2010/09/13(月) - 23:02
「クライマーからスプリンターへの変身」
辻善光選手は宇都宮ブリッツェンのエーススプリンターである。しかしなんと彼はかつてクライマーだったのだと言う。相反するタイプと言われるクライマーとスプリンター。彼はどのような経緯でスプリントに目覚めたのだろう?しかし僕は元々スプリンターではありませんでした。
自転車を始めたのは中学生の時です。この時は陸上競技をしながらマウンテンバイクに乗っていました。 遊び半分で走っていましたが、中学3年生の時にどうしても勝ちたいレースがあり、毎朝、学校へ行く前に1時間半ほど走っていました。
毎日2kmある山道でタイムアタックをし、試合前にはタイムを1分縮めることができました。
その大会では上りで全員を振り切り、下りで追いつかれ、また上りでタイム差を広げるという展開でしたが、最後は下りでなんとか逃げ切り優勝しました。
その時、「自分はクライマーなんだ」と、自信をつけたことを覚えています。
MTBからロードへ
その後、インターハイ種目にマウンテンバイクがないという理由でロードに転向しました。同時にピストも始めました。高校入学時点での身長は168cm、体重は52kgでした。身体を横から見たらペラペラです。筋肉もあまりなく、「骨と皮しかない」と言われていました。この時も上りが得意で、高校の練習では誰にも負けたことがなかったと思います。最初は連続8回しかできなかった腕立て伏せが、20回になり、50回になり、2ヵ月後には80回連続でできるようになりました。
高校3年になると身長169cm、体重58kgになり、見た目も走りも大きく変化しました。ハイペースで上り、平坦でも速く走ることができるようになってきました。
ピストでも練習に付いていけるようになりましたが、それでもまだ団体追抜ではチームの足を引っ張っているような走りでした。
大学に入り1年生の時、国体の代表から外れました。理由は「団体追抜を走ることができないため」でした。
悔しくて苦手な平坦のトレーニングをより積極的に取り組むようになりました。片道50kmの自転車通学では、平坦が強くなりたくて毎日タイムトライアルをしていました。基本的に一人で練習し、自力を付ける練習に励みました。
勝利で得た確信
翌年、転機が訪れました。母校立命館大学で開催された全日本学生クリテリウム選手権で優勝することができたのです。今まで上りのレースで人数が減った状態でスプリントをすることは得意でしたが、完全に平坦なコースでのレースで自分の力が通用するとは思っていませんでした。ロードは超山岳コースで、スタート直後から逃げ続けましたが、惜しくも入賞圏外の9位に。自分を含め、誰もが僕の国体が終わったと思っていました。
2日後、ケイリンの予選に出場しました。あっけなく予選で下位に沈み、敗者復活戦へと回りました。思い切ってギヤを重くし、入念に作戦を立て、2着で準決勝に進出しました。
準決勝のスタート時に周りを見ると、みんな僕の倍ほどの体格をしており、競輪ヘルメットにペダルのストラップを力強く締めています。
僕はロードが終わってから無理やり2kg体重を増やしたものの、ビンディングペダルに中距離用ポジションで「場違いだ」とまで言われました。
しかし見事に作戦がはまり、スプリント力を全て出し切って2位となり、決勝進出へ。決勝でも5位に入り、入念な作戦と経験を積めば自分がスプリンターとして走っていけると確信することができました。 4年生でも全日本クリテリウムで優勝することができ、自分がスプリンターであるということを強く意識するようになりました。
変化で得た自信
大学を卒業し、実業団レーサーとして走っていくうちに体重はさらに増え、60kg前後で安定するようになりました。高校入学時から身長は1cmしか伸びていないのに体重は8kgも増えました。筋力トレーニングはせず、自転車に乗ってつけた筋肉ですが、体脂肪は5%ほどなので長距離選手とは思えないほどの筋肉マンです。
この頃からピストが楽に走れるようになり、全日本実業団と国体のポイントレース、そして全日本アマチュア選手権スクラッチでも優勝。どのレースもスプリント力でもぎ取った勝利です。


さらに昨シーズン後半からは新しく「ロングスプリント」を身に付けました。プロのレースでは「差し」「捲り」ではどうしても不利な状況が多く、勝つことができません。このままでは勝てる選手になれないと思い作戦を変えることにしたのです。
先行するには集中力と勇気が必要で、自信を持って仕掛ける必要があります。何度も練習し、自信を持てるようになりました。
5月末、「ツール・ド・熊野」で、自分が身に付けた能力を試す絶好の機会が巡ってきました。
12人の逃げが決まり、小集団のままゴールへ向かい、最終コーナーの手前で先頭に立ったところで、自分を信じてスプリント! そのまま先頭を譲ることなくゴールラインを通過することができたのです。

この優勝はただ単に勝利したことの喜びよりも、勝つまでの過程があまりにも多かったこと、自分のために献身的にアシストしてくれたチームメイトがいたこと、スプリント力が通用すると信じて戦力として使ってくださった監督、そして多くの宇都宮ブリッツェンのサポーターの皆様の期待を受けて走ったことなどが走馬灯のように頭中を駆け巡り、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
今期、宇都宮ブリッツェンのスプリンターとして「ツール・ド・北海道」での成績を期待されています。「ツール・ド・北海道」では、登坂力、スプリント力が総合成績に大きく関わってきます。クライマーからスプリンターへ変化してきた過程は、きっと大きな武器になると信じています。
プロフィール
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パナレーサーのロードレーシングトップモデルが「RACE」シリーズとしてリニューアル。
オールラウンドタイプのtypeA(All-around)、耐パンク強化タイプのtypeD(Duro)、そして軽量タイプのtypeL(Light)がラインナップされており、用途や目的に合わせてチョイスできる。全タイプとも従来のEVO3シリーズと同じく高いグリップ力を誇る。
typeAでは従来のバリアントEVO3PTに比べて20gを軽量化。typeDはシリーズ最強の耐パンク性能を誇り、typeLは耐パンクベルトを内蔵しながら、20Cで175g、23Cで185gの軽さを実現している。
参考価格 type D:6,480 円(税込)/type A:5,680 円(税込)/type L:5,680 円(税込)
スペシャルコンテンツ:「新しい戦闘力 パナレーサー RACE」
レビュー:「パナレーサーRACEシリーズ type D/A/L 乗り比べインプレッション」
■Panaracerサポート選手の注目リザルト
第66回全日本大学対抗選手権自転車競技大会2010 第4日ロード
男子優勝 内間康平選手(鹿屋体育大学)、女子優勝 上野みなみ選手(鹿屋体育大学)
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提供:パナソニック ポリテクノロジー株式会社