ブエルタ・ア・エスパーニャ新チャンピオン誕生。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)がついにグランツールの頂点に立った。マドリードにゴールする最終ステージはアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)が勝利。グライペルはステージ4勝で自身最高のグランツールを締めくくった。

集団の先頭に出る総合トップスリー、左から3位カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)、1位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケスデパーニュ)、2位サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)集団の先頭に出る総合トップスリー、左から3位カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)、1位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケスデパーニュ)、2位サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) photo:Unipublicジロ・デ・イタリアはミラノ、ツール・ド・フランスはパリ、ブエルタ・ア・エスパーニャはマドリードに終着。最終日に個人タイムトライアルが行なわれない限り、グランツールの最終日は大都市の周回コースにゴールする平坦ステージと相場が決まっている。

3週間の闘いを終えた選手が労をねぎらい、互いの健闘を讃え合う。そんなグランツール最終日特有の雰囲気に包まれた和やかな選手たちが、マドリード郊外に位置するリバス・バシアマドリードをスタート。冷たい雨が何度も選手たちを襲った今年のブエルタ。最終日はブエルタらしい太陽が燦々とコースを照らした。

チームカーに乗るウンスエ監督とシャンパンで乾杯するアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)チームカーに乗るウンスエ監督とシャンパンで乾杯するアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Unipublic最後はマドリード中心部の6kmの周回コースを6周。総合リーダー擁するチーム、つまりバルベルデ擁するケースデパーニュがメイン集団を率い、139名の選手たちがマドリードに凱旋した。

周回コース突入前には、今年限りで現役を引退するビンヘン・フェルナンデス(スペイン、コフィディス)が単独で飛び出し、周回コースを1周ぐるっとパレード走行。2周目にフェルナンデスが吸収されたのを合図に、選手たちの間で闘いのゴングが鳴らされた。

3週間の闘いを終えた選手たちが、大観衆の待つマドリード市内に向かう3週間の闘いを終えた選手たちが、大観衆の待つマドリード市内に向かう photo:Unipublicすぐさまカウンターアタックで飛び出したのはダビド・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア)やミカエル・ドラージュ(フランス、サイレンス・ロット)ら6名。僅かな望みをかけて飛び出した6名は協力してスピードを上げた。

しかしスプリンターチームがこの逃げを容認するはずがない。先頭6名のリードは最大22秒まで広がったが、チームコロンビア・HTCとリクイガスの集団牽引によってタイム差は縮小。最終周回に突入後まもなく、逃げグループはメイン集団に吸収。諦めずに踏み続けたドラージュも、ゴールまで半周を残してメイン集団に飲み込まれた。

シベレス広場にそびえるマドリード中央郵便局の前を通過シベレス広場にそびえるマドリード中央郵便局の前を通過 photo:Unipublicラスト1km地点に位置するトリッキーな180度コーナーは、ポジションを競り合ったリクイガスとヴァカンソレイユが前方でクリア。激しいポジション争いは、前年度のマドリードステージ優勝者マッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)を側壁へと追いやり、地面に叩き付けた。

最後はリクイガスが先頭でダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)を発射。しかしその後方からグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド)に牽かれたグライペルがスプリント体勢に入り、先行したベンナーティを勢いよく抜きさって行く。全身グリーンジャージのグライペルが、ライバルに1車身差をつけて完勝した。

マイヨオロ擁するケースデパーニュを先頭にマドリードの周回コースを進むマイヨオロ擁するケースデパーニュを先頭にマドリードの周回コースを進む photo:Unipublic合計ステージ4勝を飾ったグライペルは文句無しのポイント賞獲得。グランツールのポイント賞はキャリア初だ。グライペルはコロンビアトレインの力を借りて、シーズン通算勝利数を19勝まで伸ばした。

「山岳が険しいブエルタでポイント賞ジャージを穫るのは非常に難しいこと。でもチームメイトの強力なサポートを受けて、スプリントでポイントを量産出来た。特にシーベルグとヘンダーソンの牽引は秀逸だったよ。開幕前にはステージ1勝出来ればいいなと思っていたけど、蓋を開けてみるとステージ4勝で、チームは5勝、そしてポイント賞獲得。驚くべき結果だ」。

マドリードの周回で逃げるダビド・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア)やドミニク・ロエルス(ドイツ、ミルラム)マドリードの周回で逃げるダビド・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア)やドミニク・ロエルス(ドイツ、ミルラム) photo:Unipublicチームコロンビア・HTCはジロで6勝、ツールで6勝、そしてブエルタで5勝。チームの通算勝利数は他のリームを大きく引き離す84勝で、昨年の85勝にあと1勝まで迫った。

そして、同時にバルベルデの総合優勝が決定した。9回目のグランツール(ツール4回、ブエルタ5回)で手にした初の栄冠。2003年(総合3位)と2006年(総合2位)に次ぐ総合表彰台の立ち位置は、望み続けた真ん中だ。

最終スプリントを制したアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)最終スプリントを制したアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC) photo:Unipublic「言わなくても分かっていると思うけど、今はこの上ない幸福感に包まれている!いつかは3週間のステージレースで勝てると自信があったけど、自信があるだけでは世界に認めてもらえない。僕はこの目標を達成する使命、夢を叶える使命を負っていたんだ」。

「今年はウンスエ監督の事細かなアドバイスに耳を傾けた。力を使ってステージ優勝を狙うのではなく、エネルギーを温存して総合優勝だけを考えて走った。その努力が最後に実を結んだのだと思う」。毎年グランツールではステージ優勝を貪欲に狙う姿勢を見せ、ツールでステージ3勝、ブエルタでステージ5勝しているバルベルデ。しかし今年のブエルタはステージ0勝。完全に総合成績に的を絞っていた証拠だ。

チームメイトに担ぎ上げられるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)チームメイトに担ぎ上げられるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Cor Vos最後にバルベルデは「最高の仕事っぷりを見せてくれたチームメイト全員に感謝したい。彼らは常に僕の傍にいてくれた。彼らの働きはパーフェクトなものだった」と締めくくった。ケースデパーニュは9名全員がマドリードに辿り着いている。

ウンスエ監督は「この勝利はずっと必要とされていたものだ。アレハンドロには『集中力が欠けている』だとか『一日必ず崩れる日が有る』などといった間違った印象が常に付きまとっていた。このブエルタでアレハンドロは成熟と進歩を見せつけ、それらの印象を完全に払いのけてくれた。3週間のステージレースで勝てるということを証明したんだ」とコメント。バルベルデ=ウンスエのタッグが次に目指すのは、悲願のツール制覇だ。

表彰台に上がる総合トップスリー、左から2位サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、優勝アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)、3位カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)表彰台に上がる総合トップスリー、左から2位サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、優勝アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)、3位カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット) photo:Cor Vos総合2位に入ったのは、2007年大会総合3位のサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)。総合順位を一つ上げ、チーム史上最高の好成績を収めた。そして総合3位に入ったのは、山岳ステージでマシントラブルに見舞われながらも、ツールで失っていた輝きをこのスペインの地で取り戻したカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)。エヴァンスは自身3度目のグランツール表彰台だ。

スペイン人選手の大会制覇で華々しく幕を下ろしたブエルタ。総合ワンツーを飾ったバルベルデとサンチェスは、ブエルタ閉幕からちょうど1週間後の9月27日、スイス・メンドリシオで開催されるロード世界選手権で、スペインチームを率いてアルカンシェル獲得を目指す。

選手コメントはケースデパーニュとチームコロンビア・HTCの公式サイト、ならびにレース公式サイトより。


ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第21ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)3h11'55"
2位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)
3位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ)
4位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)
5位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ランプレ)
6位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームコロンビア・HTC)
7位 ロジャー・ハモンド(イギリス、サーヴェロ)
8位 トム・リーザー(オランダ、ラボバンク)
9位 ポール・ヴォス(ドイツ、ミルラム)
10位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)

マイヨオロ(個人総合成績)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)87h22'37"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+55"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+1'32"
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+2'12"
5位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+4'27"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+6'40"
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)+9'08"
8位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、ランプレ)+9'11"
9位 フィリップ・ダイグナン(アイルランド、サーヴェロ)+11'08"
10位 ファンホセ・コーボ(スペイン、フジ・セルヴェット)+11'27"

モンターニャ(山岳賞)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)186pts
2位 ダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)99pts
3位 フリアン・サンチェス(スペイン、コンテントポリス・アンポ)73pts

プントス(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)150pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)111pts
3位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)101pts

コンビナーダ(複合賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)7pts
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)17pts
3位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)17pts

チーム総合成績
1位 シャコベオ・ガリシア 261h57'19"
2位 ケースデパーニュ +23'43"
3位 アスタナ +31'39"

リタイア(DNS=未出走・DNF=途中リタイア)
なし

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic, Caisse d'Epargne

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