今年で28回目を数える美山サイクルロードレースは、本大会から大きく体制が変わることとなった。注目されるC1はプロロードレーサーを交えてのレベルの高い戦いの結果、ゴールスプリントで大中巧基が制した。

公道で思う存分走れるのが美山ロードの醍醐味だ公道で思う存分走れるのが美山ロードの醍醐味だ

5月26日に京都府南丹市美山で行われた「MBKカップ美山サイクルロードレース」は、関西では「自転車レースの甲子園」と呼ばれるほどの人気のある公道ロードレースだ。

通称「美山ロード」は、昭和63年(1988年)の第43回京都国体が始まりで、現在に至るまでに毎年開催されてきた。これとは別に、ここ美山の地では1987年は国際ロードレース京都大会が、1993年には全国大学対抗選手権自転車競技大会、2003年には全日本実業団対抗サイクルロードレースといった大きな大会も開催されている。
美山ロードはこうして長年、地元美山の人たちと関西地区の自転車競技関係者が守り育ててきた大会なのだ。

今年で28回目を向かえる美山サイクルロードレース今年で28回目を向かえる美山サイクルロードレース 今年の美山ロードは約1100名が集まった今年の美山ロードは約1100名が集まった


こうした公道ロードレースは基本的に道路を一時的に封鎖して行うのが基本だが、美山ロードのコースは福井県小浜市と京都を結ぶ幹線道路のため、それができない。そのため選手が走行中の区間は交通規制で道路封鎖となり、選手が通過すると規制解除となって一般車が通る。そして選手が周回で戻る頃には再び封鎖されるという、国内では非常に珍しい形態をとっている。

安全管理の面ではリスクが高いが、地元警察や町民の皆さんのボランティアといった協力のもと、大きな事故や中止となった年もなく、今まで続いている。

出走前インタビューを受ける中島康晴(愛三工業レーシング)出走前インタビューを受ける中島康晴(愛三工業レーシング) 美山ロードC1スタート美山ロードC1スタート


今年から運営形態が大きく変わり、京都府自転車競技連盟が行っていたレース運営全般を地元美山に移管し、企画や大会会場の取り決めを自治体が行う。例えば選手が使用する駐車場は、年々参加者が増えて混乱する要因の一つだったが、今回は会場の近くは予約制となり、予約漏れ参加者と一般観客は美山中学校へと分けることによって駐車係を務めるボランティアの負担を減らした。また会場内では地元食材を使った飲食の販売が行われた。

今年、レースは新たに二人一組で走る種目の「トロッフェバラッキ」が設けられ、親子で走るクラスも設定されて、全クラス合わせて約1100名の参加者の大会となった。

近畿高体連スタート前、シード選手左から岡本隼・中野尻祥(和歌山北高校)、山本大喜(榛生昇陽高校)近畿高体連スタート前、シード選手左から岡本隼・中野尻祥(和歌山北高校)、山本大喜(榛生昇陽高校) 親子でトロッフェバラッキ親子でトロッフェバラッキ


コースは美山支所文化ホールをスタート、山々に木が生い茂る緑が美しい道を走り、勝負所で九十九折が続く難関の「九鬼ヶ坂」を登る、距離にして約5kmとなっている。

C1はプロ対学生の戦い

下吉田の旧道区間は道幅がとても狭い下吉田の旧道区間は道幅がとても狭い

毎年激戦が繰り広げられるC1は、ゲストライダーに愛三工業レーシングから中島康晴と木守望。湘南ベルマーレは辻善光、他にもマトリクスパワータグから向川尚樹と藤岡徹也、そして青柳憲輝(シマノレーシング)、辻 貴光(Galante Nara)・栂尾大知(シエルヴォ奈良MERIDA)といった豪華なメンバーが集まった。

九鬼ヶ坂で山岳賞を獲りにいく白石真悟(シマノドリンキング)九鬼ヶ坂で山岳賞を獲りにいく白石真悟(シマノドリンキング) 2周目の下吉田の旧道を先行する木守望(愛三工業レーシング)2周目の下吉田の旧道を先行する木守望(愛三工業レーシング)


そして美山ロードでは必ず展開の中心にいる白石真悟(シマノドリンキング)や、京都産業大学、中京大学といった強力な学生メンバーが、U23カテゴリーとなるものの総合をかけて戦う。

C1カテゴリーのみ下吉田のトンネルを通らずに、過去に使われた旧道を使用しての7周回のレースとなった。

7周回のレースは九鬼ヶ坂を3番目までに先頭通過すると地元の美山米をもらえるということで、米を狙って九鬼ヶ坂では必ず誰かがアタックをかけるペースの速い展開になった。
白石真悟が山岳賞を4回(3kgの米を4袋)ゲットするものの、山岳賞狙いで足を使ってしまい、後々自らを不利な状況へと追いやってしまった。

常に勝負所となる九鬼ヶ坂常に勝負所となる九鬼ヶ坂

レースは学生たちが展開を作り、75名出走した選手の半分が脱落していく。最終周回は中島・白石・榊原健一(中京大学)が逃げを作るものの、九鬼ヶ坂で遅れていた大中巧基と岡 嘉一(立命館大学)がブリッジをかける。

最終周回で逃げる中島康晴(愛三工業レーシング)・白石真悟(シマノドリンキング)・榊原健一(中京大学)最終周回で逃げる中島康晴(愛三工業レーシング)・白石真悟(シマノドリンキング)・榊原健一(中京大学) 九鬼ヶ坂で先行する大中巧基九鬼ヶ坂で先行する大中巧基


ゴール前の展開では白石が足を使いすぎて脱落した後、大中・中島・岡・榊原の4人がゴールスプリントへ。ゴール前のクネクネと蛇行する難しい位置取りの中、地元北桑田高校出身でコースを熟知している大中が、横に並んだ中島を最後わずかの差で先行してレースを制した。

中島康晴(愛三工業レーシング)との僅差のゴールスプリントを制した大中巧基中島康晴(愛三工業レーシング)との僅差のゴールスプリントを制した大中巧基

大中は早稲田大学の4回生で今回はC1でエントリーして走った。
「学生のレースだとここまで巡行速度は速くないので今回は凄くレベルが高い、下りも速くていい経験になりました。最終周回に前に三人が逃げていて、九鬼ヶ坂で追いついて最後のスプリントになって勝てる自信がありませんでしたが、うまいこと牽制になったので足が回復してギリギリの状況でした。ほんの少しの差でしたが、粘ってよかった」と大中は話す。

C1表彰C1表彰 山岳賞の美山米ににっこりの中島康晴(愛三工業レーシング)と白石真悟(シマノドリンキング)山岳賞の美山米ににっこりの中島康晴(愛三工業レーシング)と白石真悟(シマノドリンキング)


2位となった中島は、「天気にも恵まれて地元の方に支えられている大会だと思いました。いろんなところから応援してもらったり、コースの各所にスピーカーがあってレース実況が聞けたり、走っていて凄く楽しいレースでした。
インカレ以来9年ぶりで、美山は逃げやスプリントを得意とするどんな選手でもチャンスが与えられる良いコースです。こういうコースが全国で増えるといいなと思います。
2位は悔しいです。三人で逃げてて二人に追いつかれて、最後のスプリントでは大中は北桑田高校出身なのでゴール前のクネクネラインを奇麗に使っていきましたね。凄く悔しいですけど良いレースでした」と話した。

近畿高体連は和歌山北高校の岡本隼が制する

九鬼ヶ坂を登る高校生達九鬼ヶ坂を登る高校生達 最終周回ゴール前の和泉の交差点からスプリントに入る集団最終周回ゴール前の和泉の交差点からスプリントに入る集団


インターハイ近畿予選となる近畿高体連は、今春の選抜大会総合優勝校の岡本隼・中野尻祥(ともに和歌山北高校)や、今春ジュニアアジア選個人TT2位の山本大喜(榛生昇陽高校)、全日本U17チャンピオンの松本祐典(北桑田高校)と強豪ぞろい。
4周回のレースは北桑田高校が複数の選手で展開を作ったものの、ゴールスプリントで岡本が制した。

子供達もスプリント勝負!子供達もスプリント勝負! 今年から初登場のトロッフェバラッキ今年から初登場のトロッフェバラッキ


会場オリジナルの「九鬼ヶ坂」Tシャツ会場オリジナルの「九鬼ヶ坂」Tシャツ 冠スポンサーのMBKから提供された高級ロードバイクが当たる抽選会。バイクは女の子の手に渡された冠スポンサーのMBKから提供された高級ロードバイクが当たる抽選会。バイクは女の子の手に渡された


MBKカップ美山サイクルロードレース2013の主な結果
カテゴリー C1+U23 総合
1位 大中巧基              1:46'25.04
2位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+0.03
3位 前園浩平(立命館大学)+0.37 
4位 榊原健一(中京大学)+1.26
5位 白石真悟(シマノドリンキング)+14.74
6位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+15.03
7位 吉岡直哉(京都産業大学京都)+27.42
8位 秋田拓磨(朝日大学長)+27.51
9位 道川慧太(京都大学)+29.36
10位 山本浩史(ペダル)+30.75

近畿高体連登録の部
1位 岡本 隼(和歌山北高校)58'01.86
2位 安田京介(北桑田高校)+0.24
3位 安田 開(北桑田高校)+0.47
4位 草場啓吾(北桑田高校)+0.57
5位 松本祐典(北桑田高校)+0.67

美山牛乳を使ったジェラートが美味しい美山牛乳を使ったジェラートが美味しい コイケヤから参加賞としてお菓子がプレゼントされたコイケヤから参加賞としてお菓子がプレゼントされた


text&photo:Akihiro.NAKAO

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