルリオ半島の根本にあり、海風の影響を大きく受けることで知られている。
過去にビクターハーバーにフィニッシュするステージでは強風による集団分裂も発生しているが、幸いこの日の海風は旗を優しく揺らす程度だった。なお、この日の南オーストラリア州には雷を伴った嵐の予報が出ており、実際にアデレード市内はあちこちで冠水が発生するほどの激しい雨と雹、雷に見舞われたが、ビクターハーバーを含めたコースは奇跡的と言っていいほどドライな状態が保たれた。
大きな山岳が存在しないツアー・ダウンアンダーにおいて、総合争いに大きく影響するのがスプリントポイントとフィニッシュに設定されたボーナスタイムだ。スタート後すぐに始まったアタック合戦は延々と続き、オリカ・グリーンエッジがメイン集団を一つにまとめた状態で27km地点のスプリントポイントに到着。狙い通りのスプリントで先着したゲランスが貴重なボーナスタイム3秒を獲得している。
スプリントポイント通過後、ペースが緩んだメイン集団からデーヴィッド・タナー(オーストラリア、IAMサイクリング)、アレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)、パトリック・レーン(オーストラリア、UniSAオーストラリア)の3名が飛び出してようやくレースは落ち着きを見せる。序盤からのアップダウンで遅れた選手たちが復帰したことを確認してメイン集団がペースを戻した頃には、先頭3名のリードは5分を超えていた。
丘陵地帯を抜けて平野部に出たメイン集団は徐々にペースを上げて先頭3名のリードを削っていく。結局メイン集団は先頭3名を泳がすことなく残り24km地点で吸収。ステージ優勝争いを大きく左右するKOMクローズネスト(登坂距離3.9km/平均勾配6%)の登りに差し掛かった。
残り20km地点で頂上を迎えるKOMクローズネストでは、アグレッシブなアタックこそ見られないものの、ピュアスプリンターをはじめとする多くの選手が脱落。BMCレーシングのペースアップによってメイン集団は半分にまで縮小する。
頂上手前でペースを上げたリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)に反応する形でセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)が先行し、そのまま頂上を先頭通過して山岳賞のリード拡大に成功。チームスカイのエースを担うエナオモントーヤは「コロンビア人にとって山岳は特別な存在。チャンスがあったからポイントを狙ってみた」と語っている。
ビクターハーバーに向かう下りでリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)やヘスス・エラーダ(スペイン、モビスター)がそれぞれ奇襲アタックを仕掛けたが決まらず、チームスカイがベン・スウィフト(イギリス)のためにトレインを発進させる。チームスカイ先頭のまま、約70名に絞られたメイン集団が残り1kmアーチを駆け抜けた。
スウィフトをリードアウトするゲラント・トーマス(イギリス)に対抗して、ゲランスをリードアウトするダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)が前に出る。周りをブロックされて踏み出しが遅れたスウィフトの前で、ゲランスがスプリントを開始した。
スウィフトとジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)がゲランスを追撃したものの、コーナー内側、フェンス際の最短ラインを突き進んだゲランスが先頭を譲らない。山岳でクライマーと肩を並べる登坂力を発揮するゲランスが、平坦路でスプリンターたちを振り切った。
チームメイトとひとしきり喜び合った後、「信じられないほど素晴らしい」という言葉でインタビューをスタートさせたゲランス。ステージ2連勝を飾るとともに、ボーナスタイムを上乗せすることに成功した。
「周到に準備してきたとは言え、ピュアスプリンターたち相手に2連勝を飾るなんて。自分も含めて全員が驚くような、そんなスリル満点の勝利だった。ダウンアンダーには何度も出場しているので、フィニッシュのレイアウトは分かっていたし、ダリル(インピー)のリードアウトも素晴らしかった」と、ビクターハーバーに集まった大勢の観客を沸かせたゲランスは語る。
KOMウィランガヒル(登坂距離2.9km/平均勾配7.4%)の山頂フィニッシュが設定されたクイーンステージを前に、ゲランスは総合2位マッカーシーから14秒、総合3位デニスから26秒のリード。オリカ・グリーンエッジのマシュー・ホワイト監督は「まだ戦いは終わっていないし、ボーナスタイムで逆転も起こり得る。仮に明日誰か(マッカーシー)がゲロ(ゲランス)を4秒以上引き離してステージ優勝すれば順位が入れ替わる。最終日にボーナスタイムで動くことも有り得るんだ」と、ステージ優勝した喜びを感じさせない冷静なトーンで語る。
4度目の大会制覇に向けて順調にレースを進めるゲランスに対し、防戦気味となっているのがBMCレーシング。山岳で軽快な走りを見せているポートは「明日のウィランガヒルで勝負が決まる。世界を代表するような厳しい登りではないので大きなタイム差を付けるのは難しいけど、明日はチームとしてトライしたい。ゲランスのリードは大きいものの、まだまだゲームオーバーじゃない」とコメント。ウィランガヒルではポートとデニスのBMCコンビがゲランスに勝負を挑む。
ツアー・ダウンアンダー2016第4ステージ結果
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 3h13’59”
2位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
3位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)
4位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)
5位 リー・ハワード(オーストラリア、IAMサイクリング)
6位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)
7位 セルゲイ・ラグティン(ロシア、カチューシャ)
8位 アレクセイ・ツァテヴィツク(ロシア、カチューシャ)
9位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)
10位 エンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)
個人総合成績
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 13h41’58”
2位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ) +14”
3位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) +26”
4位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ) +28”
5位 スティーブ・モラビート(スイス、FDJ)
6位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)
7位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
8位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール) +32”
9位 ラファエル・バルス(スペイン、ロット・ソウダル) +36”
10位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)
スプリント賞
ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)
山岳賞
セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
ヤングライダー賞
ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)
チーム総合成績
キャノンデール
敢闘賞
デーヴィッド・タナー(オーストラリア、IAMサイクリング)
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
後半戦に突入したツアー・ダウンアンダー。第4ステージはアデレード市内のノーウッドから丘陵地帯を抜けてビクターハーバーに至る138km。ビクターハーバーはその名の通り港町で、グレートオーストラリア湾に突き出たフルリオ半島の根本にあり、海風の影響を大きく受けることで知られている。
過去にビクターハーバーにフィニッシュするステージでは強風による集団分裂も発生しているが、幸いこの日の海風は旗を優しく揺らす程度だった。なお、この日の南オーストラリア州には雷を伴った嵐の予報が出ており、実際にアデレード市内はあちこちで冠水が発生するほどの激しい雨と雹、雷に見舞われたが、ビクターハーバーを含めたコースは奇跡的と言っていいほどドライな状態が保たれた。
大きな山岳が存在しないツアー・ダウンアンダーにおいて、総合争いに大きく影響するのがスプリントポイントとフィニッシュに設定されたボーナスタイムだ。スタート後すぐに始まったアタック合戦は延々と続き、オリカ・グリーンエッジがメイン集団を一つにまとめた状態で27km地点のスプリントポイントに到着。狙い通りのスプリントで先着したゲランスが貴重なボーナスタイム3秒を獲得している。
スプリントポイント通過後、ペースが緩んだメイン集団からデーヴィッド・タナー(オーストラリア、IAMサイクリング)、アレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)、パトリック・レーン(オーストラリア、UniSAオーストラリア)の3名が飛び出してようやくレースは落ち着きを見せる。序盤からのアップダウンで遅れた選手たちが復帰したことを確認してメイン集団がペースを戻した頃には、先頭3名のリードは5分を超えていた。
丘陵地帯を抜けて平野部に出たメイン集団は徐々にペースを上げて先頭3名のリードを削っていく。結局メイン集団は先頭3名を泳がすことなく残り24km地点で吸収。ステージ優勝争いを大きく左右するKOMクローズネスト(登坂距離3.9km/平均勾配6%)の登りに差し掛かった。
残り20km地点で頂上を迎えるKOMクローズネストでは、アグレッシブなアタックこそ見られないものの、ピュアスプリンターをはじめとする多くの選手が脱落。BMCレーシングのペースアップによってメイン集団は半分にまで縮小する。
頂上手前でペースを上げたリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)に反応する形でセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)が先行し、そのまま頂上を先頭通過して山岳賞のリード拡大に成功。チームスカイのエースを担うエナオモントーヤは「コロンビア人にとって山岳は特別な存在。チャンスがあったからポイントを狙ってみた」と語っている。
ビクターハーバーに向かう下りでリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)やヘスス・エラーダ(スペイン、モビスター)がそれぞれ奇襲アタックを仕掛けたが決まらず、チームスカイがベン・スウィフト(イギリス)のためにトレインを発進させる。チームスカイ先頭のまま、約70名に絞られたメイン集団が残り1kmアーチを駆け抜けた。
スウィフトをリードアウトするゲラント・トーマス(イギリス)に対抗して、ゲランスをリードアウトするダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)が前に出る。周りをブロックされて踏み出しが遅れたスウィフトの前で、ゲランスがスプリントを開始した。
スウィフトとジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)がゲランスを追撃したものの、コーナー内側、フェンス際の最短ラインを突き進んだゲランスが先頭を譲らない。山岳でクライマーと肩を並べる登坂力を発揮するゲランスが、平坦路でスプリンターたちを振り切った。
チームメイトとひとしきり喜び合った後、「信じられないほど素晴らしい」という言葉でインタビューをスタートさせたゲランス。ステージ2連勝を飾るとともに、ボーナスタイムを上乗せすることに成功した。
「周到に準備してきたとは言え、ピュアスプリンターたち相手に2連勝を飾るなんて。自分も含めて全員が驚くような、そんなスリル満点の勝利だった。ダウンアンダーには何度も出場しているので、フィニッシュのレイアウトは分かっていたし、ダリル(インピー)のリードアウトも素晴らしかった」と、ビクターハーバーに集まった大勢の観客を沸かせたゲランスは語る。
KOMウィランガヒル(登坂距離2.9km/平均勾配7.4%)の山頂フィニッシュが設定されたクイーンステージを前に、ゲランスは総合2位マッカーシーから14秒、総合3位デニスから26秒のリード。オリカ・グリーンエッジのマシュー・ホワイト監督は「まだ戦いは終わっていないし、ボーナスタイムで逆転も起こり得る。仮に明日誰か(マッカーシー)がゲロ(ゲランス)を4秒以上引き離してステージ優勝すれば順位が入れ替わる。最終日にボーナスタイムで動くことも有り得るんだ」と、ステージ優勝した喜びを感じさせない冷静なトーンで語る。
4度目の大会制覇に向けて順調にレースを進めるゲランスに対し、防戦気味となっているのがBMCレーシング。山岳で軽快な走りを見せているポートは「明日のウィランガヒルで勝負が決まる。世界を代表するような厳しい登りではないので大きなタイム差を付けるのは難しいけど、明日はチームとしてトライしたい。ゲランスのリードは大きいものの、まだまだゲームオーバーじゃない」とコメント。ウィランガヒルではポートとデニスのBMCコンビがゲランスに勝負を挑む。
ツアー・ダウンアンダー2016第4ステージ結果
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 3h13’59”
2位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
3位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)
4位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)
5位 リー・ハワード(オーストラリア、IAMサイクリング)
6位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)
7位 セルゲイ・ラグティン(ロシア、カチューシャ)
8位 アレクセイ・ツァテヴィツク(ロシア、カチューシャ)
9位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)
10位 エンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)
個人総合成績
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 13h41’58”
2位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ) +14”
3位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) +26”
4位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ) +28”
5位 スティーブ・モラビート(スイス、FDJ)
6位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)
7位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
8位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール) +32”
9位 ラファエル・バルス(スペイン、ロット・ソウダル) +36”
10位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)
スプリント賞
ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)
山岳賞
セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
ヤングライダー賞
ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)
チーム総合成績
キャノンデール
敢闘賞
デーヴィッド・タナー(オーストラリア、IAMサイクリング)
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia